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理研、世界最高出力の孤立アト秒パルスレーザを開発
October 29, 2013, 和光--理化学研究所(理研)は、アト秒(10-18秒)の時間幅をもつ極短パルスの極端紫外光(XUV)を高効率かつ高強度に発生できる手法を確立し、その手法を用いて卓上サイズでギガワット(GW)の瞬間出力を持つ孤立アト秒パルスレーザを開発した。これは、理研 光量子工学研究領域アト秒科学研究チームの高橋栄治専任研究員、緑川克美チームリーダーらによる成果。
基礎科学の分野では、原子や分子の動きなどの超高速現象を観測するため、「一瞬だけ光る」パルスレーザ光源の開発が続けられている。パルスレーザをカメラのストロボのように使うことで、高速で動く対象物を詳細に観察できる。近年、究極の高速運動である「原子内で動き回る電子の動き」を観測することを目指して、世界各国でアト秒パルス光源が盛んに研究されており、多くの研究者がアト秒パルスの時間幅を縮めることにしのぎを削ってきた。しかし、これまでに開発されたアト秒パルスレーザの出力は大変低かったため、多方面に利用することが困難な状況が続いてきた。
研究グループは、孤立アト秒パルスを発生させる方法である高次高調波発生の励起レーザに、波長の異なる2つのレーザを時空間で合成・制御した2波長合成レーザを使用し、これに理研独自の高調波エネルギースケーリング法を組み合わせることで、XUV領域(光子エネルギー 30eV)においてパルス幅 500アト秒、瞬間出力2.6GWの高強度アト秒パルスの発生に成功した。従来法と比較すると、100倍以上の高出力化を実現し、さらに励起レーザ光からアト秒パルスへの変換効率も10倍以上改善した。この手法は高出力の孤立アト秒パルス発生に革新をもたらす。
今回開発した手法を用いることで、XUVよりさらに波長の短い軟X線域からX線域において、より時間幅の短く、且つ高強度のアト秒パルスレーザの開発が可能となる。結果、これまで観測できなかった電子同士の超高速相互作用やアト秒領域での非線形光学研究など、未知の研究領域の開拓に大きな前進がもたらされると期待できる。
アト秒パルスを作るためには、高次高調波発生と呼ばれる非線形な波長変換プロセスを使用する。時間的に孤立した(単一な)アト秒パルスを得るには、レーザ電場のキャリアエンベロープ位相を安定化させ,かつ電場周期が数サイクルの特殊なレーザを励起光として使う必要があるが、このような要求を満たす励起レーザのパルスエネルギーには制約があり、その結果、高強度な孤立アト秒パルス発生の実現は困難だった。
研究グループは、2010年に波長800nmと1300nmのレーザを時間・空間的に重ね合わせた2波長合成レーザを利用し、効率よく孤立アト秒パルス作り出す方法を開発。2波長合成レーザを用いることで、簡易に連続的な高次高調波スペクトルを生成させることが可能になり、その結果、パルスエネルギーの大きな励起レーザを孤立アト秒パルス発生に使用できるようになった。
今回、2波長合成レーザを励起光として用い、これに最適位相整合技術と、理研独自の高調波エネルギースケーリング法を組み合わせたアト秒ビームラインを構築。その結果、これまで実現されたアト秒パルス出力より100倍以上強い孤立アト秒パルスを作り出すことに成功した。またレーザ光からアト秒パルスへの変換効率を10倍以上改善し、かつ高品質な極端紫外光(XUV)ビームを得ることにも成功した。
ガスセル内に充填されたキセノンガスから発生した高次高調波のスペクトルを見ると、単一波長(800nm)のレーザを励起光とした場合は離散的な構造を持つのに対して、2波長合成(800nm + 1300nm)レーザを励起光とした場合は、連続的なスペクトル構造を持つことが分かる。特に光子エネルギーが28eVから35eVの領域では、完全に連続な高調波スペクトルが得られており、このスペクトル構造から孤立アト秒パルスが発生していることを間接的に確認することができる。
キセノンガスの圧力を調整して、位相整合条件を30eV近辺に最適化することで、従来法ではナノジュールと低かったパルスエネルギーを、最大で1.3μJ(28eV~35eV間の合計)にまで高出力化することができた。また、励起レーザからの変換効率は約1万分の1で、これまで実現された実験値と比べて10倍以上もの効率の改善を達成。さらに、発生した高次高調波は、良好な空間分布と0.5ミリラジアンという低いビーム発散角を持ち、高品質なビーム特性も兼ね備えている。ビーム品質はイメージングなどへの応用の際に非常に重要な役割を果たすので、今回の手法は、高い品質の高次高調波ビームを得ることができる、という点でも優れている。
得られた高次高調波が真にアト秒の時間幅を持った孤立パルスかを確認するため、自己相関法と呼ばれる手法を使ってパルス幅の評価を行った。実験では、反射鏡2枚からなる高調波空間分離器により高調波ビームを空間的に2つに分割して窒素分子ビームに集光。ここで、片方の反射鏡を前後させ2つの高調波ビームの通る経路長を変えることで、窒素分子ビームにたどり着く時刻の差(遅延)を変化させる。この遅延時間(Δt)を関数として、窒素分子が高調波を2光子吸収して引き起こされるイオン化信号の強さがどのように変化するかを測定すれば、高調波自身の時間構造(自己相関波形)を知ることができる。
