January, 27, 2021, Urbana--イリノイ大学バイオエンジニアリング院生、Maha Alafeefは、5分以下でウイルスの存在を検出できる紙ベース電気化学センサを用いて迅速、超高感度テストを共同開発した。Dipanjan Pan教授をリーダーとするチームは、ACS Nanoに成果を発表した。
市場にあるCOVID-19テストは、2つの広いカテゴリーである。最初のカテゴリーは、逆転写リアルタイムポリメラーゼ連写反応(RT-PCR)と核酸ハイブリダイゼーション戦略を使いウイルスのRNAを同定する。現在FDA認定診断テストは、この技術を使う。欠点は、テスト完了にかかる時間、専門の担当者が必要なこと、装置と試薬の供給。第2のテストカテゴリは,抗体の検出に焦点を当てている。しかし、人がウイルスに感染して検出可能な抗体が生成されるまでに数日から数週間の遅れがでる。
近年、病気の検出にグラフェンなどの2Dナノマテリアルを使うPOCバイオセンサの作製に研究者は成功している。グラフェンベースのバイオセンサの主要な利点は、その感度、低コスト製造、素早いテスト時間。「グラフェンの発見は、その特性により、センサ開発に新たな時代を開く。グラフェンは、感度のよい電気化学センサの開発に適した固有の機械的、電気化学的特性を示す」とAlafeefはコメントしている。研究チームは、グラフェンベース電気化学バイオセンサを作製した。SARS-CoV-2遺伝物質の存在を選択的に検出する電気化学読出しセットアップを備えている。
このバイオセンサには2つのコンポーネントが存在する。電化学読出しを計測するプラットフォームとウイルスRNAの存在を検出するためのプローブ。プラットフォームの作製では、研究チームは、まず導電性フィルムを作るために、フィルタペーパーにグラフェンナノプレートレットをかぶせた。次に、電気読み出し用のコンタクトとして、予め定義された設計の金電極をグラフェンの上に置いた。両方の金とグラフェンは高感度、高導電性である。そのため、このプラットフォームは超高感度に電気信号の変化を検出する。
現在RNAベースCOVID-19テストは、SARS-CoV-2ウイルス上のN遺伝子(ヌクレオキャプシド・ホスホプロテイン)の存在を検査する。この研究では、チームはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASOs)プローブを設計し、N遺伝子の2つの領域を標的にする。2つの領域を標的にすることで、一つの領域に遺伝子突然変異がおこる場合でも、センサの信頼性が確実になる。さらに金ナノ粒子(AuNP)は、これらシングルストランド核酸(ssDNA)で覆われている。これは、SARS-CoV-2 RNAの超高感度センシングプローブである。
研究チームは、、ACS Nanoに発表された以前の研究で開発ずみのセンシングプローブの感度をすでに示している。これらプローブをもつウイルスRNAのハイブリダイゼーションが、センサの電気反応に変化を起こす。AuNPキャップが、電子移動を加速し、センシングプラットフォームにブロードキャストされると、出力信号の増加となり、ウイルスの存在を示す。
チームは、COVID-19陽性と陰性サンプルを使い、このセンサの性能をテストした。センサは、陰性サンプルと比較して陽性サンプルの電圧が大きな増加を示し、5分以下でウイルス遺伝物質の存在を確認した。さらに、そのセンサは、これらのサンプルのウイルスRNAロードを区別することができた。ウイルスロードは、感染進行の重要な定量的指標であり、既存の診断法を使う計測の課題である。
このプラットフォームは、その特性とローコストにより、非常に広範囲のアプリケーションがある。センサをマイクロコントローラやLEDスクリーンあるいはBluetooth、Wi-Fiを介してスマホと組み合わせると、診察室のPOC、家庭でも利用できる。COVID-19以外でも、チームはそのシステムが、多くの異なる病気の検出に適用可能であると見ている。
(詳細は、https://ws.engr.illinois.edu)