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NUSエンジニア、超解像度イメージング向けに新しいレンズを開発

April, 17, 2017, Singapore--光学顕微鏡の解像度は、基本的に光の回折限界に制限されている。この限界を様々な技術で打破しようとする研究は、近接場動作、試料の染色などの制約を受ける。近接場動作では、試料を顕微鏡に近づける必要がある。染色は、試料の品質に影響を与える侵襲的プロセスである。
 シンガポール国立大学(NUS)電気コンピュータ工学部の研究チームは、新しい超臨界レンズを開発した。これにより光学顕微鏡はリアルタイムで、回折限界を超える解像度で画像を捉えることができる。また、この技術はサンプルの前処理、画像の後処理を必要としない。

低コスト製造が容易な高性能超薄型レンズ
平面メタレンズは、高性能、超薄型レンズであり、従来の3次元の大きな光学レンズに比べて特別な機能を持つ。NUSの超臨界レンズは、最適化された平面メタレンズと言う概念に基づいており、新しいアルゴリズムを用いて開発された。また、これは商用レーザパタンジェネレータを用いて、高速、低コストで簡単に製造できる。
 実証実験で研究チームは、超臨界レンズ顕微鏡を用いてイメージング分解能65nmを実証した。従来の顕微鏡は、120~150nm程度のイメージング分解能である。また、この新しい顕微鏡技術は、ワーキングディスタンスが55µmと長い。したがって、実際の用途で試料の取り扱いや調整のためのスペースが大きいので、試料の観察は一段と詳細にできる。
 この研究成果は、半導体デバイスのナノイメージングにとって極めて有望である。100nm以下のイメージング分解能を必要とするICチップなどのコンポーネントの欠陥を素早く、コストエフェクティブに、より正確に検出することが可能になる。現状の欠陥検出は、SEMを必要としており、これは特殊であり高価である、またプロセスは真空環境も必要とする。
 生物学研究分野では、ほとんどのタンパク質や細胞組織が、回折限界以下のイメージングを必要としており、そのため試料の染色が必要になる。研究チームの成果により、生物細胞内部を非侵襲的に研究することができるようになり、研究者はこれまでになく深いレベルで試料を研究できる。これは、究極的には新たな医学的発見につながる。
研究成果は、Advanced Materials(2017年㋁)に発表されている。