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東京大学と農工大、光の電場の向きと波形を自在に制御することに成功
August 13, 2013, 東京--東京大学 大学院理学系研究科、五神真教授および東京農工大学大学院工学研究院 三沢和彦教授らは、光を用いて物質を分子原子レベルで操作するために重要な、光の持つ電場の向きと大きさの時間変化を自在に制御できる手法を、世界で初めて実現した。
光は電場と磁場の振動が空中を伝わる波。一方、物質はイオンや電子からできている。光が物質に当たると、物質中のイオンや電子は光の電場に沿った方向に動かされる。この電場の向きや大きさを自由に変化させられれば、イオンや電子の運動を自在に操作できると考えられている。このような光を当てることで物質の組成や構造を精密に分析したり、物質を光で変化させたりすることが可能となるが、光の電場の向きと大きさの時間変化を完全に自在に制御するのは、技術の進歩が目覚ましい可視光の周波数領域においてすら前例がない。
今回、目で見える可視光よりも100分の1ほど低い周波数を持つテラヘルツ光の自在な制御に成功し、光の電場の向きや波形を完全に制御できることを示した。研究グループは、テラヘルツ光を発生させるために結晶に照射する可視光レーザの振動方向と振幅の時間変化を制御することで、テラヘルツ光の電場の向きと時間波形を自在に制御することに成功した。また、目的のテラヘルツ波を得るために可視光レーザパルスに必要な条件を求める逆問題を解くアルゴリズムも新たに考案した。
今回の成果は、光を自在に制御する手法を開拓するという基礎的意義にとどまらず、テラヘルツ光の応用の可能性を大きく広げるものと考えられている。
東大と農工大の研究グループは、テラヘルツ光の電場の向きと大きさを設計通りに時間変化させることに初めて成功した。非常に短い時間幅の可視光のパルスレーザを非線形光学結晶と呼ばれる透明物質に照射するとこの時間幅と同程度の周期で振動するパルス状のテラヘルツ光が発生する。この方法によって作られたテラヘルツ光パルスは、その電場の振動が始まるタイミングを振動の周期よりはるかに細かい精度で定めることができるという特長がある。この開始のタイミングは光パルスの重要なパラメータで、これを決められないと電場の振動の方向は決まっても向きを決めることはできず、電場に沿って動く電子やイオンの運動が動き始める向きも分からなくなる。このタイミングの制御の難しさが可視光において電場の自在な制御の大きな障害となっていた。テラヘルツ光であれば、この困難を容易に乗り越えられることに研究グループは着目した。
テラヘルツ光の制御には大きな課題が残されており、テラヘルツ光の電場の振動の方向を変化させることが困難だった。研究グループは、テラヘルツ光パルスの発生に用いる可視光レーザパルスの電場の振動方向を時間変化させ、そのレーザを3回回転対称性という性質を持つ結晶に入射することで、発生したテラヘルツ光の電場の振動方向を操作できるという新しい方式を考案した。この方法では、最初から目的の振動方向を持つようなテラヘルツ光を発生させることができるので、一度発生したテラヘルツ光の振動方向を後から変化させる必要がなく、この困難な課題を乗り越えることができた。
可視光レーザの電場振動方向の時間変化は、今回新たに考案し開発した「ベクトル波形整形器」によって実現した。さらに、目的のテラヘルツ光パルスを作るためにどのような可視光レーザパルスを用意すれば良いかという逆問題を解くアルゴリズムを新たに開発。
これまで技術的に制御が困難であったテラヘルツ光に着目し、その特長を生かすという逆転の発想が、成熟した可視光領域でも困難であった光の電場の向きと大きさの時間変化の自在な制御を可能にした。
今回の成果は、光を自在に制御する新しい手法を考案しそれを実証したという基礎的意義にとどまらず、テラヘルツ光の応用の可能性を大きく広げる成果。電場の向きや時間波形が自由自在に設計されたテラヘルツ電磁波を使うことで、材料科学・生体分子計測・電波天文学などの基礎学術分野から情報通信・環境計測・医療診断などの実用分野に至る幅広い分野で活用の自由度が飛躍的に広がるものと期待される。現在、光パルスの極短化の研究が加速して進んでおり、この手法はテラヘルツにとどまらず、可視光までの広い周波数帯域に、今後活用されると期待される。
