January, 10, 2020, Champaiign--コロンビア大学の研究者はハーバード大学と協力して、赤外光を吸収し、それを可視エネルギーとして再放出する化学的プロセスの開発に成功した。これにより、高強度露光による損傷なしで、生きた組織や他の材料を透過する照射が可能になる。
研究成果は、Natureに発表された。
「研究成果は素晴らしいものである。通常は、非侵襲的、赤外光源を使い、高エネルギー、可視光を必要とする一連の複雑な化学的変換を実施することができたからである」とコロンビア大学化学教授、Tomislav Rovisはコメントしている。「物質の制御の邪魔になる障害が存在する、多くの潜在的アプリケーションが考えられる。例えば、研究チームは、光線力学療法の範囲と効果の強化を有望視している。ガンを管理するその全潜在力はまだ実現されていない」。
コロンビア大学化学准教授、Luis M. Camposを含むチームは、少量の新しい化合物を使って一連の実験を実施した。新しい化合物は光で刺激されると、分子間で電子移送を調整することができる。分子間の電子移送は、このような方法がなければ、非常に緩慢であるか、あるいは全く起こらない。
そのアプローチは、トリプレット融合アップコンバージョンとして知られており、基本的に2つの赤外フォトンを1個の可視光フォトンに融合する一連のプロセスに関与している。ほとんどの技術は、可視光を捉えるだけであり、太陽スペクトルの残りは無駄になる。トリプレット融合アップコンバージョンは、低エネルギー赤外光を集めて、それを太陽電池など、オプトエレクトロニックデバイスが吸収できる光に変換する。可視光も、多くの表面で簡単に反射される。一方、赤外光は、高密度物質に浸透できる長波長である。
「この技術によりわれわれは、赤外光を必要な長波に微調整できる。それにより、われわれは、紙、プラスチックモールド、血液や組織など幅広い障害を非侵襲的に透過できる」とCamposは説明いている。研究チームは、フラスコの周りにラップした2枚のベーコンにパルス光を透過させた。
研究者は以前から、内部器官や健康な組織を損傷することなく、皮膚や血液に可視光を透過させる方法の問題を解決しようとしてきた。光線力学療法(PDT)は、ガンの治療に使われているが、感光薬剤という特別な薬剤(フォトセンシタイザ)を使う。それは、光で始動し、ガン細胞の成長を止める、あるいは抑制することができる酸素の高反応性を示す。
現在の光線力学療法は、局所的あるいは表面ガンに限定されている。「この新技術は、以前ならアクセスすることでがきなかった身体内部にPDTをもたらす」とRovisは言う。「薬剤で身体全体を毒し、悪性細胞も健全な細胞も殺す原因となるのではなく、毒性のない薬剤と赤外光とを組み合わせて選択的に、腫瘍部位を狙い、ガン細胞を照射する」。
その技術は、幅広い影響をもたらす。赤外光治療は、多くの病気や症状の処置の手段になるかも知れない。これには、ガンとともに外傷性脳損傷、損傷神経、脊髄、難聴が含まれる。
他の潜在的アプリケーションには、薬品貯蔵、太陽光発電、データストレージ、薬品開発、センサ、食品安全法、成形性骨模倣化合物の遠隔管理、マイクロエレクトリックコンポーネントの処理が含まれる。
研究チームは現在、フォトンアップコンバージョン技術を付加的生物系でテストしている。「これは、光と生きた生物とが相互作用する前例のない機会を開く。現在、われわれは、再生医療や薬剤送達にアップコンバージョン技術を使用している」とCamposは話している。
(詳細は、https://news.columbia.edu)