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自動車用イーサネットÜbersystem:Stephen Jackson氏インタビュー(その1)

 広い帯域を持ち、待ち時間が短く、重量は軽い。これがÜbersystemである。OPEN (One-Pair Ether-Net)Alliance ※1 イーサネットで、自動車、航空宇宙などの用途に適している。2018年6月12日に、著者はKeysight社Ixia Solutions GroupのStephen Jackson氏(以下Steve)と話をした。話題は、なぜ自動車用イーサネットはADAS※2、パワー・トレイン、ボディエレクトロニクス、インフォテインメントに最適なソリューションなのか、そしてこれがTSN(Time-Sensitive Networking)の助けを借りて最適となる進化であるということについてであった(Steve は元々のIEEE イーサネットPoE※3 規格802.3afに関わっていた。自動車イーサネット用の限度値は約5 W IEEE 801.3buである)。[1]
 自動車用イーサネットはIEEE規格802.3bwで、よくBroadR-Reach®(BRR)と呼ばれ、部分的にOPEN Alliance Special Interest GroupのBroadcomルーツに基づいている。BRRは、他のバージョンのイーサネットで見られる4本のツイストペア線の代わりに1 本のシールドされていないツイストペア線を使っている。車両内の全ての信号配線がBRR規格なら、配線用ハーネスの重量の約80%[1]と作業の大部分[2]を削減できるだろう。この規格によって、複数のベンダーがこのユビキタスをセキュリティ・システムや産業機器、ドローン、果ては航空機など多くのプラットフォームに使うことが可能になる。BRRには従来の有線イーサネットでは通常100 mであるところ10 mという制限があるが、普通の車両はこの距離内におさまるので問題はないとSteveは言う。
 Steveはまた、BRRは多くの車両システムに適用できるが、広く受け入れられる最初の領域はインフォテインメントだろうと話している。自動車用イーサネットの方が結局うまく機能し、より速い!にしても、既存の技術(legacy technologies)は極めて重要な車両制御の領域で広く使われている。費用対効果のため自動車用イーサネットは今やCAN、LIN、FlexRay、Mostが主役となる領域へと移り始めている。[1]
 CANは 確定系(deterministic system) の一例である。FedExと同様、メッセージがいつ確定系に届くかわかる。[1] 確定系は一定の入力を与えると、いつも予測できる出力を生じる、つまり一意的な入力事象と出力事象のペアができる。[1,3] TSN(Time Sensitive Networking)を実行するイーサネットの規格を用いるとイーサネットは確定系にできる。TSNはOS(I Open Systems Interconnecion)モデルのレイヤ2で実行される(図1)。[4-6] TSNは拡張性があり、ほぼ全ての車両機能に使用できる![10] だがLIN、CAN、Flexray、Mostなどには依然として何万行ものコードがある。[7] コーディングの慣性と、配備されたシステムが大規模生産用に完全に禁止される必要があるため、産業はすばやく変化できない。[1] Steveによれば、確定系の技術は既存の自動車部品で認識されているアドバンテージを減らすだろうという。大量生産の既存技術という大きな慣性のせいで、これには時間をかけなければならない。経済状態は、イーサネットが使用可能なTSN を備えたワイヤハーネスの採用を後押ししている。[1]
 Steveは、TSNがどのようにしてAVB(Audio Visual Bridging)の次の進化になるのか説明してくれた。AVBはインフォメーションパケットのスケジュールや低い潜在性の実行、自動車用イーサネットの決定論を助ける(この意味での「time」は平均値ではなく最悪の遅延または待ち時間を指す [1,17,18])。Timeは確定系では非常に重要である。AVB は時刻認識ネットワーク(time aware network)を意味しないので、IEEE AVBグループは2012年にIEEE TSNグループになったという。Steve は、Analog Device 社勤務でIEEE TSNグループのVolker Goller氏やNew Hampshire大学の Interoperability Lab、Broadcom社などがTSNについて書いた記事をいくつか紹介してくれた。TSNはOS(I図1)の2番目のレイヤで実行されるので、データのスケジューリングができるようになってコリジョンがなくなり、データは正しいスイッチにより正しい時刻(Time)で受信される。TSN の実行に使えるIEEE 802.1の
副規格一式があるが、全てを実行する必要はない。
 情報が常に届くようデータパケットは冗長にできる(IEEE 802.1CB)。シームレスな冗長性によって、同じメッセージは確実に2つ以上の異なる経路で送信されるようになる。 [16-18] 2回目のメッセージが到着すると、冗長メッセージは廃棄される。複数のメッセージを送信することで、輻輳や機器の故障によって失われるフレームが減る(図2)。[9,15-18]
 TSNにより1つまたは複数のグランドマスタークロック(GMC:Grandmaster Clock)にIEEE 1588の一部であるIEEE 802.1AS(REV) のPrecision Time Protoco(l PTP)が可能となる。[18] 最適なGMCを選択するには、Best Master Clock AlgorithmBMCA)を使う。部品の商品価値を改善する1つの方法はクロックのコストを下げることであり、そうすればネットワーク全体を絶えずチェックする時間が必須となる。[9]

図1.Open Systems Interconnection(OSI)モデル。
図2.802.1CB信頼性を高めるフレームの複製および削除。
図3.高速フレームをあらかじめ空にできるフレーム(preemptible frames) IEEE 802.1br。

[※訳者注]
1.OPEN Alliance:車載Ethernet規格BroadR-Reachの策定・普及に特化した団体。
2.ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)。
3.PoE: Power Over Ethernetの略称で、LANケーブルで電力を供給する技術のこと。