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EMC規格【特集】「MIL-STD-461」レビュー by Steve Ferguson(3)CS101 伝導感受性「電源リード線」

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1.はじめに
 この記事は、MIL-STD-461の現行版である改訂“G”版のアップデートに基づくCS101のレビューである。試験表題「伝導感受性、電源リード線(Conducted Susceptibility, Power Leads)」は、EUTの電源入力に妨害が印加される場合の試験を明確に定義している。EUT に妨害が印加されている間、性能が許容範囲内であることを検証するためにEUTをモニタする。既存のシステムにある新しい部品の適合性を維持するために、以前の改訂版が引き続き使用されているかもしれないことに注意すること。
 妨害源、結合経路、被害機器は電磁的両立性(EMC)に不可欠な要素である。CS101でもそれは同様である。電源バス上のあらゆる機器からのノイズや、より顕著な電源周波数高調波は、電源線に妨害を与える可能性がある。この妨害波は電源バスを経由して電源バスを共有している他の機器に伝導する。その周波数で他の機器が敏感であった場合、感受性が生じる。途中、妨害を受けたケーブルは無線受信機のオーディオなど敏感な信号ケーブルに平行して布線されることもあり、誘導結合が感受性を助長する。つまり、このリスクはアナログ回路を使った無線通信の初期の頃からあり、今日に至っても脅威であり続けている。
 1967年にMIL-STD-462が最初に発行されて以来、CS01はずっと試験方法の1つであり、MIL-STD-461A ~ Cは限られた条件でこの試験を適用していた。目的は、電源線に現れる低周波妨害に対して試験製品の感受性が高いかどうか決定することであった。以前は、CS01の周波数範囲は30 Hz ~ 50 kHz、CS02で50 kHzからと規定されていた。公称電源周波数の10 %以内の試験は免除されていた。試験手順は、妨害信号を電源線に注入するトランス結合を要求していて、この基本的な手法は今も使われている。
 初期の規格では、試験に二重限度値もまた設定されていた。目的は、電源入力端子間で正確に測定した妨害信号電圧を適用することであった。だが電源の入力特性インピーダンスが非常に低い場合、何が起こるだろうか。電圧は生じず、関連する電流を用いてドライブ振幅を増やすことで電圧を生じさせようという試みは、結果的に高い電流による過熱を生じた。妨害電圧は入力端子で発生し、妨害電流は電源入力回路ループ全体を通って流れるので、電源リターン・リードへの試験は必要ないことに注意すべきである。
 この二重限度値をサポートするため、MIL-STD-461Cには、電源入力端子に適用される試験電圧に敏感でない場合はEUT を適合と見なすと記載されている。妨害信号が入力に印加されている間、妨害信号源出力が0.5 オームの負荷で50 Wを消費するよう調整されている場合もまた適合であると見なされた。目的は、この50Wのドライブを予備校正することだったが、それが義務であると手順には記載されていなかったので、多くの場合、ノイズ源に単に50 Wの発生源を使って最大限に駆動された場合の印加された電圧を測定した。
 1993年、MIL-STD-461とMIL-STD-462改訂“D”版が発行され、試験の標準化に向けたいくつかの変更があった。

・他の方法に合わせて試験名はCS101に変更。
・2つの試験電圧限度値を採用した。EUTの公称入力電源電圧が、1つは28 Vより高い場合、もう1つは28 Vあるいはそれより低い場合である。
・最大ドライブレベルは以前の50 Wから80 Wに変更され、この80 W消費の予備校正の手順が追加された。
・AC電源の試験開始周波数は電源周波数の2倍で設定された。
・全システムが適用対象となった。

 MIL-STD-461E発行に伴いMIL-STD-462は廃止され、その内容の手順書はMIL-STD-461に取り込まれた。試験終了周波数が150kHzまで上昇したことによりCS101もまた影響を受けた。MIL-STD-461F は、動作電流が100 Aを越える要求を除き改訂E 版規格の内容を引継ぎ、CS101試験を継続する。 
 MIL-STD-461Gでは、試験をどのように実施しレポートするのかということについて、いくつかの変更がある。さらに、高電圧AC電源上の妨害信号の測定を単純化するため、代替試験に関しても規定された。MIL-STD-461Gは現行バージョンなので、以下に詳述する考察の一部として、変更点について話を広げよう。また改訂G版も、30A未満の電流要求について、CS101の試験周波数範囲で敏感な動作に対するいくつか特別な例外はあるが、デバイスへの適用を制限している。

