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ANSI C63.4やCISPR 32の伝導エミッションの試験方法を本当に知っているだろうか?

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 試験所で伝導エミッション試験をするのに新人を雇った場合、EMCについて殆ど知識がなく、そもそも試験のやり方もよく知らないということがよくある。試験所が使っているソフトウェアなどを使用した試験方法についてのトレーニング期間はあるので、新人は自動化された試験方法については十分に教育されている。だが、制御コンピュータが故障しても試験しなくてはいけなくなったとしたら? いったいどうなることやら。
 手動で伝導エミッション試験をやらなければならない状況になったとしよう。いったん試験が完了したらデータをまとめ、製品が適合したか不適合だったかを調べる。方法はおわかりだろうか? 試験所の他の人たちはできるだろうか? さらに言えば、ISO/IEC 17025:2005はソフトウェアが正しく動作し、正しい回答を出すことを検証するよう要求している。実際の試験がどのように実施されるか知らないとしたら、ソフトウェアが正確に動作していることをどうやって判断するのか? ソフトウェアにだまされないようにするため、手動での試験のやり方を知っておく必要がある。
 試験を実施するために必要なステップは? 試験中に記録すべきデータは? 測定と計算が完了したら、その結果をどう扱えばよいか? コンピュータを止めて、こういったことを全て手動でやる意味は何なのか?

1. 試験のやり方
 どんなステップがあるか説明し、どのデータを収集し、そのデータをどう扱うかについて説明しよう。
 それぞれの測定周波数で周波数を記録し、レシーバの測定値を読む必要がある。次にプリアンプの利得(外付けプリアンプ使用時)とケーブル損失を調べる(あるいは計算する)。次に実際の伝導エミッションレベルをそれぞれの測定周波数で計算する。
 試験規格の要求どおりにEUTを試験所内にセットアップする。これは試験の自動化の有無にかかわらず、やらなくてはいけない。レシーバをLISN(CISPR規格ではAMN)に接続し、レシーバまたはスペクトラム・アナライザを作動させて、安定するまで時間を取る。レシーバやスペアナのスイッチをオフにしないで、ずっと安定化させたままにしておく試験所もある。
 150 kHzから始め、尖頭値(peak)検波器を使って測定周波数を30 MHzまで上げる。この初期スキャンをピーク検波器が行うのは、準尖頭値(QP:Quasi-Peak)検波器より高速で、時間の節約になるからである。EUTからのエミッションの全周波数を記録すること。EUTへのAC電源入力1線ごとにこれを行う。
 これで妨害波の周波数リストができたので(スキャン中に識別するスペアナの制限内で)個々の周波数に戻る。リストにある最初の周波数に合わせて実際の中心周波数を探す。レシーバをQP検波モードにして測定帯域(このケースでは9 kHz)にセットする。QP検波器の測定値を見て結果を記録する。平均値検波器を選択し、測定を繰り返す。それから、リストにある次の周波数に合わせ、測定を繰り返す。他の電源線も同様に繰り返す。

2. 測定完了、次にやることは?
 対象となる全ての周波数の測定を終えたら、最初の周波数に戻り、式(1) を用いて伝導エミッションのレベルを計算し、結果を限度値と比較する。信号が限度値を超えていない場合は合格である。次の周波数測定値も同様に繰り返す。これを全てどうやってやるか? 他に必要な数字はどこから得ればよいか?
 手元には、周波数とレシーバの測定値が山ほど記載されたデータシートがある。周波数関数としてプリアンプ(外付けプリアンプを使ったと仮定)の利得を示す表や、周波数関数としてのケーブル損失を記した表もある。最後に、周波数関数としてLISNのインピーダンスを示した表がある。これは50Ω± 20%、150 kHz ~ 30 MHzであればよく、他にすることは特にない。レシーバの読み値の単位はdBμVで限度値の単位もdBμVである。従って、放射エミッション測定よりも伝導エミッションの測定の方がはるかにシンプルである。
 「その昔」には、こういうことはいつも手動でやっていた。他に方法がなかったのである。他の出力値もわかるので、シンプルな方程式を使ってレシーバの読み値を伝導エミッションレベルに変換する。この計算式は以下のとおり。

