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VRで自ら飛ぶ体験をした人は、「落下しても飛べる」と予測し高所恐怖が低減される

May, 21, 2025, 東京--情報通信研究機構(NICT)未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター(CiNet)の藤野美沙子協力研究員及び春野雅彦室長の研究グループは、仮想現実(VR)で自分が飛べるという体験をした人は「高所から落下しても自分で飛行して安全な状態に移行できる」という予測をして、高所恐怖反応が低減されることを明らかにした。
この知見は、従来、恐怖反応の低減には、恐怖対象への繰り返し曝露が必要であるとされてきた定説を覆すものである。

この研究では、VR空間の低空を自由に飛行できるグループ(飛行群)と、飛行群が体験したVR飛行映像を受動的に視聴するグループ(コントロール群)を比較した。飛行群では、VRで高所を歩行した際の生理的恐怖反応と主観的恐怖反応が共にコントロール群に比べ大きく低下した。また、飛行群の中でも「自分は飛行できるので落下しても危険ではない」と強く感じた人ほど、恐怖反応の低下が顕著であることもわかった。この結果は、“行動ベースの予測”により恐怖反応を低減できる可能性を示し、繰り返し曝露を必要としない新しい恐怖消去の方法につながる成果である。

研究成果は、2025年5月13日に、米国科学アカデミー紀要(PNAS)にオンライン掲載された。

(詳細は、https://www.nict.go.jp)