2.手順の詳細
 予備試験校正は、選択した妨害周波数でEUTが非常に低いインピーダンスを示す場合、適用する電流を制限してドライブレベルを確立するのに使われる。規格によると抵抗負荷0.5 オーム、周波数範囲30 Hz ~ 5 kHzは、消費電力80 Wで一定、5 kHz ~ 150kHzでは80 Wから0.09Wへ縦軸に対数目盛り、横軸に周波数対数目盛のグラフ上で、直線で結んだ線(Log Linear)で減少する(規格の図CS101-2)。
 図1は、試験に使われる信号供給源が結合トランスの一次巻線へ接続されている基本的な校正時の構成を示す。0.5 オームの抵抗器は、結合トランスの二次巻線の両端に接続される。電圧計は信号を測るために接続されるが、試験の最大周波数は150 kHzなので電圧計の周波数測定限界に注意する。
 校正が完了したら、試験開始周波数で信号供給源振幅が80 Wを生じるように、または抵抗器の両端で測った電圧が6.32 Vrms(136 dB μ V)になるように、調整する。EUT試験中に要求される最大駆動レベルとして結合トランスの電圧計で測定した値を記録する。周波数を高くする毎に、このプロセスを繰り返す。周波数を高くするプロセスの間、妨害波信号をモニタして、妨害波が正弦波をキープしアンプのオーバードライブ圧縮や歪みが発生していないことを確認する。モニタする必要があるため、電圧計の1つとしてオシロスコープを選んだ方がよい場合もある。測定結果が選択された許容範囲外であった場合、駆動信号を規定のレベルに校正する調整が必要である。
 これを明確にする例を紹介したいので、ここで少し寄り道をしよう。120 Hzにセットされた信号供給源周波数で、抵抗器の両端で6.5 Vrmsの測定値になるように信号供給源振幅を大きくする。6.5 Vrmsだと妨害電圧は試験に必要な上限を超えない80 Wで最低6.32 Vrms以上になる。この例では、14.5Vの結合トランスの電圧計を測定して記録する。電圧計の測定値を両方とも観察しながら、周波数を高くしていく。周波数を高くするにつれて抵抗器の両端の電圧は下がるが、650 Hzまでは最低限の6.32 V以上を保っていることに気づくだろう。この時点で、抵抗器の両端で信号供給源を6.5 Vに増やす。周波数と14.9 Vの結合トランス電圧計の測定値を記録する。抵抗器の電圧測定値が6.75 Vの許容範囲以上になったとすれば、振幅を小さくしただろう。校正周波数が5 kHzに達すると振幅限度値の下降が始まるので、試験許容範囲を超えるまで周波数を高くしたら限度値傾斜に沿って下げていく操作が必要になる。次に振幅を最小電圧へ下げる。この過程を最終周波数に到達するまで続ける。これにより校正された駆動レベルは限度値の最小値よりわずかに上になる。このプロセス終了後、CS101に適合していることを示すために試験周波数範囲にわたり要求されている振幅最大値を記録する。
 次に、EUTが妨害を受ける場合の試験に関する試験部分を見てみよう。基本的な試験構成は、図2に示すように、校正時の構成にあった信号供給源と結合トランスを使っている。感電や発火、試験測定エラーなどを生じる配線ミスの可能性が高いので、試験構成を厳密にチェックする。
例えば、

・絶縁付きのオシロスコープの電源供給に失敗すると、BNCコネクタボディなどのオシロスコープのグランド端子がライブ側につながり、感電の危険やオシロスコープ・プローブが燃えて15 cmほどの炎が上がることがある。
・ホット側のリードと直列に接続する代わりに電源端子の両側に結合トランスの2次側を接続すると、ブレーカーが時間内に落ちない限り損傷が生じる。
・コンデンサのケースの極性が負極で、貫通コンデンサ構造内の端子台が両方とも正極であることに気づかない。
・オシロスコープを結合トランスの電源側に接続すると、EUT端子間の電圧を計測したことにならない。

