All about Photonics

Home > News > News Details

News Details ニュース詳細

理研、電子ビームをオーダーメードで加速

August 19, 2013, 播磨--理化学研究所(理研)と高輝度光科学研究センターは、加速器の安定性やビーム品質を落とさずに線形加速器の電子ビームを電子バンチ(電子の集団)ごとに異なる目標ビームエネルギーまで加速する方法を考案し、X線自由電子レーザ(XFEL)施設SACLA(Spring-8 Angstrom Compact free electron LAser)を用いて実証した。
これは、理研放射光科学総合研究センターXFEL研究開発部門加速器研究開発グループ先端ビームチームの原徹チームリーダー、田中均部門長、ビームライン研究開発グループ理論支援チームの玉作賢治専任研究員らの共同研究グループの成果。
SACLAでは、構造解析や物性測定など、さまざまな利用実験が行われている。各実験には、それぞれに適した波長のレーザ光が必要なため、電子ビームのエネルギーを変えることにより波長を調整し、供給している。SACLAでは、今後増大する利用実験に対応するため、ビームラインの増設を計画している。このとき問題になるのが、電子ビームのエネルギーをどのビームラインに最適化するかということ。ビームラインごとに行われるそれぞれの利用実験は独立しており、使用するレーザ光の波長も異なる。波長はある程度であればアンジュレーターで調整できるが、電子ビームのエネルギーが最適な条件からずれるとレーザ光の強度が大幅に低下するため、複数のビームラインを、その性能を最大限に引き出しつつ並行運転するには大きな制約が生じるのではないかと懸念されていた。
共同研究グループはこの問題を解決するため、線形加速器の一部の加速管ユニットの動作周波数を変えることで、複数のビームラインへ供給する電子ビームのエネルギーを電子バンチごとに制御し、全てのビームラインにおいて最適な条件でレーザを発振させる方法を考案した。実際にSACLAで実証実験を行い、電子ビームの安定性や品質を損なうことなく10 Hzの電子バンチを複数の目標ビームエネルギーまで加速し、レーザ発振させることに成功した。
今回考案した方法は、複数のビームラインを用いたSACLAマルチビームライン運転時のレーザ性能向上だけでなく、現在検討中の「SPring-8次期計画においてSACLAの利用運転と大型放射光施設SPring-8の蓄積リングへのトップアップ運転(電子を継ぎ足し入射し蓄積電流を通常運転時の上限一杯に維持する運転)を両立する上でも不可欠な技術。
研究成果は、米国の科学雑誌『Physical Review Special Topics-Accelerator and Beams』およびオンライン版に掲載。

製品一覧へ

関連記事

powered by weblio





辞書サイトweblioでLaser Focus World JAPANの記事の用語が検索できます。

TOPへ戻る

Copyright© 2011-2013 e.x.press Co., Ltd. All rights reserved.