光は電場と磁場の振動が空中を伝わる波。一方、物質はイオンや電子からできている。光が物質に当たると、物質中のイオンや電子は光の電場に沿った方向に動かされる。この電場の向きや大きさを自由に変化させられれば、イオンや電子の運動を自在に操作できると考えられている。このような光を当てることで物質の組成や構造を精密に分析したり、物質を光で変化させたりすることが可能となるが、光の電場の向きと大きさの時間変化を完全に自在に制御するのは、技術の進歩が目覚ましい可視光の周波数領域においてすら前例がない。
今回、目で見える可視光よりも100分の1ほど低い周波数を持つテラヘルツ光の自在な制御に成功し、光の電場の向きや波形を完全に制御できることを示した。研究グループは、テラヘルツ光を発生させるために結晶に照射する可視光レーザの振動方向と振幅の時間変化を制御することで、テラヘルツ光の電場の向きと時間波形を自在に制御することに成功した。また、目的のテラヘルツ波を得るために可視光レーザパルスに必要な条件を求める逆問題を解くアルゴリズムも新たに考案した。
今回の成果は、光を自在に制御する手法を開拓するという基礎的意義にとどまらず、テラヘルツ光の応用の可能性を大きく広げるものと考えられている。
東大と農工大の研究グループは、テラヘルツ光の電場の向きと大きさを設計通りに時間変化させることに初めて成功した。非常に短い時間幅の可視光のパルスレーザを非線形光学結晶と呼ばれる透明物質に照射するとこの時間幅と同程度の周期で振動するパルス状のテラヘルツ光が発生する。この方法によって作られたテラヘルツ光パルスは、その電場の振動が始まるタイミングを振動の周期よりはるかに細かい精度で定めることができるという特長がある。この開始のタイミングは光パルスの重要なパラメータで、これを決められないと電場の振動の方向は決まっても向きを決めることはできず、電場に沿って動く電子やイオンの運動が動き始める向きも分からなくなる。このタイミングの制御の難しさが可視光において電場の自在な制御の大きな障害となっていた。テラヘルツ光であれば、この困難を容易に乗り越えられることに研究グループは着目した。
テラヘルツ光の制御には大きな課題が残されており、テラヘルツ光の電場の振動の方向を変化させることが困難だった。研究グループは、テラヘルツ光パルスの発生に用いる可視光レーザパルスの電場の振動方向を時間変化させ、そのレーザを3回回転対称性という性質を持つ結晶に入射することで、発生したテラヘルツ光の電場の振動方向を操作できるという新しい方式を考案した。この方法では、最初から目的の振動方向を持つようなテラヘルツ光を発生させることができるので、一度発生したテラヘルツ光の振動方向を後から変化させる必要がなく、この困難な課題を乗り越えることができた。
可視光レーザの電場振動方向の時間変化は、今回新たに考案し開発した「ベクトル波形整形器」によって実現した。さらに、目的のテラヘルツ光パルスを作るためにどのような可視光レーザパルスを用意すれば良いかという逆問題を解くアルゴリズムを新たに開発。
これまで技術的に制御が困難であったテラヘルツ光に着目し、その特長を生かすという逆転の発想が、成熟した可視光領域でも困難であった光の電場の向きと大きさの時間変化の自在な制御を可能にした。
今回の成果は、光を自在に制御する新しい手法を考案しそれを実証したという基礎的意義にとどまらず、テラヘルツ光の応用の可能性を大きく広げる成果。電場の向きや時間波形が自由自在に設計されたテラヘルツ電磁波を使うことで、材料科学・生体分子計測・電波天文学などの基礎学術分野から情報通信・環境計測・医療診断などの実用分野に至る幅広い分野で活用の自由度が飛躍的に広がるものと期待される。現在、光パルスの極短化の研究が加速して進んでおり、この手法はテラヘルツにとどまらず、可視光までの広い周波数帯域に、今後活用されると期待される。