 試験を開始できるように、試験構成を点検する。許容範囲を構成するものを確認したので、合格/不合格の判定基準をモニタできる。EUTに電圧を印加した際、起動時に誤動作が起こり、結合トランスを取り除くとスタートアップができることが最後にわかる。トランスの一次側開放回路は高いインピーダンスを反映して、インラッシュ電流のせいで二次側の電圧低下の原因になる。一時的に小さな抵抗器を一次側の両端に置くとEUTが始動できるようになるので、試験ではその抵抗器を取り外す。
 すべてを動作させ、EUTが試験用に適切に動作するようにする。オシロスコープは、電源入力60 Hzで120Vacを示す。ここで妨害信号を加えるが、開始周波数は低い振幅から始める。EUTの電源入力端子で電圧をモニタしながら振幅を大きくするが、低いレベルの妨害信号は入力電圧があると殆ど見えないことがわかる。オシロスコープの垂直軸の表示を拡大して、より小さな電圧/ デビジョンをセットすると120 Vが垂直目盛の一部だけを示すことになり、小さな妨害波信号が見やすくなる。開始周波数120 Hzなので電源および妨害が同期する可能性があるため、121 Hzであれば小さい妨害信号がよく見えるようになる。妨害信号が見えたので試験電圧制限まで振幅を大きくし、その周波数で予備校正駆動値に達したら振幅を大きくするのをやめる。このプロセスを終了周波数に達するまで続ける。
 試験電圧を印加する目的は、試験構成に障害をもたらすことである。LISNの存在により、回路ループと直列に50 mHのインダクタが2つ挿入される。妨害信号周波数が高くなるのに伴い、LISNの誘導リアクタンスが電圧低下の原因になる。この低下によりさらなる駆動損失が強いられるので、予備校正で得られた制限値に達する。コンデンサはLISNのインダクタンスをバイパスして電圧低下を防止するのに役立つ。というのも、誘導性リアクタンスが増加するので容量性リアクタンスは減少しているからである。
 MIL-STD-461Gは、試験電圧に達していない場合に損失がどこで発生しているか割り出すための指示書を追加した。損失はLISN の入出力間で起こる可能性があるが、コンデンサが補償するはずである。シールドルーム内の試験では電源全体の損失を見ることができ、部屋内電源の電源フィルタはインダクタンスをフィルタリングに使用する。フィルタ損失を除去するために、部屋外で試験する必要があるかもしれない。バイパスコンデンサを変えることで、この損失を減らせることもある。この損失調査に関わる情報の多くは附則(appendix)に記載されているので、このようなアクションを取るために契約上の義務が問われることもある。
 試験自動化のために、予備校正時の設定をコンピュータで記録してから予備校正レベルを適用するという戦略を採用している試験所もある。AC電源が存在する状態で妨害信号の測定値を得ることが、実際の試験電圧のフィードバックをむずかしくする。
 この方法では必要以上の試験条件を適用することになり、EUTに損傷を与えることもある。私の製品のうちの1つを試験中に、この方法を使ったが、焼け焦げた回路基板の残骸によって試験の電力は制限されていなかったことがわかった。
 MIL-STD-461Gもまた受信機/ 変換器構成により試験をサポートしていた。変換器は絶縁を受信機に提供して、安全なレベルに振幅を低下させる。規格が変換器に関して提供する情報は、変換器が位相シフト・ネットワークであるはずがないことだけである。この種の試験デバイスを使う予定ならば、使用の承認を得るために試験手順を文書化しておく必要がある。

3.まとめ
 CS101試験は、ほぼ全てのMILSTD-461認定試験プログラムに含まれるよう全てのシステムに適用する。試験電圧または予備校正駆動レベルの二重状態の制限を維持しながら、自動化するのは非常にむずかしい。試験技術者は試験中に同時に以下の内容をモニタする必要がある。

・印加した試験電圧
・予備校正された駆動レベル
・感受性を評価するためのEUT性能
・感電の危険を回避
・電圧損失の潜在的な要因調査

 AC電源が存在する状態で妨害信号を測定するのはむずかしいが、必要以上の試験をすればピーク電圧の変化を使ってrms等価に変換することは簡単に達成できる。
 CS101 試験はやや複雑であり、試験構成の確認について詳細な注意を要する。試験中、技術者は詳細を全て把握するために集中を維持しなければならない。(2018/03/29)

著者紹介
Steven G. Ferguson氏はCompliance Direction, LLCのチーフコンサルタントで、試験とデバイス評価の分野で40年以上の経験がある。試験方法の指導にも20年以上のキャリアがあり、EMC、製品安全、環境試験方法が専門。MILSTD-461、MIL-STD-810、MIL-STD 704/1275/1399、CE Marking について豊富な知識を持ち、試験所運営や製造会社の設計担当、試験手順の開発、試験実施の経験も生かして規制適合に幅広く対応している。EMC はじめEMI/EMC適合についてオンラインまたは顧客先での数多くのトレーニングコースを担当しており、対象は原子力施設、構造上のシールド、MIL-STD-461試験など幅広い。iNARTE認定EMCエンジニア。
連絡先は下記のとおり。
http://www.compliancedirection.com
stevef@compliancedirection.com