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医薬品のトラッキングとトレーシング

ロウリーン・J・ベルヴィル

ファイバレーザによって、効率的で再現性のあるコスト効果の高い医薬品のオン・ザ・フライ・マーキングが可能になる。

ヘルスケアにおけるセキュリティ、トレーサビリティ、および効率は、現在、世界中の政府規制や産業界の関心事の最上位に置かれている。製品の偽造やリコール、有害事象の報告、投薬ミス、効率的なロジスティクス管理などが重要な課題として位置づけられている。今年3 月、GS1グローバル・ヘルスケア・ユーザ・グループ(サプライチェーンの効率と可視性を向上させるために世界的標準化とソリューションの設計および実現をめざすNPO )は、ヘルスケアサプライチェーンを通じて国境を超えたトレーサビリティシステムの間の相互運用を最大化することを目的としたヘルスケアの世界的トレーサビリティ標準(GTSH )を承認した。
 こうした標準に遅れをとらないようにすることは、医薬品やヘルスケア産業向けの生産ラインを製造している米FP デベロップメンツ社( FP Developments)のような企業にとって重要だ。いくつかの医薬品業界の顧客のラインでは、同社はデータマトリックスコード、ロットコードをマーキングする、もしくは薬瓶の口の部分のアルミニウムの帯に数字を記入するファイバレーザのコーダ(符号器)を組込んでいる。こうしたアルミニウムの帯は通常高さが1/4インチ(約6.4mm)以下でマークの天地は1/8インチ(約3.2mm)。コーディングエラーを許容できる余地はほとんどない。同社は、この生産ラインではエラーによる不良品は0.5% 以下にとどまり、異なる顧客ごと、もしくはこの薬瓶を輸出する国ごとの要求に応じてコードもカスタマイズできると報告している。
 このコードは生産ラインのビジョンシステムによって確認されるため、明瞭で正確でなくてはならない。更に、いくつかのエンドユーザの現場では携帯式のバーコードスキャナでもバーコードが読取り可能でなくてはならない。FP デベロップメンツ社は、顧客に求められれば、トラッキングおよびトレースのシステムを実現するため、すべての技術を一つのラインに統合することができる。

標準準拠のシステム

 GS1のGTSHには、当事者、品目の識別のほか、トレーサブルな品目のラベリング、マーキング、タグ付けなどの事象の識別、捕捉され集められるデータの特質や種類の識別、ファイルやデータの保存などの記録、情報伝達や共有(情報はパッケージのラベルの物理レベルで示され、バーコードを印字できる)なども含まれている。トレーサブルな品目はすべて割り当てられたID を有していなくてはならず、ラベリング/マーキング/タグ付けがされる。トレーサビリティデータには、誰が、どこで、いつ、何を、そして何が起きたかについての情報が含まれていなくてはならない。
 FP デベロップメンツ社は、同社の顧客がこうした標準に準拠できるようにするため、同社独自のレーザと検査システムを製造している。ある医薬品産業の顧客には、1台のファイバレーザとビジョンシステムを利用した2D コーディングによる薬瓶の移送と正しい配置だけを目的にしたシステムを設計した。このシステムは、1 分間に最高300 個の医薬品のガラス瓶を搬送する能力を有している。このレーザコーディング/検査システムは、米ビデオジェット社のVideojet7310 ファイバレーザマーキングシステムと米コグネックス社のVision 5600 Insight検査システムを統合するように設計されている。
システムによって、薬瓶はシール周辺の表面にマーキングされるためにレーザの前に送られた後、続いてビジョンシステムを通過する際に読取りが行われ、「合格」もしくは「問題あり」のいずれかが与えられる。「合格」レベルと指定されたすべての薬瓶は、引き続きシステムを通過できる。「問題あり」の薬瓶は、レーザコーディングと検査システムによって問題ありの薬瓶用のトレイに送られる。このシステムの設計では、すべてのダウンストリームとアップストリームの装置を統合することが可能である。
 このレーザは機械読取り式の2Dデータマトリクスによって薬瓶の移動中にマーキングすることができる。2D データマトリクスは12×26、22 の英数字の文字で構成できる。レーザは2D データマトリクスの数値データをLine Director PCから直接受け取る。
 7310 20Wパルスファイバレーザは小型、多用途でメンテナンスも少ないマーキング装置だ。このレーザの特徴には、自動更新されるコンテンツ(日付、時間、シフトなど)、記号、図形、外国語、フォント、およびインポートされたイラストやエンジニアリングファイルなどによるメッセージをマーキングできるという点も含まれる。このファイバレーザ光源(イットリビウムパルスファイバレーザ)は内部ファンによる空冷式で、水冷装置や外部冷却の場合のようなダウンタイムやメンテナンスが必要ない。また、レーザのスクリプトインタフェースによって、複雑な生産ラインにダイレクトに組込むことができる。
 FPデベロップメンツ社は、10年以上にわたってVideojet 社とビジネスを行っており、初期の段階ではリーフレット、容器、段ボール箱、ラベルなどに印刷するため、同社のインクジェット製品をシステムに組込んだ。しかし、製品に付けたラベルは、最終製品における微生物をすべて殺すことに有効なプロセスとして必要となる最終的な殺菌プロセスに耐えることができない。この最終的な殺菌はエチレン・オキサイド・ガス、放射線(ガンマや電子ビーム)、蒸気、乾式加熱によって行われる。さらに、インクジェットによって可能なコードの品質は、産業界からの品質要求を満たすことができなかった。
 FPデベロップメント社の社長であるデイビッド・フレガー氏(David Pfleger)は、「非常に小さな “ 点” にはレーザが必要だ。しかし、8〜10年前にはレーザの価格は非常に高く、マーク・オン・ザ・フライ技術もよくなかった」と語る。しかし、数年を経た今、インクジェットからNd:YAGやファイバレーザへの技術の改善によって、再現性という意味でシックスシグマのレベルを達成する新たなシステムが可能になった。実際、ファイバレーザはNd:YAGレーザに比べると、小さく、鮮明で判読性の高いコードという点でかなり改善されている。「集積化の点でも向上する。ファイバレーザはYAG よりも小さく軽い。そのため、ポジショニングのコストも抑えられる。」
 実際に、FP デベロップメンツ社はYAG レーザを用いて上述されたものと同様のシステムを構成したが、1台も販売することができなかった。この1年で、同社は5台のレーザコーディング/検査システムを医薬品会社に販売した。米国にファイバレーザを1 ユニット、欧州にはUV レーザを4ユニットである。

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