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UNECE Regulation 10:最悪の事例

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 新しい型式認証や既存の認可に拡張を適用する前に、適用できる試験についてTechnical Service(以下TS)と合意しておかなければならない。本稿では新しい認定について述べる。
 メーカーが複数の機種および/または機種構成を持っている場合、最悪の事例はR10.05の技術要求適合を示すのに必要な試験の数を大幅に減らすことができる。車両等の相互承認に関する国際的な協定(1958年協定)の最新の改定で、最悪の事例は全て文書化し認定に含まれるべきであると要求している。
 どの機種/機種構成で試験をするか決定するためTSは機種/機種構成それぞれの違いについて、また車両の場合はどのシステムを車両と共に認定するか、よく理解する必要がある。情報文書(附則2A/B)にはこれに関する多くの情報が載っているが、TSは普通、最悪事例を適切に判断する追加の質問を用意している。メーカーならB71XVEU-12887について正確な知識があるだろうが、説明情報なしではTSも何をもとに決定するかわからず「疑わしきは試験せよ」というデフォルトの立場を取ることが多い。

1.試験の除外
 広帯域の放射エミッション試験は常に要求されるが、R10.05は多くの試験の除外があり、セクション6.10にリストアップされている。
 車両や、周波数9 kHzで動作するESA※内に電子発振器がない場合は、狭帯域放射エミッションが生じる可能性は殆どないので、型式は試験せずに規則および適用可能な附則(車両は附則5、ESAは附則8)の要求に適合していると見なされる。
 車両またはESAに「イミュニティ関連の機能」がない場合は、試験はせずに、規則および適用可能な附則(車両は附則6、ESAは附則9)の要求に適合していると見なされる。「イミュニティ関連の機能」については本稿の次のセクションで説明する。
 ESAの場合、型式が更新されず、(電気機械的な)スイッチ、例えばリレーを含まない場合、あるいは誘導性の負荷がない場合には、電源ライン上に過渡エミッションの干渉源がある可能性はないので、規則の要求に適合していると見なされる。
 R10.05で明確に述べられているわけではないが、除外が適用される場合、試験レポートおよび最悪事例の文書のどちらかを文書化する必要がある。
 R10.05のセクション6.10には、静電気放電試験およびRF受信機、送信機の帯域要求に基づく帯域内での性能についての除外もある。車両またはESAに送信機が組み込まれている場合、試験中は送信モードでなければならない。遮蔽された試験室でこれを達成するのはむずかしく、ネットワーク・シミュレータや同様の機器を用いて送信機が試験中にタイミング外になったり、スタンバイモードやスリープモードになるのを防ぐ必要があるかもしれない。イミュニティ試験中にライブネットワークリンク、特にリピータを使う場合は注意を要する。(オペレータがまさに異議を唱えるような)ネットワーク中断が生じて限られた範囲の帯域に非意図的にRFエネルギーを送信し、商用放送に干渉したり航行ナビゲーション信号などの重要な信号を妨害したりする可能性がある。後者の場合、国が関わるスペクトラム管理団体による訴追につながる恐れもある。試験を実施するラボラトリは、このことに十分留意し、必要な予防措置を講じる必要がある。

2.イミュニティ関連の機能
 R10.05は主に安全をベースにした規則であり、性能ベースとは対照的で、車両システムの干渉を最小限にすること、および運転者、乗客、他の道路利用者の保護に関係している。「イミュニティ関連の機能」は規則のセクション2.12に定義され、いくつかの例が挙がっている。かなり含みの多い定義にもかかわらず、特定のESAにイミュニティ関連の機能があるかどうかで意見の相違が生じることもある。そのような場合には、認証機関は解釈を実施するかもしれない。認証機関は、定期的にミーティングをして経験を共有し、このような案件を協議して(理論上は)共通の見解を持つようにしている。

