August, 30, 2021, Washington--マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)とハーバード医科大学(Harvard Medical School)の研究チームは、皮膚を通して組織酸素化を計測できるウエアラブルセンサを実現するために、新しい酸素センシングフィルムとマシンラーニング(ML)を組み合わせた。そのデバイスを使うと、医療やスポーツのアプリケーションで連続的に人の酸素レベルをモニタすることができる。
そのワイヤレスデバイスは操作が簡単で無線通信であるので、ヘルスケア設定以外で、酸素レベルの遠隔モニタリングに適している。
「デバイスは、手足や組織の血流障害のリスク、酸欠が見られるシナリオを対象としている。その技術は、従来の血中酸素飽和度ツールが十分な情報を提供できない医療状況で特に強力である。このウエアラブルワイヤレス酸素デバイスは、事故や戦場での障害などの外傷から、手術後のモニタリングや創部のケアまでの範囲に応用できる」とプロジェクトの主席研究者、Conor L. Evansは話している。
研究チームのJuan Pedro Cascales とConor L. Evansは、その研究をOSA Imaging and Applied Optics Congress and Optical Sensors and Sensing Congressで紹介した。
デバイスは、前腕の中程に腕時計のように装着する。その、構成は、プリントされたケース、小型センサヘッドと接着性の酸素センシングフィルム。電子コンポーネントが、センサからのデータを処理し、デバイスは、BluetoothまたはWi-Fiで記録を送信できる。
センサは、アクリル酸素センシングフィルムのリン光寿命と強度を検出することで機能する。センサヘッドの2つのLEDsが、UV光で酸素センシングフィルムを励起する。フォトダイオードが、酸素センシングフィルムが反応して放出する光位相を検出する。LEDsが放出する光位相と酸素センシングフィルムによって放出される光の位相を比較すると、フィルム下の組織の酸素レベルの計測ができる。
論文の筆頭著者、Juan Pedro Cascalesは、「これは、初の真のウエアラブル非侵襲的経皮酸素モニタである。簡素、正確、小型で使いやすいので、至る所で、医者、ナース、救急医、また在宅患者が利用できる」とコメントしている。
そのセンサの調整には、研究者は、そのデバイスを窒素と空気の混合したチャンバ内で多様な温度に触れさせ、位相が商用センサの位相と一致するまでキャリブレーションを調整した。
研究チームは、それをヨークシャーピッグの前肢に取り付けてテストした。止血帯で肘関節を覆うと、センサが血流減少を反映する酸素低下を検出した。計測は、商用リファレンスセンサとよく一致した、また温度、湿度、他の環境要素の変動の影響を受けなかったので、そのセンサはラボ外用途に実用的である。
チームは、マシンラーニングアプローチを利用して、多様な条件で酸素レベルの正確な計測ができるようにシステムをトレーニングした。同アプローチにより研究者は、光励起材料が徐々に発光能力を失う傾向、光褪色を説明した。光褪色は、光強度計測に基づいたデバイスの一般的な限界である。
「われわれは今回、初の人体臨床試験を行っており、まもなく結果を共有できる。小型でより人間工学的で最適化されたバージョンのデバイスも構築しつつあり、これはどんなスマートウォッチ、スマートフォン、タブレット、あるいはコンピュータとも交信できる」とCascalesは付け加えている。
(詳細は、OSA Optical Sensors and Sensing Congress)