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新しい光ファイバ、光ベースジャイロスコープを大幅改善

January, 18, 2021, Washington--ハネウエル(Honeywell)とサウサンプトン大学(University of Southampton)オプトエレクトロニクスリサーチセンタの研究者は、光ファイバジャイロの性能向上に重要な一歩を新たに踏み出した。ファイバジャイロは、光だけを使って回転を感知するファイバオプティックセンサ。ジャイロは、ほとんどのナビゲーションシステムの基盤であるので、その新研究はいずれ、こうしたシステムに重要な改善をもたらすことになる。

Honeywell Internationalの研究チームリーダー、Glen A. Sandersによると、高性能ジャイロは、多くのタイプの陸海空、宇宙アプリケーションのナビゲーションに使われている。「われわれのジャイロは、まだ開発の初期段階だが、それが全能力を発揮すると、精度の限界を押し広げるとともに、サイズも重量も縮小され、次世代の誘導、ナビゲーション技術になる」。

Optics Lettersで研究チームは、以前の共振器光ファイバジャイロを制約していたいくつかの要因を克服するために新しいタイプの中空コア光ファイバをどのように利用したかを説明している。これにより研究チームは、最も要求の厳しいジャイロの安定性要件を以前発表の中空コアファイバ関連の研究に対して、500倍改善することができた。

光で回転を検知
共振器光ファイバジャイロは、光ファイバの中を反対方向に伝搬する2つのレーザ光を使う。ほとんどの光が再回転し、何度もコイルを周回するようにファイバ端を結合して光共振器を構成する。コイルが静止している時、両方向に伝搬する光ビームは、同じ共振周波数を共有するが、コイルが回転していると、共振周波数は互いに対してシフトする。自動車あるいはジャイロスコープを搭載しているデバイスで動作方向、つまり方向を計算に利用できるようにである。

ハネウエルは、しばらく前から共振器光ファイバジャイロ技術の開発を進めてきた。現在のセンサと比べて小型サイズのデバイスで高精度ナビゲーションになる可能性があることが理由。しかし、センサの性能を劣化させる非線形効果を起こすことなく、これらのジャイロに必要な超狭線幅でわずかなレーザパワーにも耐えられる光ファイバを見極めることが課題だった。

Sandersは「2006年、われわれは共振器光ファイバジャイロに中空コアファイバを使用することを提案した。このファイバは、光を中央の空気またはガス充填空洞に閉じ込めるので、そのファイバに基づいたセンサは、固体ファイバベースのセンサの問題である非線形効果に悩まされることはない」と説明している。

さらに優れたファイバを利用
サウサンプトン大学のAustin Tarantaをリーダーとする研究チームは、全く新しいタイプの中空コアファイバが一層改善されているかどうかを確認したいと考えていた。ノードレス反共振ファイバ(NANF)として知られている新しい種類のファイバは、他の中空コアファイバと比べて非線形効果のレベルが一段と低い。

NANFsは低光減衰でもある。光がファイバ内の長い伝搬長でその強度を維持するので、低光減衰は共振器品質改善となる。実際、これらのファイバは、中空コアファイバの中で最小光損失を示している。また,スペクトルの多くの部分で、光ファイバ損失は最小である。

共振器光ファイバジャイロでは、光がファイバをシングルパスだけで伝搬することが極めて重要。NANFsは、後方散乱、偏波結合、モード混合を原因とする光誤差を除去することでこれの実現に役立つ。これらは全て、ジャイロスコープにおけるエラー、余計なノイズの潜在的原因である。それらを除去することで、他の光ファイバ技術の最大性能限界を除去する。

「このセンサのバックボーンは、新タイプの光ファイバであるが、われわれは、前例のない精度で共振周波数をセンシングする際に、ノイズの大幅低減にも取り組んだ」とSandersはコメントしている。
 
長期安定性の達成
ハネウエルの研究チームは、安定した回転条件、つまり地球の回転だけが存在する中で新しい光ファイバジャイロの性能評価を行うために、ラボ研究を実施した。これは、計測器の「バイアス安定性」を確立するものである。フリースペース光学設定におけるノイズと変動を除去するために、そのファイバジャイロは安定した、静的なピアに搭載された。NANFsを組込むことで研究チームは、長期バイアス安定性、1時間当たり0.05°を実証することができた。これは,民間航空機のナビゲーションで必要とされるレベルに近い。

「この非常に厳しい要求のアプリケーションでNANFsの高性能を実証することで、他の精密科学共振キャビティにおけるこれらのファイバの利用が著しく有望であることを示しているとわれわれは見ている」(Taranta)。

研究チームは現在、さらにコンパクトで安定した構成のプロトタイプジャイロスコープの実現に取り組んでいる。また、最新世代のNANFsを組みこむことも計画している。これにより、モードと偏波混合の大幅改善とともに、光損失は4倍改善される見込である。