All about Photonics

Home > Magazine > Articles

関連イベント

関連雑誌

Articles バックナンバー記事

レーザによる太陽エネルギー利用の革新

コーリー・M ・ダンスキー

太陽電池メーカーはコストの削減と性能の最大化を目指しているが、その両方がレーザによって実現されようとしている。

 太陽エネルギーに対しては常に高い関心が寄せられているが、太陽電池(PV)の価格性能比は依然として配電される電力に対する競争力を得られていない。同等の価格性能比を実現するには、太陽電池の製造コストを大幅に(少なくとも3分の1に)低減する必要がある。レーザはコストの削減と歩留りの向上に対して大きな役割を果たすようになり、同時に性能も向上する革新的な設計および加工方法として利用可能になった。本稿では、PVメーカーにおけるレーザ利用のいくつかの方法と、R&Dやパイロット試験の段階にあるさまざまな応用を検証する。

第1 世代のデバイス

 太陽電池には二つの基本的な方式がある。第1世代のデバイスは結晶シリコン(薄いシリコンウエハ)から作製されているが、シリコン自体が唯一最大のコスト要因になっている。その結果、ガラスや金属箔の基板上にシリコンやその他の半導体材料の薄層を蒸着する第2世代のデバイスの開発が行われるようになった。
 第1世代のデバイスは正方形のウエハ(通常は156×156mm)として作製され、それぞれのウエハがセルになる。その数枚が集められ、直列に配線されて実装モジュールになる。そのエネルギー変換効率は素晴らしい。代表的な電池の太陽光から電力への変換効率は約15〜16%で、組立てられたモジュールでも12%の値が得られる。性能が高いほど高い価格を設定でき利益幅も大きくなるため、メーカーは変換効率の向上に懸命になっている。したがって、わずかな効率の改善であっても、そのための技術はすべて関心の対象になる。しかし、太陽電池は大量生産される汎用製品のため、コストも非常に重要だ。
 現在のところ、ウエハのエッジの電気的アイソレーションがレーザの最大の応用になっている。p ドープウエハはn ドープシリコンの外層で被覆されて、広い面積のp-n 接合が形成される。この接合から最終的に電力が発生する。しかし、この薄い(10〜20μm)層はエッジや、時には裏面も含めてウエハ全体を被覆するため、表面と裏面との間には許されない再結合の経路が生まれる。この経路はエッジのアイソレーションによって排除できるが、その場合はn ドープ層が完全に除去された溝を連続してスクライビングしなければならない。電池の活性領域を最大にして効率を高めるには、溝をできるだけ狭くし、エッジができるだけ近接するように加工しなければならない。
 レーザは約30kHzのパルス繰返し速度をもつQスイッチ固体レーザが選択される場合が多い。メーカーの多くは、コストに対する出力が最大で、最速のスループットが得られる1064nmのレーザを使用する。標準のスクライビング速度は約500mm/sになる。しかし、二つの理由から、この用途に532nmのレーザを試行し、場合によっては355nmのレーザをテストしているメーカーもある。一つ目の理由は、これらのレーザによってより狭い溝のスクライビングが可能になることだ(図1)。また、1064nmのレーザでは、スクライビングした溝からマイクロクラックが発生するが、このクラックがウエハのエッジに達すると、構造の完全性が損なわれる恐れがある。したがって、1064nmでは溝をウエハのエッジにどれだけ近づけて加工ができるかということが制約条件になる。
 ウエハが薄くなると、裏面のアルミニウム電極層とシリコンとの間に保護層を配置できるようになり、その熱機械的性質による利点が生まれる。しかし、この保護層は導電体ではない。独フラウンホーファーISEが最近開発したレーザファイアードコンタクツ(Laser Fired Contacts, LFC)技術は、レーザを使用して局所的接触を形成するため、この方式の電池の商業生産にとって完璧な方法になる。1064nmのレーザパルスがそれぞれの場所で保護層を通してアルミニウムをシリコンの数μmの深さにまで運び、そこでは局所的Al‐Si合金が生成される。
 また、ビア穴あけの用途も急成長している。最も簡単な太陽電池は表面と裏面に接点を設けて負と正の電荷キャリアを集める。しかし、表面の接点を構成するスクリーン印刷された金属によって、太陽光の受光面積は大幅に減少してしまう(このことも効率向上にとって重要な問題になる)。
 この問題に対しては二つの貴重な新しいデバイスアーキテクチャが開発された。一つ目のメタルラップスルー(MWT)デバイスの場合は、薄い金属“指”が裏面へ移動する。二つ目のエミッタラップスルー(EWT)デバイスの場合も、パワー伝達バスバーが裏面へ移動し、表面は金属のない状態になる。これらの金属の移動によって、小さなビアの穴あけが可能になり、表面と裏面の接点が接続される(図2)。MWTではウエハ当たり約200穴が必要になる。EWTではそれぞれのウエハに最大2万個のビアが必要になる。このような大量の穴を商業レベルで加工できるのは、レーザによる穴あけ加工しかない(図3)。現在では数十Wの出力をもつ1064nmレーザが選択されている。しかし、この場合もすでに532nmと355nmの代替レーザに注目して、より小さな穴を最小の熱損傷で加工しようと試みているメーカーがある。これらの要件はいずれも効率の向上に役立つ。
 オールバック・コンセント・セルの場合に必要となる複雑な微細構造を形成するためのさまざまな設計が検討されている。例えば、いわゆるRISEセル設計では、負と正の基礎接点が異なる段差で配置されるため、それぞれ数層の比較的大きな面積のレーザアブレーションが必要になる。この加工は、エキシマレーザ(248nm)や固体レーザ(1064、532および355nm)など、各種のレーザによって試されている。他のいくつかの加工と同様に、1064nmレーザではいくつかの望ましくない周辺熱損傷が発生した。
 埋め込み式の電気接点は、スクリーン印刷された表面のメタライゼーションによって不透明になった面積を最小にするもう一つの方法になる。この技術は1980年代の中頃に米BPソーラー社によって特許化された。この方法では、表面に窒化ケイ素の反射防止膜を被覆した後に、532nm(または355nm)のレーザを使用して狭い表面溝がスクライビングされ、さらにめっきされる。その結果、溝幅と比べて大きな体積と捕集面積をもつ電極が形成される。20〜30μmの幅と深さをもつ溝が電池にそって2〜3mmの間隔で加工される。この方法は最近になって採用されたが、レーザは反射防止膜のみを切断するため、露出された半導体の電気めっきが可能になる。
 原料シリコン自体の切断にレーザを利用しているメーカーもある。例えば、独RWEショットソーラー社はシリコンを中空八角形状に引き出し、それぞれの面を細長いウエハに加工している。八角形のそれぞれの頂点は1064nmレーザによって高速切断される。他方、米エバーグリーン・ソーラー社はシリコンの8cm幅のリボンを溶融シリコンから引き出している。この工程ではリボンが1064nmレーザによって切断あるいはスクライビングされ、都合のよい長さに加工させる。

