February, 28, 2019, Pittsburgh--産業変革に有望視されている積層造形(AM)を制約している深刻な問題がある。最終製品の微小な気泡である。これは、亀裂や他の欠陥の原因になる。
カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)と米国エネルギー省(DOE) Argonne National LaboratoryのチームがScienceに発表した論文は、このような気泡がいつ、どのように形成されるかを明らかにしており、その形成も予測する方法も発表した。これは3Dプリンティングプロセスを飛躍的に改善する情報である。
Argonne物理学者、Tao Sunは、「キーホール現象は、Argonneで開発された特殊機能により、初めて詳細に観察することができた。APSの強力な高エネルギーX線がカギになる」とコメントしている。
研究チームは、Argonneの Advanced Photon Source (APS)にある高輝度、高エネルギーX線を使ってLaser Power Bed Fusion (LPBF)と言われるプロセスの超高速ビデオと画像を撮った。同プロセスでは、レーザを使って材料粉末を溶かし融合する。
レーザは、各粉末層をスキャンし、必要な金属を溶融し、文字通り土台から最上部まで最終製品を作り上げる。欠陥は、気泡がこの層にトラップされるときに形成され、最終製品の亀裂や故障につながる不完全性の原因となる。
これまで、メーカーや研究者は、レーザが金属にどのように穴を開け、「蒸気の窪み」と言われるキャビティを造るかについて詳細を知らなかったが、金属粉末のタイプ、あるいはレーザ強度が原因であると仮定していた。その結果、メーカーは試行錯誤アプローチで様々なタイプの金属とレーザを使用して、欠陥を減らそうとしていた。
実際、研究チームは、レーザや金属を問わず、このような蒸気の窪みが、工程のほぼどんな条件においても存在することを明らかにした。さらに重要なことは、小さな窪みが何時、大きく不安定なものに成長するかを予測する方法を示している。こうした窪みは、潜在的に欠陥になり得る。
Rollettは、「ほとんどの人々は金属粉末表面にレーザを照射すると光は材料によって吸収され、金属を溶かして溶融プールにすると考えている。実際は、金属に穴を開けているだけである」と説明している。
世界で最も強力なシンクロトロンの一つ、Argonne APSの非常に特殊な装置を使い、研究チームは、レーザが、製品の各層を造るために、金属粉床を移動する際に何が起こるかを観察した。
完全な条件では、溶融プール形状は浅く、半球であり、「伝導モード」である。しかし実際のプリンティングプロセスでは、ハイパワーレーザは、低速で動くことがよくあり、溶融プール形状を、中に突起があるロックのキーホールのようなものに変える。そのような「キーホールモード」溶融は、潜在的に、最終製品の欠陥になる。
「この研究に立脚すると、AMで使用される粉末よりも、多くの点で、キーホール現象が、より重要であることが分かった」とカーネギーメロン大学のRoss Cunninghamは指摘している。「われわれの研究は、キーホールになる要素を予測できることを示している。つまり、良好な結果が得られるように、そのような要素を隔離することもできる」。
研究から明らかになたのは、一定のレーザパワー密度が金属を沸騰させる点に達するときにキーホールが形成されること。これは、積層造形プロセスでレーザ焦点の重要性を示している。これは、今まであまり注意を払われていなかった要素である。
積層造形の研究をサポートする実験プラットフォームに含まれるのは、レーザ装置、特殊ディテクタおよび専用のビームライン測定器である。
この研究により積層造形装置メーカーは、装置を制御して柔軟性を高め、装置の改良が最終製品を大幅に改善すると、研究チームは考えている。また、この識見に基づいて実行すると、3Dプリンティングプロセスが、一段と高速化する。
(詳細は、https://www.anl.gov)