August, 1, 2024, Santiago--ナノキャリア(別の物質を輸送できるナノ構造)は、特にガン治療において、標的薬物送達に有望であることが示されている。薬剤を患部組織に直接送達することにより、効率を最適化し、望ましくない副作用を軽減することができる。
今回、スペインの生物化学・分子材料研究センタ(CiQUS)の研究チームは、光を照射するとカプセル化された内容物を放出するカスタマイズ可能なポリマナノスフィアを作製した(Angew. Chem. Int. Ed., doi: 10.1002/anie.202403313)。生体内分布と排泄に影響を与えるナノスフィアのサイズは、調製中に水と溶媒の比率を調整することで容易に制御できるため、幅広い組織に適用できる。
構造の影響
ナノ沈殿は、活性薬物やその他の物質をポリマでカプセル化するために一般的に使用される自然乳化プロセスである。典型的には、疎水性ポリマはエタノールやアセトンなどの溶媒に溶解する。水と混合した後、溶液からのポリマの相分離により、ナノ粒子が形成される。この技術には、シンプルで再現性があり、エネルギー効率が高いという利点がある。
これまでの研究で、ナノ沈殿によって動的ラセン状ポリマがキラルナノスフィアに自己組織化することが実証されている。今回の研究では、ラセン状高分子の構造が、ナノスフィアへの自己組織化にどのような影響を与えるのかを明らかにした。研究チームは、分子構造の異なるポリ(フェニルアセチレン)s(PPAs)のライブラリーにナノ沈殿法を採用した。
その結果、動的で柔軟なスカフォールドを持つPPAsは、異なるアセトンと水の比率で制御可能なサイズを持つ低多分散ナノスフィアを生成することが明らかになった。一方、PPAsは、ほぼ平面構造が球状や楕円形のナノ構造に凝集し、サイズを制御できなかった。
光で解放
次に、研究チームは、ナノスフィアのカプセル化能力と光トリガー放出を研究した。直径400nmのナノスフィアを、蛍光色素または量子ドットの存在下でアセトンと水の混合物中に調製した。共焦点顕微鏡は、内容物が内部に閉じ込められたナノスフィアを可視化した。
UV/可視光を1時間以上照射すると、ポリエン骨格の光化学電気環化によってポリマ粒子が破壊され、カプセル化された材料が放出された。このプロセスの速度は、ラセン状ポリマの構造にも依存する。例えば、引き伸ばされたヘリックスは、よりコンパクトなヘリックスに比べて光分解が遅く、放出速度を正確に制御できる可能性がある。