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MIT、瘢痕、脂肪肝臓組織を検出できるセンサ

January, 27, 2021, Cambridge--米国人口の約25%が、脂肪肝を患っている。これは、肝線維症を引き起こし、最終的に肝不全となり得る病気である。

現在、脂肪肝、肝線維症のいずれであるかを診断する簡単な方法は存在しない。しかし、MITのエンジニアは、核磁気共鳴(NMR)に基づいた診断ツールを開発した。これを使って、その症状の両方を検出することができる。

「非侵襲的テストであるので、明らかな肝障害の症状がでる前でも検査することができる。また、患者のだれに肝線維症があるかを言うことができる」とMIT材料科学・工学部David H. Koch Professor of Engineering、Michael Cimaは説明している。

テーブルに収まるほどに小さなデバイスは、NMRを使い、水が組織にどのように拡散するかを計測する。これによって、組織にどの程度の脂肪が存在するかを明らかにすることができる。この種の診断は、マウスでテストされたものであるが、研究者によると、肝臓が肝線維症に進む前に、医者が脂肪肝を把握する際に役立つ。

研究成果は、Nature Biomedical Engineeringに発表された。

組織分析
脂肪肝は、肝臓細胞が蓄積する脂肪が多すぎる時に起こる。これは、炎症を招き、最終的に肝線維症になる。肝線維症と診断されるのは、通常は、患者に黄疸だけでなく疲労や腹部膨張の症状が出始めた後である。その診断を確定するには生検が必要であるが、これは侵襲的な処置であり、生検サンプルが線維的でない肝臓の部分から採ったものであれば、正確でないこともある。

この種の肝疾患を調べるもっと簡単なほ方法を開発するために、Michael Cimaと同僚は、以前に開発したディテクタのアイデアを適用することを考えた。これは、患者が透析前と後で水和レベルを計測するために開発されたものである。そのディテクタは、患者の骨格筋の水量を計測する。NMRを使って、筋組織の水の水素原子の磁気特性の変化を追跡する。

研究者によると、類似のディテクタを使って肝疾患を特定することができる。水が脂肪組織、線維症に出くわすと、水拡散が、より遅くなるからである。時間とともに水が組織をどのように進むかを追跡すると、どの程度の脂肪あるいは瘢痕組織が存在するかを明らかにすることができる。

「磁化がどの程度変化するかを見ると、プロトンの動く速さをモデル化することができる。磁化が速く消えない場合は、拡散率が低く、したがって、線維化が最も高い」(Cima)。

マウスの研究で、チームは、そのディテクタが86%の正確さで線維化を、また92%の正確さで脂肪肝を特定できることを示した。結果が得られるまでに約10分かかるが、研究チームは、ディテクタのSNR改善に取り組んでいる。これは、時間短縮に役立つ。

早期検出
センサの現在のバージョンは、皮下約6㎜をスキャンスできる。これはマウスの肝臓、あるいは人の骨格筋のモニタ十分である。研究チームは、現在、新バージョンの設計に取り組んでいる。これは、組織下深くに浸透し、人の患者の肝臓診断アプリケーションをテストできるようになる。

この種のNMRセンサが開発されて患者に利用できるようになると、肝線維症の危険にある人々、その初期ステージの人々の特定に役立つ。したがって、早期の処置が可能になる。肝線維症は逆転できないが、止められる。あるいは食事の変更や運動によって遅らせることができる。この種の診断が利用できるようになると、薬の開発にも役立つ。医者が、早期に肝線維症の患者を特定し、可能性のある新しい処置に対する反応をモニタできるからである。

この種のセンサのもう1つの潜在的なアプリケーションは、移植のための人の肝臓を評価すること。この研究では、研究チームは、人の肝臓組織でモニタをテストし、93%の正確さで肝線維症を検出できた。

(詳細は、https://news.mit.edu)