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史上最大のアンテナを持ち、RF 干渉に抵抗するNASA のSMAP 機器

2015年1月29日、NASA はSMAP (Soil Moisture Active Passive) 機器を搭載した衛星を宇宙空間に打ち上げ、画期的サイズのメッシュアンテナ経由で土壌の水分レベルを正確に測定することになった。
 機器の構成は主にレーダー、放射計、今まで打ち上げた中では最大の大きさを誇る回転式メッシュアンテナである。SMAPはいったん活動状態になると地球の気候や穀物生産高などから、近く起こりそうな洪水や干ばつ、地すべりといった自然災害に至るまで各種予報をサポートする。地球の土壌の水分は地球全体の水分に比べれば、ごくわずかにすぎないが、農業と気候に非常に大きな影響を及ぼしている。SMAP は「アクティブ(自ら信号を発信)」および「パッシブ(存在する信号を記録)」両方のリモートセンサを備えている。これによりSMAP は地球上の土壌の水分レベルに関して非常に高精度の高分解能測定が可能となった。
 SMAP を製造したカリフォルニア州パサデナのNASA ジェット推進研究所(JPL : Jet Propulsion Lab) の科学者チームは、目的達成のために1×4フィートと制限されたスペースに直径19.7 インチという最大のパラボラアンテナを組み込んだ。このアンテナによりSMAP は地球の周囲を3日またはそれ以下の周期で周りながら高精度データを記録することが可能となった。一方で、アンテナは「関節」を曲げたアームに取り付けられ、アーム周囲を1分あたり14回転する(つまり4秒毎に1回転)。「これを回転投げ縄と呼んでいる」とJPL のSMAP 機器マネージャーWendy Edelstein 氏はNASA の最新プレスリリースで語っている。しかし、アンテナのサイズが科学者にとって悩みの種だった。つまり発射時にはゴミ箱ぐらいの大きさの空間に押し込まれるが、正確無比に広がって数ミリ以内の表面メッシュの形を再現できなくてはいけない。「間違いなくアンテナが大問題だった」とEdelstein 氏は言う。Northrop Grumman Astro Aerospace製造のメッシュアンテナは、外向けにメッシュをひっくり返す1本のケーブルの命令どおりに、アコーディオンのように伸縮する軽量なグラファイト・サポートが引き金となる。「サポートの上でメッシュが止まらないとか展開時に破れてしまうとか、思わぬ障害が起きないよう確認した。すべてにおいて極めて注意深い技術が必要だった。テストにテストを重ね、またテストした。そうやって安定した堅牢なシステムを作り上げたんだ」とEdelstein 氏は語った。
 SMAP のレーダーが使うアンテナは、地球に向けてマイクロ波を送信して、戻ってくる背後散乱波を受信する。このマイクロ波はSMAP アンテナに跳ね返ってくる前に土壌に数インチだけ貫通する。SMAP は受信したマイクロ波の電気特性の違いを検知することで土壌の水分を検出する。さらに同じプロセスによってSMAP は土壌が凍結しているかどうかも判断できる。合成開口レーダープロセスを用いて、SMAP のレーダーは高解像度の高性能画像を0,8 ~ 2.4km (0.5 ~ 1.5 マイル) ごとに生成できる。このようにしてSMAP の放射計は、土壌の水分により地球に元々あるマイクロ波放射における差異を図表化できる。だが、NASA のエンジニアは無線周波数の干渉という難題を解決する必要があった。特に、SMAP が使うマイクロ波の波長は科学的用途のみとして技術的に確保されているが、航空管制や携帯電話など近くにある他の信号はSMAP の波長近辺に分布している。
 NASA Goddard Space Flight Center in Greenbelt, Md のエンジニアは非常に複雑な信号処理システムをSMAP 用に設計・ 製造して、この問題に対応した。長期間にわたるデータを平均するため脆弱かつ干渉の最も短いバーストでも完全に危険にさらされる通常の信号処理とは異なり、Goddard の科学者グループは無線周波数干渉のごく一部だけを削除する方法を編み出した。これによりSMAP のデータはほぼダメージを受けない状態となる。レーダーと放射計の信号を組み合わせることで、チームは問題を最小限にしつつ、2つの技術を最大限利用できる。JPL でSMAP を担当する研究者Eni Njoku 氏は「放射計は正確な土壌水分を知らせてくれるが、粗分解能は40キロメートル(25マイル) にすぎない。レーダーでは高解像度が可能だが、正確ではない。2つの信号を合わせて解析すれば正確で高解像度の測定ができる」と話している。
 詳細は下記のウェブへ。(2015/01/08)
 - eoPortal(Earth Observation Portal)
 - NASA