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医療用フローティング回路のESD トラブルシューティング(2/3)

◆ESDトラブルシューティング◆
【フローティング回路のESD】
上述した現象は4 kVの気中放電でも観察された。ICのスイッチ検出ピンにはTVSダイオードがあるので最初これは奇妙だと思ったが、TVSダイオードは機能していなかった。ESDエネルギーがコモンモードで回路に結合したため、TVSダイオードは全く役に立っていなかったのである。図2は、図1に示したブロック図のLTSpice ESD RF回路モデルである。構成図に示されたポイントのトレース・インダクタンスとグランド・インダクタンスは、LCRメータを使用して1 MHzおよび100 kHzで測定した。
 図2からは、放電電流がアースに戻りたがるように、ESDガンはアースグランドを基準にしていることがわかる。電流がアースグランドに流れる唯一の方法は、アースグランドに向かう経路を辿ることである。AC/DC電源のDC側は220pF Y-Cap経由でアースグランドに接続しているので、ESD電流は周辺基板、フレキシブル・ケーブル、システム基板を通ってコモンモードで流れることになる。だが、周辺基板はフレキシブル・ケーブル経由でのみアースグランドに接続されているので、そのアースグランドへの接続には多くのインダクタンスがある。このインダクタンスによりタンク回路が形成され、全エネルギーがICおよび他の部品全域で消散するまで発振を続ける。図3は、IC入力でシミュレートした電流発振波形である。周辺基板はフローティングなので、従来のESD保護方法は何も使えないことに注意してほしい。ESDエネルギー基準は、ESD保護デバイスによって使用されるフローティンググランド基準と同じではない。

◆ソリューション◆
 このような状況に対するソリューションにはいくつかオプションがある。本稿で述べた方法については、試験を実施して効果的であることを証明済みである。

【入力を絶縁】
 最も有効なソリューションは、放電ポイントを残りの回路から分離することである。以下のテクニックを使うと良い。

◎ オプティカルアイソレータ
• アースおよび回路の両グランドから電源を分割する必要が有る
• 最小エリアとして1センチ平方のスペースが必要である

◎ 電流制限抵抗器
• 0.5インチ(約1.3 cm)より短いと、ESDはアーチ状に横断するので、両側で絶縁が必要である
• グランドおよび信号の両方に抵抗器を置く

◎ スイッチの機械的絶縁
• 設計変更および設備の一新が必要
• 市販の部品だと交換が不可能な場合もある
• 設計変更の時間フレームが製品発売期限に間に合わないこともある

 絶縁オプションは、大きな抵抗器をスイッチワイヤに直列に挿入した場合をシミュレートした。図4がその構成図である。10 kの抵抗器をスイッチワイヤに直列に挿入すると、図5に示すようにESD電流を最大振幅で60 mAまで低減できる。顧客はこのソリューションを気に入ったので、600回以上15 kVの気中放電を試験したが、問題はなかった。同様に、他の種類の絶縁方法も上手くいった。

図2.図1の金属コネクタと周辺基板部分の回路モデル
図3.IC 入力のシミュレーした電流発振波形(対策なし)
図4.スイッチワイヤと直列に10 k Ωの抵抗器を挿入
図5.IC入力のシミュレーした電流発振波形(抵抗器を挿入)

2017年6月27日 by Aziz Yuldashev