この結果、パルス幅が500アト秒の孤立アト秒パルスが発生していることが明確に確認された。これは自己相関法で決定された孤立アト秒パルスの時間幅としては世界最短パルスになる。得られたパルスエネルギーと時間幅から、開発された孤立アト秒パルスレーザの瞬間出力は2.6GWと評価できる。この出力は、自由電子レーザ(FEL)技術[6]で開発された光源と比較して10倍以上高い値。また発生装置の大きさも卓上サイズで、XUV-FELの光源を普通車に例えると、今回開発された光源の大きさはラジコンカー程度という非常にコンパクトなものとなる。
基礎科学の分野では、原子や分子の動きなどの超高速現象を観測するため、「一瞬だけ光る」パルスレーザ光源の開発が続けられている。パルスレーザをカメラのストロボのように使うことで、高速で動く対象物を詳細に観察できる。近年、究極の高速運動である「原子内で動き回る電子の動き」を観測することを目指して、世界各国でアト秒パルス光源が盛んに研究されており、多くの研究者がアト秒パルスの時間幅を縮めることにしのぎを削ってきた。しかし、これまでに開発されたアト秒パルスレーザの出力は大変低かったため、多方面に利用することが困難な状況が続いてきた。
研究グループは、孤立アト秒パルスを発生させる方法である高次高調波発生の励起レーザに、波長の異なる2つのレーザを時空間で合成・制御した2波長合成レーザを使用し、これに理研独自の高調波エネルギースケーリング法を組み合わせることで、XUV領域(光子エネルギー 30eV)においてパルス幅 500アト秒、瞬間出力2.6GWの高強度アト秒パルスの発生に成功した。従来法と比較すると、100倍以上の高出力化を実現し、さらに励起レーザ光からアト秒パルスへの変換効率も10倍以上改善した。この手法は高出力の孤立アト秒パルス発生に革新をもたらす。
今回開発した手法を用いることで、XUVよりさらに波長の短い軟X線域からX線域において、より時間幅の短く、且つ高強度のアト秒パルスレーザの開発が可能となる。結果、これまで観測できなかった電子同士の超高速相互作用やアト秒領域での非線形光学研究など、未知の研究領域の開拓に大きな前進がもたらされると期待できる。
アト秒パルスを作るためには、高次高調波発生と呼ばれる非線形な波長変換プロセスを使用する。時間的に孤立した(単一な)アト秒パルスを得るには、レーザ電場のキャリアエンベロープ位相を安定化させ,かつ電場周期が数サイクルの特殊なレーザを励起光として使う必要があるが、このような要求を満たす励起レーザのパルスエネルギーには制約があり、その結果、高強度な孤立アト秒パルス発生の実現は困難だった。
研究グループは、2010年に波長800nmと1300nmのレーザを時間・空間的に重ね合わせた2波長合成レーザを利用し、効率よく孤立アト秒パルス作り出す方法を開発。2波長合成レーザを用いることで、簡易に連続的な高次高調波スペクトルを生成させることが可能になり、その結果、パルスエネルギーの大きな励起レーザを孤立アト秒パルス発生に使用できるようになった。
今回、2波長合成レーザを励起光として用い、これに最適位相整合技術と、理研独自の高調波エネルギースケーリング法を組み合わせたアト秒ビームラインを構築。その結果、これまで実現されたアト秒パルス出力より100倍以上強い孤立アト秒パルスを作り出すことに成功した。またレーザ光からアト秒パルスへの変換効率を10倍以上改善し、かつ高品質な極端紫外光(XUV)ビームを得ることにも成功した。
ガスセル内に充填されたキセノンガスから発生した高次高調波のスペクトルを見ると、単一波長(800nm)のレーザを励起光とした場合は離散的な構造を持つのに対して、2波長合成(800nm + 1300nm)レーザを励起光とした場合は、連続的なスペクトル構造を持つことが分かる。特に光子エネルギーが28eVから35eVの領域では、完全に連続な高調波スペクトルが得られており、このスペクトル構造から孤立アト秒パルスが発生していることを間接的に確認することができる。
キセノンガスの圧力を調整して、位相整合条件を30eV近辺に最適化することで、従来法ではナノジュールと低かったパルスエネルギーを、最大で1.3μJ(28eV~35eV間の合計)にまで高出力化することができた。また、励起レーザからの変換効率は約1万分の1で、これまで実現された実験値と比べて10倍以上もの効率の改善を達成。さらに、発生した高次高調波は、良好な空間分布と0.5ミリラジアンという低いビーム発散角を持ち、高品質なビーム特性も兼ね備えている。ビーム品質はイメージングなどへの応用の際に非常に重要な役割を果たすので、今回の手法は、高い品質の高次高調波ビームを得ることができる、という点でも優れている。
得られた高次高調波が真にアト秒の時間幅を持った孤立パルスかを確認するため、自己相関法と呼ばれる手法を使ってパルス幅の評価を行った。実験では、反射鏡2枚からなる高調波空間分離器により高調波ビームを空間的に2つに分割して窒素分子ビームに集光。ここで、片方の反射鏡を前後させ2つの高調波ビームの通る経路長を変えることで、窒素分子ビームにたどり着く時刻の差(遅延)を変化させる。この遅延時間(Δt)を関数として、窒素分子が高調波を2光子吸収して引き起こされるイオン化信号の強さがどのように変化するかを測定すれば、高調波自身の時間構造(自己相関波形)を知ることができる。
この結果、パルス幅が500アト秒の孤立アト秒パルスが発生していることが明確に確認された。これは自己相関法で決定された孤立アト秒パルスの時間幅としては世界最短パルスになる。得られたパルスエネルギーと時間幅から、開発された孤立アト秒パルスレーザの瞬間出力は2.6GWと評価できる。この出力は、自由電子レーザ(FEL)技術[6]で開発された光源と比較して10倍以上高い値。また発生装置の大きさも卓上サイズで、XUV-FELの光源を普通車に例えると、今回開発された光源の大きさはラジコンカー程度という非常にコンパクトなものとなる。