EdB μV= VdB μV – GdB + CLdB     (1)
ここで
EdB μV は伝導エミッション(dB μV)
VdB μV はレシーバの読み値(dB μV)
GdB は外付けプリアンプの利得(dB)
CLdB は同軸ケーブルの損失(dB)

 上記の値はそれぞれの測定周波数によって違うので、全部用意しなくてはならない。入力はレシーバへの出力より低く、ケーブル損失を足すので、プリアンプの利得を差し引くことに注意。
 下のような表を作ってみるとよいだろう。
 最初の7列はお馴染みだろう。これは、周波数のメモとともに前述の計算式から得た数値にすぎない。最後の列は限度値で、エミッションレベルと限度値を比較して製品が適合か否かを判断する必要がある。この数値は、試験規格や規制に書かれている。限度値は周波数に対する値であることを忘れてはいけない。
 この表を埋める際、最初の列には測定した周波数を書き込む。2列目と3列目にはレシーバの読み値を書く。プリアンプの利得を表で調べて4列目に記入する。ここでは、プリアンプが測定周波数の近くで校正され、利得は校正ポイント間で大きくは変わらないと想定している。もし大きく変わる場合は、測定周波数をまたぐ2つの校正周波数ポイント間で利得を補間すればよい。
 同様にケーブル損失もわかるだろう。周波数に対する値を表で調べて、必要なら補間する。
 レシーバ測定値がわかると測定周波数に対するプリアンプの利得とケーブル損失が計算式(1)に挿入でき、測定周波数での伝導エミッションレベルがわかる。この数字を表の「エミッションレベル」に適切な検波器の欄に記入する。それを周波数の限度値と比較すれば合格/不合格が決定できる。
 表1は1行目のデータを完全に記入完了したもの。周波数、レシーバ測定値、プリアンプ利得、ケーブル損失、伝導エミッションレベル(計算済)、限度値である。2行目には、測定から得られた全情報(周波数およびレシーバ測定値)とともに、調査後あるいは補間後のプリアンプ利得、ケーブル損失が書かれている。あとは計算式(1)を使って、残る空白を埋めるだけである。その値は何になるだろうか? 正しい値が得られるだろうか? 示した限度値はCISPR 32 Class Bによる。製品は果たして合格したのか?(正解は下記参照)

3. 作業は山ほどある!
 そのとおり。それゆえ試験の自動化が重要なのである。しかし、いつかは(そして以前よりたぶん頻繁に)、ソフトウェアが適切に動作して問題のない結果を出していることを確認するために、デバイスを測定して基準値を調べる必要が出てくる。従って試験所の測定員には手動での試験のやり方を教育しておく。通常は手動での試験は必要ないが、方法を知っていて損はないはずである。

【正解】2行目の伝導エミッションレベルは57.3 dB μV(QP)および 43.3 dBμV(Ave)である。

57.3 dBμV = 84.0 dBμV – 27dB + 0.3dB
43.3 dBμV = 70.0 dBμV – 27dB + 0.3dB

5 MHzでQP限度値を1.3 dBオーバーしているので製品は不適合。

著者紹介
 Ghery S. Pettit氏はNARTE認定エンジニアで、Pettit EMC Consulting LLCの社長。Washington州立大学卒業で、IEEEの終身シニア会員である。過去42年間、米国海軍、Martin Marietta Denver Aerospace、Tandem Computers、Intel Corporationに職を得て、EMC業界で長く活躍している。IEEE EMC Societyの元プレジデントで、現在は放送用受信機、IT機器、マルチメディア機器のエミッションとイミュニティ規格を担当するCISPR小委員会Iの議長も務めている。EMC試験所の設計、運営に携わったことがあり、さまざまなプロジェクトでEMC分析、設計、トラブルシューティング、試験サポートを実施した。またANSI C63.4、CISPR 22、CISPR 24、CISPR 32、CISPR 35など数多くのEMC規格の作成に貢献している。
連絡先:Ghery@PettitEMCConsulting.com

2018年1月30日 by Ghery Pettit

表1.データ表の例