April, 21, 2016, Washington--イェール大学(Yale University)の研究チームは、VCSELベースの1つの光源で2つのタイプの顕微画像を取得できる簡素な新型レーザシステムを開発した。
生体医用向けの同システムの優れた潜在力の実証で、研究チームはおたまじゃくしの胚の心臓鼓動の血流と微小な構造的変化を動的に撮像するためにそれを用いた。
そのレーザシステムを開発した、同大学応用物理学研究所、Hui Caoは、「他に類がない点は、レーザシステムは非常に簡素な設計になっており、本質的に同じビームで異なる動作モード間を前後に切り替えられることである。すべてが整列されたままとなるように方向や光パワーは同じままに保っている」と説明している。
新しい光源は、レーザ光を使って取得された画像を不鮮明にするスペクルパタンを排除するレーザを開発する研究チームの取り組みから生まれた。スペクルは、レーザの高空間コヒーレンスによって生ずる光学的所産であり、レーザからの光波がすべて同期し、相互に一致していることを示すものである。
ノンコヒレントな光、LEDsや白色ランプなどでサンプルを照射すると、スペクルは生じない。しかしこれらの光源は高速イメージングに必要な輝度が不足しており、したがって露光時間が短く、心臓鼓動のような動的の生体医学プロセスを捉えることができない。
新しいシステムの開発で研究チームは、サンプルによって生ずる特殊なスペクルとパタンが光を散乱する細胞の動力学についての情報をもたらすという事実を利用した。1990年代以来、レーザスペクルコントラストイメージングという方法は、スペクルの経時変化を利用して血流についての情報を提供してきた。
新しいレーザシステムは、スペクルフリー構造画像のために低空間コヒレンス光を生成し、同じ組織のスペクルコントラストイメージングのために高空間コヒレンスに素早く切り替えることができる。
研究チームは、動物モデル、アフリカツメガエル胚の鼓動する心臓をイメージングすることで開発した光源の最初のデモンストレーションを行った。この動物モデルは、論文の共著者、Michael Chomaが心臓病理解促進のために研究しているものである。研究チームは、まず低コヒレンス画像を取得して心臓の構造と、心臓の鼓動に心臓がどのように変化するかを示した。次に、高コヒレンスに切替て、レーザスペクルコントラストイメージングを用いて心臓を流れる血流を計測した。
新しい光源の特徴は、わずか5個の光学素子とVCSELで構成される非常に簡素な設計。VCSELは、マルチサイトから光を放出する。個々のサイトからの光は他のすべてのサイトからの光とはわずかにズレている。研究チームは、VCSELからの光の全体で1000の独立したモードを使い、低コヒレンス光を生成した。レーザキャビティにピンホールを加えることで、すべてのレーザパワーをわずか数個のモードに集中し、レーザスペクルコントラストイメージング用の高コヒレンス光を生成することができた。
次のステップでは、空間光変調と言うデジタルミラーアレイを用いるてシステムを改善し、心臓鼓動中に何回も低コヒレンスと高コヒレンスとを切り替えることを計画している。これによって、血流と構造との同時イメージングがほぼ可能になる。