September, 30, 2025, 東京--東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授らの研究グループは、大玉トマト「CF桃太郎ファイト」を用い、完全閉鎖型LED植物工場とにおける栽培性能を同一品種・同時期に比較する実験を行った。
LED植物工場では、気温(25.9 ± 1.1℃)と光強度(276 µmol m⁻² s⁻¹)を安定的に維持したことで、茎の伸長速度・茎径・葉緑素量(SPAD値)が温室を大きく上回り、果実中のビタミンC含量も有意に高値を示した。
一方、温室では気温や光強度の変動が大きかったものの、収量・平均果重・糖度(°Brix)・リコピン濃度が優れていた。ただし、周年栽培を想定すると日射と温度の揺らぎがさらに増大し、季節による生育・収量のばらつきは避けられない。
従来、トマトをはじめとする果菜類は光を多く必要とするため、LEDのみでの栽培は困難とされ、LED植物工場ではもっぱらレタスなどの葉物野菜の栽培が行われてきた。この研究は、そのようなLED植物工場の“常識”にとらわれず大玉トマトの栽培に果敢に挑戦し、安定生産に世界で初めて成功したものであり、画期的な成果である。今後、光・CO₂・温度などの環境制御の最適化や栽培手法の高度化によって、LED植物工場でも温室を上回る高収量・高品質な周年栽培の実現が期待される。さらに、この技術は、気候変動の影響を受けにくい安定供給型の食料生産手段として、都市部の垂直農業や宇宙空間での閉鎖循環型農業への応用も視野に入っており、持続可能な農業の未来を切り拓く重要な技術基盤となる。
(詳細は、https://www.a.u-tokyo.ac.jp)