August, 15, 2018, Dresden--フラウンホーファーFEP研究チームは、シリコン基板上のOLEDに新しいマイクロパターニングアプローチを開発した。これは、将来的にはカラーフィルタとシャドウマスクを除去し、新しいプロセスによりフルカラーディスプレイの開発が可能にする。効率向上と著しく広い色域が、すでに最初の実験で実証されている。
OLEDマイクロディスプレイの世界に眼を向けると、現在および未来のVR/ARアプリケーション向けのデータグラス(メガネ)にたちまち没入していることに気づくが、これはマイクロディスプレイの核心である。プロダクション4.0プログラムや製品の産業利用、医療技術や電子エンタテーメントでの利用に加えて、AR/VRアプリケーションは、広告や教育分野で何年も前に確立されている。博物館の大きなオーディオガイドの時代は間もなく終わる。軽量なHUDが、フィルムシーン、オーディオ、ビジターとの相互作用を統合することにより、展示を大きな学習世界に変え、博物館をより印象的な経験にする。
OLEDの自己発光特性と優れたコントラスト比の結果として浅い全般的な深さのお陰で、メーカーはAR/VRクラス向けにますますOLEDマイクロディスプレイに頼るようになっている。フラウンホーファーFEPは数年来この技術の先進的開発に継続して取り組んできた。しかしOLED技術の全潜在能力を、コンシューマ向けののデータグラスや他のAR/VRアプリケーションで活用するには、習得すべき技術課題はまだ存在する。超高輝度と効率、大きなチップエリアの優れた歩留まり、湾曲面、視線追跡の統合、透明基板などは、依然として研究者の課題の一部になっている。
現在、OLED技術は、フルカラーディスプレイがカラーフィルタあるいはシャドウマスクを用いてしか実現できないという問題に直面している。これはOLEDの効率と解像度の制約になっている。研究者たちは、高解像度とともに、同時に高効率と長い動作寿命で特徴付けられるマイクロディスプレイの新しい製造アプローチに集中的に取り組んでいる。OLEDの有機層のパターニングは、最大課題の一つである。フォトリソグラフィなど、従来の方法は有機半導体材料では使えないからである。微細構造のための電子ビーム技術の利用は、2年前にフラウンホーファーFEPで実証に成功した。この特許工程を用いることでFEPは、既存のエンカプセル層によりOLEDの発光を調整し、創造できる限りの特性を実現し、高解像度グレイスケール画像の生成も行う。
電子ビームプロセスのさらなる開発が、今ではカラーフィルタやシャドウマスクなしでフルカラーOLEDを達成している。赤、緑、青のピクセルを造るために、OLEDそのものの有機層は、熱電子ビームプロセスで除去される。このパターニングにより積層の厚さが変化し、多様な色の発光を可能になる。これは、プロセスで制限的なカラーフィルタを使うことなく、フルカラーディスプレイの開発への初の大きな前進である。FEPプロジェクトチームの開発者、Elisabeth bodensteinは、その利点について「われわれの電子ビームプロセスにより、下層に損傷を与えることなく、この敏感な有機材料でさえも熱的に構造化することができる」と説明している。
その成果は、電子ビームによって作製されるHTL(正孔輸送層)厚のシミュレート、当初の推定により得られた。研究チームは実際に、白色OLEDからの赤、緑、青色発光の分離を達成した。フラウンホーファーFEPでの概念実証に続いて、これらの色は最初のテスト基板で実証され、同等のOLEDパフォーマンスを示した。
この新しいプロセスはOLEDに使用するだけでない。電子ビーム処理は、有機エレクトロニクスや無機層の他のアプリケーションにも使用できる。さらに、電子ビームパターニングプロセスは、非常に柔軟性があり、フォトボルテイック(PV)、MEMS、薄膜技術でも利用できる。
現在、フラウンホーファーFEPの研究者は、有望な準備作業を完了したことで、次の節目に近づいている。今後数年の主目標は、パートナーとともに、この新しい方法をOLEDマイクロディスプレイ製造の共同開発に利用し、ライセンス供与によりそれを業界で確立することである。そのために、外観はさらに微小化し、関心をもつ業界パートナーととともにプロセスを最適化する。計画している次のステップは、マイクロパターニングを既存のプロセスに統合することである。目的は、産業パートナーとともに一層のノウハウを共同で獲得すること。これにより、今後テスト結果を、計画された既存プロセスラインに移転することが可能になり、今後、工業レベルで技術の確立が促進される。
並行して、研究チームは、OLED強化シミュレーションも計画している。材料と層厚を適切に調整することによってOLEDカラースペクトルを広げる。こうして将来的に、新しいプロセスにより、ディスプレイのデータグラスへの組み込みが可能になる。狙いは、産業製造や医療などの特殊アプリケーションである。