August, 18, 2020, 富山--富山大学 学術研究部工学系 椿範立教授らは、レーザ加工と3Dプリンタを用いて、高温・高圧の過酷な条件下でも使用可能な「自己触媒機能付き金属触媒反応器」の作製に世界で初めて成功した。
多くの化学工業プラントには多量の担持触媒を充填した高温・高圧型の大型反応器が用いられているが、触媒・設備の低コスト化、小型化、省エネルギー化に向けて、反応プロセスや設備の革新が求められている。椿教授が率いる研究グループは、レーザ溶融噴射技術を用いた高融点金属の3Dプリント技術を活用し、精密にコントロールされた微細構造を有する金属反応器の作製に成功した。次いで、内面を化学処理することにより微細金属表面に触媒機能を付与し、「自己触媒機能付き金属触媒反応器」を実現した。この反応器は、従来の触媒反応器と同様、高温・高圧条件下でも使用可能である。
この技術を用いると、反応管内にかさ高い担持触媒を充填する必要がなくなり、多くの触媒反応器を小型化でき、設備投資・触媒コストの低減につながる。さらに、プラント自体を劇的にコンパクト化することで、従来技術ではスペース的に難しかった洋上生産・車両・船舶上での生産にも展開できる。
応用反応例として、二酸化炭素の水素化から液体炭化水素燃料の合成、メタンと二酸化炭素の改質反応などの高温・高圧条件下での反応において、高い活性と長い触媒寿命を実証した。また、日本が世界をリードしている海底メタンハイドレートの利用において、洋上液体合成燃料の高速生産を含め、幅広い応用範囲が期待できる。
この技術は富山大学らによって特許出願されまた。
研究成果は、Nature Communicationsオンライン速報版で公開された。
(詳細は、https://www.jst.go.jp/)