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レーザによる銅の微細溶接

ジェフ・シャノン、ポール・セバロー

532nm緑色レーザを利用すると、銅などの導電体を加工するときの反射率の問題が回避され、大量の微細溶接に適した方法が得られる。

 電気的接触を目的にした導電部品の接合は、最も古く、最も普及している接合用途の一つであり、自動車、電気および電子デバイス、医療デバイスを含めたほとんど全ての産業において必要とされている。このような接合に使われる技術は、加工コスト、接合性能および量産性が重要になる。部品のサイズ縮小や性能に対する要求の増加とともに、圧接、はんだ付け、ブレージングなどは時代遅れの技術になりつつある。対照的に、優れた接合の完全性、長寿命および導電性能が得られる溶接法が標準技術として急速に普及している。
 溶接材料は熱エネルギー伝達と信号伝送の効率に優れた銅が選択される。その材料特性故に、銅は導電体として適切な選択肢になるのだが、残念なことに、溶接材料としての特性は不十分なため、部品サイズのさらなる小型化、とくに微細溶接と呼ばれる接合が必要になる。
 銅の微細溶接は小さくて導電性の高い部品の熱平衡を制御して、部品の溶接を可能にし、その上下には熱影響が及ばないことを保証する必要があり、このことは非常に難しい挑戦となる。これらの二つの要求を同時に満たすことは可能なのだろうか?これは532nm波長(緑色)レーザ溶接機を使うことによって可能となる。
 利用可能なさまざまな溶接の選択肢を考察する前に、微細溶接の定義を述べる。微細溶接とは、二つの部品の少なくとも一つが0.02 インチ以下の厚さである場合の接合だと定義されている。利用可能な溶接法としては超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接の三つの選択肢がある。
 超音波接合は、平坦な銅あるいはその他の導電部品を接合する場合に対して効果的な方法だが、機械的プロセスのため、機械力、接合の仕方、部品の幾何学形状、異なる部品形状の組合せなどに対する部品の許容度には限界がある。
 抵抗溶接は有力な選択肢だが、接合の仕方に制約があり、小さな電極の調達と保守の両方が必要になる。
 超音波接合と抵抗溶接は、いずれも部品の物理的接触による接合が必要となり、全体の溶接時間は操作サイクルと溶接とを合わせた時間に等しくなる。これは量産の場合に深刻な時間のロスをもたらす。
 対照的に、レーザ溶接は非接触プロセスのため、一方だけを操作することができる。また、非常に小さな接合部にも接近することが可能で、異なる形状の部品を溶接できる。したがって、銅の溶接には適しているように見えるが、そこには問題がある。1064nmの波長における銅の反射率は90%を超える。そのため、この高い初期反射率を克服するには非常に高いパワー密度が必要になる。材料がレーザと結合して溶融状態になると、初期反射率は大幅に減少する。材料との最初の結合に必要であった大量のパワー密度は、反射率が急落すると、溶接にとって必要なレベルをはるかに超える。その結果、材料は蒸発して大きな気孔や穴が残る。この反射率の問題を解決するために、パルス成形、酸素支援、より低い反射率のめっきなどを含めた多くの方法が利用されてきた。
 パルス成形法は銅やその他の導電性部品の反射率変化に対する信頼性が得られない。つまり、反射率の変化に瞬間的に追随してレーザパワーを減少することが難しい。フィードバック制御による精密で瞬間的な追随法も試みられたが、実用的な解決策にはならなかった。酸素支援による方法は、溶接する部品の上に酸素層が形成され、シーム溶接の銅では溶け込み深さが大幅に増加する。しかし、スポット溶接の用途では有用性が確認されていない。それは、酸素の効果は数個のパルスの連続照射後に現われるため、単一スポット溶接や短いシームの場合には役立たないからだ。ニッケルやスズなどの反射率の低いコーティングは初期反射率の低減に役立つが、その場合でも銅との結合を継続するには大きなエネルギーが必要となり、反射率の問題を完全に解決することはできない。このように、微細溶接の可能な加工条件の幅は非常に狭い。
 良好で強度のある銅のレーザ溶接を実現するには、良好な溶接を妨げる原因、つまり材料の反射率をなんとかしなければならない。波長を1064nmから532nmに短くすると、銅やその他の導電材料の反射率は表に示すように大幅に減少する。532nmの波長は、レーザビームから銅への結合にとって矛盾がなく、安定性のある溶接にも適している。図1は被覆のない銅の1064nm での溶接と532nmでの溶接とを比較して示している。532nm のレーザビームは銅と結合しているが、1064nmでは鋼と結合していることが分かる。
 銅の微細溶接を成功させるには、波長が532nm(緑色)のレーザビームが必要になる。この方法は二つの方法によって実現できる。広く使われているのはQスイッチレーザだが、このレーザは溶接にとって十分なパルスエネルギーが得られない。新しい方法では通常のパルスNd:YAGレーザを使用するが、この方法ではピークパワー1.5kWの532nm光を最大5msのパルス幅で得ることができる。このレーザからは、ほとんどの微細溶接の用途にとって十分な350μm厚の銅にも溶け込む溶接エネルギーが得られる。パルスレーザビームを使う場合のもう一つの利点は、光ファイバを通して輝度の低いレーザパルスを伝送できることだ。この方法は焦点スポットにおけるレーザパルスの吸収が促進されるため、不安定性の原因になる溶接中心におけるホットスポットの発生を防止できる。