薄膜デバイス

 現在の薄膜デバイスの多くはガラス基板上に製造され、膜厚がわずか数μmのシリコンが使用されている。効率は10%以下になる。この効率はシリコンの形態に依存し、非晶質シリコンでは6%という低い値になる。この低い値のために、メーカーはCIGS(銅インジウムガリウムセレニド)などの他の薄膜材料を追求しているが、CIGS であっても、効率は12〜13%にしか達しない。しかし、このような低い効率であっても、製造コストが潜在的に低い薄膜デバイスは多大の関心を集めている。その究極の目標はロール・ツー・ロール方式の連続加工だと考えられるが、この場合はフレキシブル基板の使用が必要になる。金属箔の利用も始まっているが、プラスチックは今のところ加工に十分なロバスト性が得られていない。
 薄膜デバイスは依然として初期の段階にあり、現時点でのレーザの大規模利用は三つしかない。薄膜の場合はエッジの削除がエッジのアイソレーションに相当する加工になる。基板上にさまざまな層が堆積すると、それぞれの層は同じ線で終端されるとは限らない(詰め込みすぎたサンドイッチと同様である)。その結果、電気的短絡やその他の機能上の問題が発生する。そのために、すべての層が高出力1064nmレーザでスクライビングされ、基板から切り落とされる。
 結晶シリコンPVとは異なり、薄膜デバイスはモノリシック集積が可能な大面積(1m2が標準)で製造される。このパネルは最大200個のセルに分割され、直列の電気接続が行われる。この分割とコネクタパターンの形成には、数層のそれぞれの蒸着ごとにパネルをスクライビングしなければならない(図3)。この加工は1064nmと532nmのレーザの両方で行われ、ターゲット層よりも下の層のスクライビングを避ける深さ制御をしなければならない。深さ加工の精度は波長と注意深い照射量の制御から得られる。ガラス基板の場合は532nmレーザによって基板の透明性を利用した裏面からのスクライビングが可能になる。
 薄膜PVへのレーザ応用には基板のマーキングもある。通常は2次元(2D)データマトリクスがマーキングされ、このマークを利用して基板の追跡と記録がすべての加工工程を通して行われる。

エネルギー支援

 化石燃料への依存が、経済的にも環境的にも大きな影響を受けている現状を考えると、代替エネルギー源の開発が唯一最大の技術的課題であると言っても過言ではない。レーザはマイクロエレクトロニクスの製造を可能にした重要な技術だが、代替エネルギー源の開発においても重要な役割を果すことは間違いない。

図1 エッジアイソレーションのレーザ溝加工:(a)1064nm(b)532nm(c)355nm(d)代表的なアイソレーション線;355nm(e)355nmアイソレーション溝の狭いカーフ

図2 いくつかの新しい太陽電池の設計では電子回路が裏面に再配置される。これは小さなビアを穴あけし、表面と裏面の回路の接続によって可能になる。

図3 レーザスクライビングでは堆積した多層膜のそれぞれの層を順番にスクライビングする必要があるため、一般に複数のレーザが使われる。この図の場合はP1、P2、P3の順にスクライビングを行う。

Cutting記事一覧へ marking & engraving一覧へ Micro Processing一覧へ

TOPへ戻る

Copyright© 2011-2013 e.x.press Co., Ltd. All rights reserved.