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VR/ARは、日常生活のストレス管理に役立つ

May, 30, 2025, Pittsburgh--カーネギーメロン大学(CMU)の研究者による新しいプロジェクトでは、仮想現実と拡張現実(VR/AR)がストレスの多い状況をシミュレートし、人々がストレス解消戦略を実践するのに役立つかどうかを研究している。
これは、疑似体験療法を現代風にアレンジしたもので、ユーザーはVR/ARメガネを装着して、デジタルの聴衆の前で言いたいことを伝える練習することができる。

コンピュータサイエンス学部のHuman-Computer Interaction Instituteの大学院生であるAnna Fangが率いる研究チームは、Association for Computing Machinery Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI 2025)でチームの研究を発表した。

研究チームは、19人の参加者のグループでストレスシミュレーションの技術をテストし、その大多数が圧倒的にそれを支持した。

「この10〜20年間で、VR/ARは健康とメンタルヘルスの分野に非常に大きな影響力を持ってきた」とFangは述べ、ダウンロード可能な多くの瞑想アプリについて言及した。

しかし、同氏は、これらのアプリは通常、ユーザーを仮想の森やビーチなど、衛生的で隔離された環境に置き、落ち着くためのヒントや呼吸法を提供しているため、そのスキルを現実世界に応用するのが難しいことに気づいた。

「このプロジェクトは、人々がこれらのスキルを学び、実生活に応用するための実践的な方法を見つけたいという思いから始まった。仮想現実と拡張現実を使用して、オフィス環境や誰かとの対立をシミュレートできないだろうか。そうすれば、実生活に近い環境でセルフケアスキルを実際に練習できるようになる」(Fang)。

まず、Fangと同氏のチームは、人々が日常生活で最もストレスや不安を引き起こすと思われる3つのシナリオに着目した。研究によると、それは、人前で話すこと、混雑した社交イベント、対人関係の対立である。

チームは、3つのシナリオごとに異なる設計要素を持つ8つのプロトタイプを作成し、合計24のプロトタイプを作成した。これらのプロトタイプは、仮想現実(VR)、複合現実(MR)、拡張現実(AR)、視覚的な手がかりのないテキストベースの環境など、様々な形を取り、異なるレベルのインタラクションを提供した。例えば、1つのプロトタイプでは、仮想の聴衆は反応したり、質問したりすることができ、別のプロトタイプでは、静かに座っていることができた。インタラクティブなプロトタイプでは、VRまたはARのアバターは、大規模言語モデル(LLM)に基づいた対話を使用してユーザーとチャットすることができた。また、コントローラのボタンを押して、必要に応じて呼吸法や瞑想法にアクセスでき、その手順は画面にポップアップ表示された。

「われわれは、ユーザーは何が好きで、何が気に入らなかったのかを教えてもらえるように、人によって異なる設計と組み合わせを試したかった。参加者は概ね、かなりリアルだったと言っていた」(Fang)。

Fangと同氏のチームは、全体として、人々がこのテクノロジーを使用して自分自身についての認識を高めたいと思っていることを発見した。「彼らは、自分にはないと思っていた自立スキルを学ぶのに役立つテクノロジーを求めていた」とFangはコメントしている。

参加者は、大規模言語モデルがガイダンスを自動的に提示するのではなく、ガイダンスを自ら選択できることを好んだとも述べた。また、ヘッドセットを他の場所に持って行って、ストレスの多い環境に没頭し、より快適に過ごせるようにしたいと考えていた。たとえば、ある参加者は、パートナーと問題について話し合う予定の自宅で拡張ヘッドセットを使用したいと考えていた。あるいは、人前で話す場合には、前日に教室に行って聴衆アバターの前で練習したいと思っていた。

「われわれは現在、開発をさらに進めている。われわれは、App Storeに公開でき、人々が自宅で使えるような、完全に忠実なデプロイモデルを作っている」とFangは話している。

次のバージョンでは、チームはアバターをアップグレードしてよりリアルに見えるようにし、アバターがユーザーとより自然に話すことができるように、より多くのテキスト読み上げ機能を含めることを計画している。

「ある状況でストレスを感じていると思うと、相手の口調がとても重要になる。アバターによりリアルな表情や動きも加えている。怒っているときは、眉をひそめさせるといった具合である」(Fang)。

今後のバージョンでは、セルフケア戦略メニューも拡充される。現在のバージョンには、主に深呼吸のヒントが含まれているが、次のバージョンでは、不安やパニック発作を管理するのに役立つ、リラクセーション、ボディスキャンのテクニック、および周囲のオブジェクトに名前を付けるなどのグラウンディングの実践が実装される。

「われわれは、このシステムを使用して、人々がこれらのスキルを学ぶのを助けるだけでなく、様々なセルフケア戦略を試したいと考えている。コンテキストに応じて、自分にとって、最も効果的で最も快適に感じる仮想環境で実験し、その後、現実世界で何を実装するか十分な情報に基づいた選択をすることができる」とFangは話している。