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DO-160規格の概要(その1)

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 航空宇宙分野において常に出てくる規格の1つがDO-160である。航空機のサプライヤは製品をDO-160で試験することにより航空当局の規則に適合していることが多い。
 DO-160は、RTCAとして知られる業界団体が発行した規格である。RTCAは政府規制でないが、FAA※2 や EASA※3 などは、RTCA/DO-160を引用して認可する手段としていることが多い。
 実際には、RTCA/DO-160は航空宇宙環境試験のデファクトスタンダード(de facto standard:事実上の規格)である。
 DO-160は環境とEMCの両方の要素を含むが、本稿ではEMC関連のセクションの概要だけを扱う。本稿では各セクションを一通り解説し、それぞれ特定の課題とともに試験を詳しく説明する。
 さて、RTCA/DO-160 には何が記載されているのだろうか?

1.DO-160の環境試験
 最初に注意すべきことは、DO-160が試験手順だということである。これは要求事項でもハンドブックでもない。確かに、どんな試験が適用可能かのガイダンスはあるが、核心となるのは企業が試験のカテゴリ、方法、手順を標準化する必要性である。この標準化を使えば、航空宇宙サプライヤは複数の航空機に対して容易に認定を受ける製品を生産することができる。
 例えばBombardier社、EMBRAER社、Boeing社全てに異なる試験が必要なら、サプライヤは3社全ての試験要求事項を理解する必要がある。そのうえ、メーカー規格に対して試験を行う試験所は、異なる全ての手順を読み込んで対応する必要もあるだろう。
 RTCA/DO-160ができて採択されたことで、航空会社、サプライヤ、試験所の全てが試験の標準化から以下のような恩恵を受けることになった。

・ 航空会社は、試験規格や手法、手順の維持を要求されない。
・ サプライヤは、複数の航空機プラットフォームに対応する製品を生産できる。
・ 試験所の効率は向上し試験一式を熟知するようになる。
・ 航空会社は、共通規格から試験の由来を認識する。

 では、DO-160 とはどんなものだろうか?

2.RTCA/DO-160の目次
・セクション 1.0:目的と適用範囲
・セクション 2.0:用語の定義
・セクション 3.0:試験条件
・セクション 4.0:温度及び高度
・セクション 5.0:温度変化
・セクション 6.0:湿度
・セクション 7.0:運用衝撃及び破壊時の安全性
・セクション 8.0:振動
・セクション 9.0:防爆性
・セクション 10.0:防水性
・セクション 11.0:流体感受性
・セクション 12.0:砂じん
・セクション 13.0:かび抵抗性
・セクション 14.0:塩水噴霧
・セクション 15.0:磁気影響
・セクション 16.0:入力電源
・セクション 17.0:電圧スパイク
・セクション 18.0:音声周波伝導妨害感受性(電源入力)
・セクション 19.0:誘起信号妨害感受性
・セクション 20.0:無線周波妨害感受性(放射及び伝導)
・セクション 21.0:無線周波エネルギーのエミッション
・セクション 22.0:雷誘起過渡妨害感受性 
・セクション 23.0:直撃雷の影響
・セクション 24.0:着氷
・セクション 25.0:静電放電
・セクション 26.0:火災、燃焼性
・附属書A:環境試験の識別
・附属書B:委員会構成員
・附属書C:コーディネーターの変更

目次をざっと見た後は、EMCに関係した各セクションを見てみよう。

3.RTCA/DO-160のEMC関連セクション
3-1.セクション15.0:磁気影響
 技術的には、磁気影響はぎりぎりEMCの範疇になる。この試験は方位磁針(compass)など重要な飛行センサに対する機器の影響を測る。最終的な目標は、こういった航空機センサに対してどこに製品を設置できるか決定することである。磁気影響の試験結果が問題になることは極めて少ない。(図1参照)

3-2 セクション16.0:入力電源
 入力電源は、ほぼ70ページにもおよぶ最も長いセクションである。試験は製品の電源(28VDC,115VAC,270VDCなど)に依存して実施される。このセクションの試験は、通常・異常・緊急動作電圧から電圧サージにおよぶ。ACの高調波、インラッシュ電流、力率なども測定できる。このセクションには、電源の入力ラインに関わる全てのものが含まれる。
 AC電源機器に対するカテゴリは、求められる周波数範囲によって分類されている。例えばカテゴリA(CF)は、中心周波数が400 Hzに固定された電源である。A(NF)は周波数範囲が狭い360 ~ 650 HzでNarrow Frequency(狭帯域)と呼ばれている。またA(WF)は周波数範囲が広い360 ~ 800 HzでWide Frequency(広帯域)と呼ばれている。
 DCカテゴリは、“A”がトランスと整流器のユニットから供給されるDCで、“B”が重要なバッテリ電気容量を伴う電源、“D”が270VDCの機器、“Z”がバッテリの電気容量が一定でない機器である。
(図2参照)

3-3.セクション17.0:電圧スパイク
 電圧スパイクは、製品ユニットの電源リード(ACまたはDC)に到達している電圧スパイクに対して、製品が許容できるかどうか決定する。予想される主要な副作用は、継続的な損傷、部品の故障、絶縁破壊、感受性低下または機器性能の変化である。
電圧スパイクは2つのカテゴリに分けられる。カテゴリ“A”は600 Vのスパイクを印加し、カテゴリ“B”は200 Vのスパイクまたはライン電圧の2倍のうち、どちらか小さい方のスパイクを印加する。(図2参照)

3-4.セクション18.0:音声周波伝導妨害感受性(電源入力)
 音声周波数は、航空機の飛行中に通常見られるような周波数成分をユニットが許容できるかどうかを決定する。これらの周波数成分は、一般的に電源基本周波数の高調波である。
 音声周波数に対するカテゴリは、その反映または電源入力となる。それには、AC電源に対してR(CF)、R(NF)、R(WF)、DC電源に対してR、B、Zなどが含まれる。カテゴリK(CF)、K(NF)、K(WF)は、より高い歪みレベルでAC システムに対して必要になる場合もある。
 試験は音声トランスを通して主電源に歪みを印加する。(図4参照)

図1.DO-160図15-1:試験設置と手順
図2.標準的な試験セットアップ例
図3.DO-160図17-2:電圧スパイク試験セットアップ、DCまたは単相AC
図4.DO-160図18-1:音声周波数伝導感受性試験の試験セットアップ(ACおよびDC電源線、ディファレンシャルモード)

[※訳者注]
1.RTCAは米国で1935年にRadio Technical Commission for Aeronautics( 航空無線技術委員会)として設立された民間非営利団体の航空技術諮問機関。現在の名称は  略称「RTCA」で、世界的な団体になっている。主な役割は下記のとおりである。
  ・航空に関する要求事項・技術的コンセプトの調査検討に取り組み提言を行う。
  ・航空要求事項を満足させる電子技術分野の新技術適用指針、機能規格、性能規格などの文書の作成を行う。
2.FAA:Federal Aviation Administrationの略で、米国「連邦航空局」の意。
3.EASA:European Aviation Safety Agencyの略で、「欧州航空安全機関」の意。