November, 9, 2015, Rochester--MIT、ハーバード大学などの研究グループは、グラフェンベースの赤外線イメージングシステム実証にグラフェン固有のチューナブル熱電効果(Seebeck coefficient)を利用した。
グラフェンベースの光熱電ディテクタと微細加工の窒化ケイ素(SiN)膜を組み合わせることで、時間定数-23ms、-7-9V/W(λ=10.6µm)オーダーで室温応答を達成できる。下部SiN膜からの、熱分離と広帯域赤外吸収の組合せによる、大きな応答性がインコヒレント黒体ターゲットの検出、スタンドオフイメージング(300-500K)を可能にした。このようなグラフェンベースの熱電対の達成可能な基本性能と標準的な熱電対材料を比較することで、グラフェンの高いキャリア移動度によって、赤外ディテクタの2つの主要性能指数(FOM)、検出能(>8 × 108 cm Hz1/2 W–1)およびノイズ相当温度差(<100mK)に関してパフォーマンスが改善されたと研究グループは推定している。
ACSニューズによると、赤外線の助けを借りて暗闇で敵と戦うというコンセプトは何十年も前からあったが、現在あるこのようなシステムの多くは背景放射、つまり「ノイズ」を除去して信頼できる画像を実現するためには極低温冷却を必要とする。しかし、このようなアプローチは、イメージング機器の設計を複雑にし、コストも機器のサイズも増える、とTomás Palacios, Pablo Jarillo-Herreroなどの研究グループは説明している。
研究グループは、より実用的なソリューションを実現するために、グラフェンとシリコンMEMSを結合することで独自の機器を実現した。試験の結果、新しいデバイスは極低温冷却を用いることなく室温で人の熱シグニチャ検出に利用できることが示された。今後、進歩によりデバイスの用途はさらに広がる。研究グループによると、熱センサは単層グラフェンをベースにしており、したがってセンサは透明で柔軟になる。また、製造も簡単であり、コスト低下に寄与する。
(詳細は、www.acs.org)