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IEEE会長コラム:世界的な不確実性の中でIEEEのステップアップを

 かつてない課題が山積する1年となったが、IEEEでの取り組みは継続している。2020年が終わりに近づくにつれ、私はIEEE会長としてこの一年を振り返ってみて、世界を変え、パラダイムシフトを遂げた12か月に驚嘆するばかりである。今年、明白になったのは、IEEEが単なる技術会議や出版物、規格だけではないということである。IEEEは力強く国際社会に積極的に関与して、年々成長し、従来以上に多様で奥の深い、必須の仕事に貢献している。今年、IEEEのコミュニティは新しい方法で集まって、COVID-19の世界的なパンデミックという課題に直面し、体制を強化した。
 2020年という年がプロフェッショナルなエンジニアおよび技術者が社会に与えた影響を見ることができる。驚くような工学的発展、重要な医学的、技術的進歩を目の当たりにしてきた。コンピュータや通信を活用して、個々の人や家族を安全に守りながら必須の作業を継続できるよう、つながりを維持している。地域社会や国を超え、世界的規模で私達が目にした課題や変化は、プロのエンジニアや技術者、教育者、年若い専門家、技術分野でキャリアを始めようとしてる学生の貢献には依然として高い需要があり、大きなインパクトを持っていることを証明している。
 IEEEメンバーの誇りを持つ全会員に心から感謝したい。メンバーであること、仮想コミュニティやオンラインセミナーへの参加、ジャーナルへの執筆、専門性への意欲、これら全ての熱意に感謝する。IEEEの成果物、通信、支援を改善する方法については模索していきたい。また、メンバーが日々行っている重要な業務について、世間一般、政策立案者、ニュース媒体との関わりを続けていく。
 主要な委員会(committee)、分科会(section)、学会(society)、評議会(council) の委員会(board) に参加した多くのボランティアリーダーおよび地域(region)、支部(chapter)、副支部(branch)が行っている仕事に時間を割いてくれた全ての人に感謝申し上げる。総じて、今年はどんなレベルでも必要なときに参加を表明してくれたボランティアたちが何千人もいた。プロフェッショナルたちは、ボランティアの努力に対し惜しみない感謝の念を抱いている。最後に、この特異な状況下で、世界中の専門スタッフが働きながらIEEEの使命とメンバー支援という課題に取り組んでくれたことへの感謝を忘れてはいけないだろう。

●新しい通信
実際に会う機会が失われたにもかかわらず、今年はこれまで以上にIEEEが重要な役割を果たした。IEEEの運営は継続されただけでなく、高まる技術リソースへのアクセス需要に対応するため、パンデミック関連の論文の迅速な普及を強化し、会議やイベントをオンラインプラットフォームへとシームレスな移行に対応し、さらに最も重要な接続・通信の新しい方法を採用した。IEEEの会員数は今も増えており、リソースへの需要は高まっている。IEEEは、世界中のいろいろな社会で会員が果たす重要な役割への人々の理解を深める努力を続けてきた。
 パンデミックという課題に対応するため、技術を用いてよりスマートに働き、技術をどのように、どこで使えば最適かを提供することで、より多くのユーザーにつながる方法があることを学んだ。例えば、2020年秋に開催されたリージョン10の学生、若い専門家、工学系女子、ライフメンバーによるバーチャル会議には、10,000人を超えるオンライン参加者が集まった。従来の終日にわたる会議の代わりに、会議は短い時間で16日間、開催された。そのため、幅広い時間帯からメンバーが参加でき、同時に専門的および個人的な責務を果たす柔軟性も得られた。
 インテリジェント・ロボットおよびシステムに関する国際会議はオンデマンド会議に軸を移し、時間と空間の制約を超えて、1,400以上の技術発表と個別指導の録画済みビデオ60件を閲覧できるプラットフォームが提供された。これにより参加者は、いつでもどこでも、どのデバイスからでも、容易にコンテンツにアクセスできるようになった。
 個人的には、非常に多くのバーチャルイベントに参加することで、パンデミックにもかかわらず、今まで以上に多くのIEEE活動に関わり、世界中の多くのIEEEメンバーと交流することができた。IEEE会長として、今年はとても興味深い1年だった。COVID-19収束後の会議および会議環境を考えるには、順応性、柔軟性、革新性が必要になる。IEEEとしては、私たちの持つ最先端の技術コンテンツの恩恵を全て参加者に提供できるような、新しくハイブリッドなバーチャルイベントのモデルを開発する好機である。

●教育の進化
IEEEの開発でもう1つ有望なのは、継続的な専門教育と生涯学習という分野でIEEEの役割を引き続き進化させることである。IEEEが専門能力開発における推進力の1つであることは責務であり、最新のオンラインプラットフォームとユニークで世界規模のボランティア組織という利点を活かし、地球上のほぼどこからでもローカルコンテンツという観点を提供していく。
 AIやIoT、スマートグリッドに関するIEEEアカデミーを作るためのアクションプランが策定されている。IEEEアカデミーでは、最短の学習経路でトレーニングを受けることが可能なので、メンバーに新しく独自の価値を提供できる。興味のあるキーサブジェクトに関するe ラーニングコース、オンラインセミナーの録画、動画、記事などのリソースと、新しい資料を組み合わせることで、概念と資料を適切に結びつける過程に学習者を導くこともできる。IEEEのボランティア教育主任たちは、このような分野で専門家の能力を高める教材を用意している。

 前例のない挑戦と不確実性の2020 年を通じて、学会(society)のいたるところで重要な改善を実施するメンバーの活動により「人類の利益のために技術を進歩させる」というIEEEの使命を目の当たりにするすばらしい機会があった。これこそIEEE などのグローバルコミュニティに参加する主な利点の1つであると思う。IEEEメンバーは共に世界を変えてきたし、これからも日々、それを続けていく。
 IEEEには将来性と可能性という未来がある。共に、その未来を作っていこう。この特別な年にIEEEの進歩を支援してくれたことに感謝したい。

president@ieee.org宛に、コメントを送っていただければ幸いである。
原文は下記のウェブへ(2020年12月)。
https://bit.ly/3q64k1z

[※訳者注] この記事は、IEEE SPECTRUMD誌 2020年12月版に「Amid Global Uncertainty, IEEE Steps Up」として掲載されたもの。IEEEは40万人を超える学生と専門家から成る世界的なネットワークである。