3.動作モード
 1つ以上の動作モードのあるESAは、最大のエミッション値を確実に捉えるため複数回の試験が必要である。あるいはイミュニティの場合は、ESAは電磁界が存在するところで各モードとも正確に動作するか確認する。車両レベルでは、さまざまな動作モードをカバーするため複数回の試験も必要となる。
 TSは1モードの動作のみを技術的に判断することもあり、車両の場合は試験車両それぞれに異なるモードを指定して、いろいろな動作モードを扱うこともある。この概念を説明するため、アダプティブ・ヘッドライトの事例を考えてみよう。通常モードでは「ハイビーム」モードだが、周辺の光が設定された閾値を超えたり、接近車両が検知される(システムはこの単純な事例よりずっと複雑だろうが!)と、「すれ違いビーム(dipped beam)」モードに切り替わる。「ハイビーム」モードは他の道路利用者の注意を散漫にする可能性があるため、ESAは「イミュニティ関連の機能」を持つ。
 次にTSは、ESAがRF電磁界に反応してモードを切り替えないよう確認する必要がある。つまり接近する車に伴って日中「ハイビーム」に切り替える、あるいはガラガラの自動車道で「すれ違いビーム」に切り替える場合などである。TSは、2回の試験が必要か、1回の試験で十分なのか、実装の具合によって決定する。

4.最悪事例の選択
 車両の場合、複数の車両を試験して、車両に組込可能な全ての電子システムが基本機種の認証によりカバーされているかどうか確認する必要がある。例えば、異なる送電オプションがある場合、組み込まれた型式それぞれを適用できる附則に従って試験しなければならない。しかし、個々の送信機がESAとして別途、型式認証されている場合は、基本機種の認証がその送信機をカバーしている必要はない。
 全モデルの全てのオプションが揃わない場合もあるので、1台の車両で全てのシステムを試験することはできない。
 ECU(engine control unit:エンジン制御ユニット)あるいはECM(engine control module:エンジン制御モジュール)は、1970年代に登場した。それ以来、ECUは車両のほぼ全ての局面を制御するよう進化し、ベーシックなモデルにさえ50ものモジュールを組み込むようになっている。高級モデルには150以上のモジュールが組み込まれ、運転アシストや自律運転などの追加機能によって、この数は増える一方であり、最悪事例が今まで以上に複雑なものになっている。
 個々のESAはそれほど複雑ではないが、それでも複数の機種が存在する可能性がある。TSは可能な限り、要求される試験の数を最小限にしようとする。放射エミッションでは、車両のバッテリから最大電流が流れる機種のみに試験が必要と判断されることもあり、より適切な最も技術的に複雑な機種が選ばれることもある。
 ESAに異なる通信バスオプション(CAN, LIN, FlexRayなど)がある場合、最悪事例のエミッションを捉えるため各オプションを試験し、イミュニティ試験中のデータバス機能を確認する必要があるかもしれない。ESAが「イミュニティ関連の機能」を持つ他のESAのデータバスに接続されていない場合は、1つのオプションのみで十分である。
 以上より、最悪事例は高度な技術を要し、メーカーおよびTSの両者が関わることが求められるのは明白である。

▼ AMETEKのR10ガイドブックダウンロードページはこちら。
https://learn.ametek-cts.com/free-guide-essential-information-onunece-regulation-10-for-automotive-emc/

参考文献
UNECE Regulation 10, Revision 5( 9 October 2014):
https://www.unece.org/fileadmin/DAM/trans/main/wp29/wp29regs/2015/R010r5e.pdf
UNECE Regulation 10, Revision 5, Amendment 1( 8 October2016):
https://www.unece.org/fileadmin/DAM/trans/main/wp29/wp29regs/2016/R010r5am1e.pdf
E/ECE/TRANS/505/Rev.3( The 1958 Agreement, Revision 3(14 September 2017))
https://www.unece.org/fileadmin/DAM/trans/main/wp29/wp29regs/2017/E-ECE-TRANS-505-Rev.3e.pdf

[※訳者注]
ESA: Electrical/electronic sub-assemblyの略。電気/電子サブアッセンブリ

2018年4月19日 Sponsored by AMETEK CTS