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MSKガンセンター、ナノテクノロジーで腫瘍を可視化

March, 10, 2016, N.Y.--MSK(Memorial Sloan Kettering)ガンセンター、薬理学者、Daniel Hellerが発表した3D乳がん腫瘍スフェロイド(フラスコで成長させた人のガンの凝集)画像は、カーボンナノチューブが浸潤した様子を示している。このような微小な針のような粒子は約1nm厚である。
 ナノチューブは光を発するので、腫瘍の浸透性、浸透しやすさの程度が明らかになる。赤外波長の光は目には見えないが、組織内深部でも特殊カメラで容易に検出できる。
 腫瘍の浸透性は、ガン治療の効果では重要要素になる。腫瘍のタイプが違えば浸透性のレベルも違う、これは腫瘍の細胞外基質(マトリクス)の密度に依存する。つまり構造的、生化学的な支柱となる細胞から分泌される一群の分子に依存する。ナノチューブは、マトリクスが緩いと簡単に透過するが、密度が高すぎると阻止される。
 腫瘍によっては隙間がなさ過ぎて、制ガン剤が表面付近の細胞にしか効かないものもある、つまり腫瘍の塊が生き残る。
 Dr. Hellerによると、薬剤送達面が見過ごされることがよくある。これは、抗がん剤が効かないということではなく、内部に浸透しないためであるが、薬が効かない理由を示すことは難しいことがある。
 生きた腫瘍にナノチューブを使う新しいアプローチは、新分野であるナノテクノロジーの計り知れない潜在力を示すものである。
 広範なナノ材料が現在研究されている。目的は、ガン細胞のイメージングと、健全な細胞を避けながらガンに薬剤を送達するそれらの能力の研究である。しかし、これまでのところ、これらは患者で臨床効果がないため、研究者は失望している。
 Heller研究室、研究フェロー、Yosi Shamayは、プラスチックのフラスコ内のがん細胞で腫瘍スフェロイドを作った。フラスコは、細胞が付着しないようにコーティングしてあり、細胞が相互に結合するようになっている。細胞は成長して凝集し、生体の腫瘍に似たスフェロイドが形成される。
 生物物理学者、Prakrit Jenaは、赤外発光カーボンナノチューブの正確な位置を3Dで見る方法を開発した。Dr. Hellerは、Dr. Shamay、Dr. Jenaと協働して、腫瘍スフェロイドにおいて、これらのカーボンナノチューブを使い、ガン研究のための強力な新しいツールを実現している。
 「従来技術を使い、腫瘍の浸透性を判断しようとすると、腫瘍をパラフィンに固定し、スライスし、それを顕微鏡下で調べなければならなかった。それは二次元である。今では、われわれは、物質が腫瘍にどのように浸潤していくかをリアルタイムで見る新しい方法を考案した」とDr. Hellerは話している。
 Carbon誌に発表した研究では、Dr. Heller研究室はこの技術を使って乳ガンスフェロイドと肝臓ガンスフェロイドの浸透性を比較した。ナノチューブは、肝臓腫瘍の方の密度が遥かに高い、つまり隙間がないことを実証した。ナノチューブが深く浸透できないため、赤外光が肝臓腫瘍の周辺でしか発光しなかったためである。
 電子顕微鏡で2つの腫瘍の表面を観察した時、ナノチューブ浸透範囲に関連する細胞外基質の違いが明らかになった。つまり、スフェロイド内部からの発光量は、マトリクス密度の信頼できる指標であることが確認された。
 このシステムは腫瘍生物学の問題を明らかにするだけではない。腫瘍浸透を強める薬剤を探るためにも使える。また、潜在的なアプリケーションは、そこで終わることはない。
 Dr. Hellerは次に、マウスの生きた腫瘍内部を非侵襲的に覗き見るためにこの技術を使う予定である。