October, 26, 2023, Barcelona--ICFOの研究者チームは、Nature Methods掲載論文で、発光酵素と光感受性イオンチャネルを使用して2つのニューロンを接続するシステムの開発を紹介した。
われわれの脳は何十億ものニューロンでできており、それらは複雑なネットワークを形成して接続されている。それらは、シナプス伝達と呼ばれるプロセスで、活動電位として知られる電気信号と神経伝達物質として知られる化学信号を送ることによって、それらの間で通信する。化学神経伝達物質は、1つのニューロンから放出され、他のニューロンに拡散して標的細胞に到達し、細胞活動を興奮、阻害、または調節する信号を生成する。これらの信号のタイミングと強度は、脳が感覚情報を処理および解釈し、意思決定を行い、行動を生成するために重要である。
ニューロン間の接続を制御することで、神経障害の理解向上により治療し、損傷を受けた後の神経回路の機能不全を再配線または修復し、学習能力を高め、一連の行動を拡大することができる。ニューロン活動を制御するためのいくつかのアプローチがある。1つの可能な方法は、薬物の使用である, それは、脳内の化学神経伝達物質のレベルを変化させ、ニューロン活動に影響を与える.別のアプローチは、ニューロンを活性化または阻害するために特定の脳領域に適用される電気刺激の利用である。3番目の可能性は、光を使用して神経活動を制御すること。
フォトンを使って神経活動を制御
光を使って神経細胞活動を操作することは、過去に探求されてきた比較的新しい技術である。これには、標的細胞で光感受性タンパク質、イオンチャネル、ポンプ、または特定の酵素を発現するようにニューロンを遺伝子操作することが含まれる。この技術により、研究者はニューロンの具体的な集団の活動をより高い精度で正確に制御することができる。ただし、いくつかの制限がある。光が脳組織内で散乱するため、シナプスレベルで十分な分解能を達成するために、ニューロン近傍に送達する必要がある。したがって、それは侵襲的となることが多く、外部からの介入を必要とする。さらに、標的細胞に到達するために必要な強度は、それらに潜在的に有害である可能性がある。
これらの課題を克服するために、ICFOの研究者チームは、神経活動を制御する戦略として、化学神経伝達物質の代わりにフォトンを使用するシステムをNature Methodsに発表した。
研究チームは、ルシフェラーゼ、発光酵素、および感光性イオンチャネルを使用して2つのニューロンを接続する方法を開発した。
チームは、特定の生物学的プロセスの研究に広く使用されているモデル生物、線虫Caenorhabditis elegansでPhAST(シナプス伝達物質としてのPhotonsの略)という名前のシステムを開発し、テストした。生物発光動物がフォトンを使用して通信する方法に似ているPhASTは、酵素ルシフェラーゼを使用して、ニューロン間の伝達物質として化学物質の代わりにフォトンを送る。
化学神経伝達物質をフォトンに置き換える
フォトンが2つのニューロン間の活動状態を体系化して伝達できるかどうかをテストするために、チームは線虫を遺伝子改変して偽性神経伝達物質とし、機械的刺激に反応しにくくした。チームは、PhASTシステムを使用してこれらの欠陥を克服することを目指した。第二に、発光酵素ルシフェラーゼを設計し、光に敏感なイオンチャネルを選択した。情報の流れを追跡するために、動物の鼻に機械的ストレスを与えると同時に、最も重要なイオンの1つであり細胞内メッセンジャの1つ、感覚ニューロンのカルシウム活性を測定するデバイスを開発した。
フォトンを見て生物発光を研究できるようにするために、チームは以前、蛍光顕微鏡を簡素化し、フィルタ、ミラー、レーザ自体など不要な光学要素をすべて取り除き、新しい顕微鏡を設計していた。狙いはマシンラーニングによる支援で外部光源からのノイズを減らすことである。
その後、研究チームはPhASTシステムがいくつかの実験で機能することをテストした。また、フォトンを使用してニューロン状態を伝達することに成功した。2つの接続されていない細胞間に新しい伝達を確立し、欠陥のある回路でのニューロンコミュニケーションを回復することができた。また、痛みを伴う刺激に対する動物の反応を抑制し、嗅覚刺激に対する動物の反応を魅力的な行動から嫌悪的な行動に変え、産卵時のカルシウム動態を研究した。
これらの結果は、フォトンが実際に神経伝達物質として作用し、ニューロン間のコミュニケーションを可能にすること、およびPhASTシステムが動物の行動の合成的修飾を可能にすることを示している。
メッセンジャとしての光の可能性
メッセンジャとしての光は、幅広い範囲で将来の潜在的なアプリケーションを提供する。フォトンは他の種類の細胞や複数の動物種で使用できるため、神経科学の基礎研究と臨床応用の両方に幅広い影響を及ぼす。
光を使用して神経活動を制御および監視することは、研究者が脳機能と複雑な行動の根底にあるメカニズム、および様々な脳領域が互いにどのように通信するかの理解向上に役立ち、より高い空間的および時間的解像度で脳活動をイメージング、マッピングする新しい方法の提供となる。また、研究者が新しい治療法を開発するのに役立つ。たとえば、侵襲的な手術なしで損傷した脳の接続を修復するのに役立つ可能性がある。
とは言え、この技術の普及にはまだ制約がある。生物発光酵素やイオンチャネルのエンジニアリング、または分子の標的化のさらなる改善により、神経細胞機能を光学的に非侵襲的に、より高い特異性と精度で制御できるようになる。
(詳細は、https://www.icfo.eu/)