July, 4, 2016, Bronx--先進的なイメージング技術を使ってアルバート・アインシュタイン医科大学(Albert Einstein College of Medicine and Montefiore Health System)の研究チームは、最近脳震盪を起こした患者で、完全回復しそうな患者が誰であるかを予見することができた。
研究は、脳震盪の回復や補償の脳機構についても光を当てている。これは、治療開発を促進する情報となる。研究成果は、American Journal of Neuroradiologyに発表されている。
疾病対策予防センタによると毎年、米国には250万人の外傷性脳損傷患者が存在する。こうした障害の中で、脳震盪は少なくとも75%を占める。脳震盪の診断は、症状の判定に基づいているが、客観的なバイオマーカーやテストはない。症状はばらつきが大きく、損傷後わずか数秒から、場合によっては数日、数週間続く場合もある。一般的な症状には、発作、睡眠障害、協調性低下、繰り返される嘔吐、精神錯乱、不明瞭な発語が含まれる。
研究論文の主筆、Montefiore放射線学部、Sara Strauss, M.D.によると、ほとんどの人は脳震盪を軽い短期の損傷と考えているが患者の15~30%は症状がいつまでも続く。「これまでのところ、長期的に症状が続くか、完全回復するかをあらかじめ区別する信頼できる方法はなかった」。
従来のイメージング技術、CTスキャンやMRIは、脳震盪に関連する軸索への微妙な損傷を検出できない。しかし、Dr. Liptonのグループは、先の研究で、拡散テンソルイメージング(DTI)という先進的MRIが脳震盪関連の軸索への損傷を検出でききることを実証した。これは、軸索に沿って水分子の移動を見ることで行う。これにより研究者は、脳全体の水移動(FA:異方性度)の均一性を計測できる。例えば、低FA脳領域の発見は、その領域の水移動を阻害する構造的損傷を示している。
現在の研究では、Dr. Liptonは、個々の脳震盪患者のDTIで特定した脳の異常性が、最終的に回復するか、しないかの区別ができるかどうかをテストした。DTIは、最初の障害から16日以内で緊急診療室で軽度のTBIと診断された39患者、健常対照群40名について行われた。各患者のDTI画像は、健常対照群全体の画像と比較され、患者の脳のどこが異常であるかを見た。また、患者は3つの計測で評価された。認知機能、脳震盪後の症状、健康関連のQOL計測。1年後、脳震盪患者の26名が経過観察評価のために戻ってきた。
脳震盪患者と健常者とを比較するDTIイメージングにより、患者に2つのタイプの白質異常性が明らかになった。(1)軸索損傷に関連する異常に低いFA(赤色)と脳震盪患者に影響を及ぼす認知機能障害、それに(2)異常に高いFA(青色)の他の脳領域、これは脳が損傷に好反応をした箇所を示している可能性がある、おそらくより効率的に軸索を接続するか、あるいは損傷組織を再有髄化(i.e. 神経の周囲に脂肪組織を形成)することによる。
脳で撮像された高FAの量は、脳震盪後の患者の予後を予見していた。異常な高FA白質領域の量が多いことは、経過観察評価の結果がよいことと関連していた(これは、白質損傷を示す低FA領域が重要でないという意味ではない、1年後の脳震盪からの回復の予見では有用ではないということである)。
Dr. Liptonは、「どの患者が予後不良か予後良好かを予見できることは、脳震盪の治療の発見と評価に大きな意味を持つ。効果的な介入は、まずはそれを必要とする人を特定することである。75~80%の脳震盪患者は自然に回復する。このことは、治療が実際に役に立つかどうかの判断を難しくする。われわれのイメージング技術によって研究者は、本当に恩恵をうける脳震盪患者について潜在的な治療をテストできるようになる」とコメントしている。
(詳細は、American Journal of Neuroradiology)