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ワルシャワ大学、小型で安価な産業用フェムト秒レーザを開発

August, 31, 2015, Warsaw--ワルシャワ大学物理学部のチームは、外部条件が極めて厳しい状態でも超短光パルスを生成できるレーザを作製した。この比類のない精度と障害耐性の組合せが可能になるのは、フェムト秒レーザパルス生成全体が特殊選定の光ファイバ内で起こるためである。
 その外見は全く目立たない。平坦な矩形の箱で、幅と高さは数10㎝程度、細く光る先端が出ており、これは巻き取るほどに長い。この小型装置は、ポーランドのワルシャワ大学物理学部のチームが作製したもので、非常に厳しい環境条件でフェムト秒パルスを生成できる、この種のもので初めてのパルスレーザである。このレーザの外乱要素に対する強い耐性は、レーザ生成動作全体を光ファイバ内で行うようにしたことで達成された。その結果、装置は可能な限り簡素な設計になっており、したがって高い信頼性を実現している。
 フェムト秒レーザは、通常光共振器を必要とし、これは外部条件の影響を受けやすい精密ミラーである。しかしUW物理学部が作製した機器は、ミラーは使わず、光ファイバを使う。
 研究チームは、精密工学機器のメーカーならとても薦められないような仕方でその新しいレーザを扱ったことを認めている。「レーザを稼働させて、光ファイバ部分を120℃以上に加熱した。したがって、温度勾配は非常に大きいが、レーザはそれでも正常動作している。また、レーザを振動発生機に入れて、7Gを超える加速度を与えた。その後もレーザは動作しており、興味深いことにテスト中もレーザは動作していた」とDr. Yuriy Stepanenkoは語っている。
 UW物理学部のチームのフェムト秒レーザは、イッテルビウム添加光ファイバでパルスを生成する。波長は1µm付近(1030nm)であり、高次の高調波発生により逓倍することができる。
 「われわれは、レーザ励起ダイオードと光ファイバケーブルとの適切な組合せを慎重に選択し、所望のパルスレジームで最もエネルギー効率よく動作するように、システム全体を安定化する方法を開発した」とPhD学生、Jan Szczepanekは説明している。
 光ファイバそのものは柔軟であり、したがってレーザパルスは、従来のレーザ技術であればアクセスできないような場所に簡単に入れることができる。産業用アプリケーションでは、光ケーブルがどのような位置にあるかに関わりなく、レーザビームが優れた空間品質を保つことは殊の外重要である。その横断面は適切な「ベルカーブ」(ガウシアン分布)を維持している。光共振器として機能する光ファイバケーブルは極めて安定的に動作しており、ユーザーの特殊要求に応じてさらに光学機器を含むようにレーザを拡張する可能性が開かれている。
 この「スパゲッティ状」のレーザはさらに利点を持っている。簡単設計であるので、相対的に低価格にできることだ。市販のコンポーネント(励起レーザやドライバ)を用いて構築すると、コストはわずか数千ユーロになる。商用化に関心がある企業が、例えば、特注設計のドライバを用いると、さらに低コスト化することができる。
 非常に厳しい条件下で安定動作が可能であるので、このフェムト秒レーザは産業応用、マイクロスケールの表面仕上げの分野に適している。