May, 17, 2016, La Jolla--1ペニーサイズの顕微鏡が脊髄内の細胞の日常活動を明らかにする。その画期的な技術は、星状膠細胞が激しい感覚に突然反応することを明らかにした。星状膠細胞とは、神経系の細胞で、電気信号を伝導せず、これまで単なる支持細胞と見なされていた。
ソーク研究所(Salk Institute)の研究チームがNature Communicationsに発表した新しい微小顕微鏡およびその関連のイメージング法は、神経系の機能についてこれまでにない洞察を与え、脊髄損傷、慢性的な痒み、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のような神経変性疾患の新たな疼痛治療につながる。
脊髄は感覚や世界に対する反応で極めて重要である。脳とは独立に働くことさえある、例えば感覚が完全に捉える前に熱いコンロから後ずさる時など。しかし、脊髄内の細胞がこのような、また他の感情を皮膚あるいは内部器間からどのようにエンコードするかは正確に知られていない。
研究チームは、2008年に初めて発表した微小顕微鏡を改善した。新バージョンは、多くのハードウエアとソフトウエアの改善がされており、これによって覚醒してさまようマウスの細胞活動を可視化することができた。
ソーク研究チームの以前の仕事のほとんどは、生きた動物の脳を観察するために顕微鏡を配置することに集中していた。一方、脊髄は、いくつかの理由でより大きな課題を提示していた。例えば、脳とは異なり、多数の独立して動く椎骨が脊髄を取り囲む。脊髄は脈動する臓器(心臓と肺)に近く、これらが脊髄内の細胞を安定してみることを難しくする。しかし、新しい顕微鏡と手続きおよび計算アプローチを開発することで研究チームは、こうした課題を克服することができ、リアルタイムで生きた細胞の活動を、活発な動作中に捉えることができた。
研究では、軽く触れたり押したりする明らかな刺激が脊髄感覚ニューロンの種々のサブセットを活性化することを確認した。また、一定の刺激の強さや継続のような、ある特徴がニューロンの活動に反映されることも分かった。
従来受動的な支持細胞と考えられていた星状膠細胞も刺激に反応する(ニューロンとは違うが)。星状膠細胞は、ニューロンのように電気信号を送ることはできないが、強度刺激の中で状況に応じて独自の化学信号を生成した。
ソークのWaitt Advanced Biophotonics Center、Axel Nimmerjahn准教授によると、これらの細胞は神経系の発展と動作の仕方で重要な役割を担うとの評価が高くなっている。また、新しい薬剤ターゲットを約束するとの評価もある。「正常な感覚処理を研究できるだけでなく、脊髄損傷などの病気の背景、処置が実際に細胞にどのように影響を与えているかも見ることができる」と同氏は続けている。
研究チームは現在、小型顕微鏡を繰り返し使って、接触あるいは痛みに関連した脳や脊髄の活動を同時に記録しようとしている。これにより、非常に高い分解能で多数の細胞タイプをモニタし操作することができる。