応用

 電気的接続はさまざまに異なるサイズ、形状および材料において必要となる。そこで、532nm 溶接レーザの能力と利点をいくつかの実例で明らかにしよう。
半導体の相互接続──図2 は金を被覆した厚さ0.0015 インチの銅のフラットワイヤとめっきしたパッドとの接続を示している。ワイヤの幅は広いが非常に薄いため、溶接にはかなり大きなスポットサイズが必要になる。低いピークパワーをもつ長いパルス幅を使うと、接合部の流れが良くなり、ビームの低い輝度によってフラットワイヤの全幅の均一な加熱が可能になる。
平面と円柱の終端接続──レーザの融通性はさまざまな接合形状と終端形状の溶接にとって非常に有用となる。図3は長方形の断面をもつ金めっき銅コネクタと銀メッキ銅ワイヤとの溶接を示している。この溶接は突き合わせた配置で行われ、ワイヤ終端の位置には若干の変化が生じる。制御されたレーザビームを用いてワイヤの円形の表面と平坦な端子とを結合すると、信頼性のある溶接を行うことができる。この場合もレーザビームの低い輝度が利点となり、部品間の突き合わせの許容範囲が広がる。
ワイヤと平面端子との接合──終端の配置には、より線と平面端子との接合もある。硬いワイヤと薄いめっきパッドとの溶接ではワイヤとパッドの両方の光吸収を等しくすることが非常に重要となる(図4)。同様に、より線の溶接でも、より線を広げて、レーザビームが広げた面で均一に吸収されるようにしなければならない。
リードフレームの接続──大量生産の場合はリードフレーム上での多重溶接は品質と速度が最も重要になる。非接触方式のレーザ溶接は量産に好適であり、移動速度との組合せに応じて、きわめて大量の溶接を秒ごとに行うことができる。
異型材料の溶接──溶接する材料間の光吸収レベルが異なると、吸収が大きい方の材料は過熱されやすく、スパッタが過剰になり、気孔率が大きくなる。このことは同じ材料を用いることで解決されるが、小さな部品の場合は、吸収の非平衡がきわめて小さくても、溶接は過熱された状態になる。532nmの波長では二つの部品の反射率が接近するため、溶接のエネルギー平衡は均一化され、溶接はきわめて容易になる(図6)。

まとめ

 銅の溶接は難しく、その微細溶接はさらに難しい挑戦になる。レーザ溶接は銅にとって有益な方法であり、自動化に適した非接触方式の溶接を行うことができる。しかしながら、銅の1064nmにおける高い反射率はレーザ溶接を行う場合の大きな障壁であった。532nmの緑色Nd:YAG レーザ溶接機を利用すると、この障壁は取り除かれ、銅やその他の導電材料を大量に微細溶接する効果的な方法が得られる。

図1 1064nmと532nmのパルスNd:YAGレーザを用いた裸銅スポット溶接の代表的な例を比較して示している。

図2 金を被覆した0.015 インチ厚の銅のフラットワイヤとめっき端子が溶接されている。

 1064nmと532nmのレーザ波長での反射率の比較

図3 金めっきした0.016×0.09インチの銅のリード線と銀めっきした直径0.016インチの銅線との小さなシーム溶接を示している。

図4 0.004 インチ厚の金線と金メッキ端子とが溶接されている。

図5 0.008 インチ厚の銅のフラットワイヤと0.008インチ厚の銅被覆リードフレームとが溶接されている。

図6 特殊な材料を必要としないアルミニウムとチタンとのシーム溶接を示している。

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