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超小型・超省エネルギーのラマンシリコンレーザを開発
July 1, 2013, 大阪--JST課題達成型基礎研究の一環として、大阪府立大学21世紀科学研究機構の高橋 和、テニュア・トラック講師、京都大学工学研究科の野田進教授らは、実現が絶望視されてきた超小型のラマンシリコンレーザを開発した。
研究グループは、光を微小空間に強く閉じ込めるフォトニック結晶で作った超小型の光共鳴装置を用いて、従来の1万分の1以下のサイズと省エネルギーで動作するラマンシリコンレーザを実現した。成功のポイントは、これまで不用と思われていた共鳴状態からの発光と、応用には不適とされていた結晶方向を同時に利用すると逆にレーザ発振に有利になることを発見したこと。
今回のレーザは現段階では光励起型のレーザだが、大幅な省エネルギー化に成功したことから、将来的には用途の広い電流励起型のレーザへの発展が期待できる。実現すれば、シリコンチップの光配線は大きく進展して、電子技術と光技術が融合した理想のシリコンチップへの道が開かれる。また、安価な小型センサー光源として、さまざまな産業創出を可能とし、日本の半導体産業の競争力につながると期待される。
研究グループは、インテル社のレーザと比べて1万分の1の大きさ(10μm程度)しか持たないフォトニック結晶光共振器をレーザの光共鳴装置として用いた。そのため、単純なスケールメリットからは1万分の1の省エネルギー化(1μW程度)が期待される。しかし実際には、この予測は楽観的すぎて誰もが不可能と考えるが、研究グループは4つの斬新なアイデアを用いて成功させた。
(1)通常は、光共鳴装置のサイズを小さくすると、レーザ発振のための重要な性能指標であるQ値(光閉じ込めの強さを表す)が小さくなるが、研究グループが用いたフォトニック結晶共振器は世界最高の性能を持っており、サイズを小さくしても高いQ値を保つことができる。これにより微小領域に強く光を閉じ込めた。
(2)空間パターン(空間対称性)が悪いため、従来は不用と考えられていた光共鳴状態からの発光をレーザの駆動力として用い、ここから発生したラマン光を、世界最高Q値の光共振器に閉じ込めた。
(3)光共振器を作製する方向を、応用上は不適当と考えられていた結晶方向に変更した(従来の方向から45度傾いた[100]方向)。これにより、2つのマイナスの特徴が打ち消しあって、逆にラマン効果を高めるために理想的となった。
(4)フォトニック結晶の空気孔の直径を変えるだけで、全ての光通信波長帯で利用できるようにした。これにより光配線の大容量化が期待できる。
これらの工夫により、明瞭なレーザ発振を確認した。
インテル社(Intel)のレーザの光共鳴装置はPIN構造を必要とするが、今回のレーザでは不要。そのため、ドーピング(不純物投入)、メタルコンタクト(電極形成)、パシべーション(半導体表面にかぶせる保護膜)などのプロセスが不要となる。単純にいえば、シリコン基板に穴を開けるだけで今回のレーザは作れるので、金属元素も不要。
ラマンレーザは、光励起型のため応用範囲が制限されるという課題があったが、今回1μW程度の励起パワーでレーザ発振が可能になったことにより、効率の悪いシリコンの発光でもエネルギー源に用いることができる可能性がある。汎用性の高い電流注入型のレーザへの展開も期待でき、今回の成果はシリコン分野に革命を与える第一歩となると期待される。
超小型のシリコンレーザを光源に用いて光と電子が融合したシリコンチップが実現すれば、パソコンの省電力化、低騒音、高速化などが期待できるとともに、次世代スーパーコンピューターの開発も勢いづく。また、安価なシリコンレーザは、環境モニタリング、生体センサなどの光源として期待でき、光配線よりも、こちらの方の実用化が早まる可能性もある。今回の成果は、さまざまな産業創出を可能とし、日本の半導体産業の競争力につながると期待される。
研究グループは、光を微小空間に強く閉じ込めるフォトニック結晶で作った超小型の光共鳴装置を用いて、従来の1万分の1以下のサイズと省エネルギーで動作するラマンシリコンレーザを実現した。成功のポイントは、これまで不用と思われていた共鳴状態からの発光と、応用には不適とされていた結晶方向を同時に利用すると逆にレーザ発振に有利になることを発見したこと。
今回のレーザは現段階では光励起型のレーザだが、大幅な省エネルギー化に成功したことから、将来的には用途の広い電流励起型のレーザへの発展が期待できる。実現すれば、シリコンチップの光配線は大きく進展して、電子技術と光技術が融合した理想のシリコンチップへの道が開かれる。また、安価な小型センサー光源として、さまざまな産業創出を可能とし、日本の半導体産業の競争力につながると期待される。
研究グループは、インテル社のレーザと比べて1万分の1の大きさ(10μm程度)しか持たないフォトニック結晶光共振器をレーザの光共鳴装置として用いた。そのため、単純なスケールメリットからは1万分の1の省エネルギー化(1μW程度)が期待される。しかし実際には、この予測は楽観的すぎて誰もが不可能と考えるが、研究グループは4つの斬新なアイデアを用いて成功させた。
(1)通常は、光共鳴装置のサイズを小さくすると、レーザ発振のための重要な性能指標であるQ値(光閉じ込めの強さを表す)が小さくなるが、研究グループが用いたフォトニック結晶共振器は世界最高の性能を持っており、サイズを小さくしても高いQ値を保つことができる。これにより微小領域に強く光を閉じ込めた。
(2)空間パターン(空間対称性)が悪いため、従来は不用と考えられていた光共鳴状態からの発光をレーザの駆動力として用い、ここから発生したラマン光を、世界最高Q値の光共振器に閉じ込めた。
(3)光共振器を作製する方向を、応用上は不適当と考えられていた結晶方向に変更した(従来の方向から45度傾いた[100]方向)。これにより、2つのマイナスの特徴が打ち消しあって、逆にラマン効果を高めるために理想的となった。
(4)フォトニック結晶の空気孔の直径を変えるだけで、全ての光通信波長帯で利用できるようにした。これにより光配線の大容量化が期待できる。
これらの工夫により、明瞭なレーザ発振を確認した。
インテル社(Intel)のレーザの光共鳴装置はPIN構造を必要とするが、今回のレーザでは不要。そのため、ドーピング(不純物投入)、メタルコンタクト(電極形成)、パシべーション(半導体表面にかぶせる保護膜)などのプロセスが不要となる。単純にいえば、シリコン基板に穴を開けるだけで今回のレーザは作れるので、金属元素も不要。
ラマンレーザは、光励起型のため応用範囲が制限されるという課題があったが、今回1μW程度の励起パワーでレーザ発振が可能になったことにより、効率の悪いシリコンの発光でもエネルギー源に用いることができる可能性がある。汎用性の高い電流注入型のレーザへの展開も期待でき、今回の成果はシリコン分野に革命を与える第一歩となると期待される。
超小型のシリコンレーザを光源に用いて光と電子が融合したシリコンチップが実現すれば、パソコンの省電力化、低騒音、高速化などが期待できるとともに、次世代スーパーコンピューターの開発も勢いづく。また、安価なシリコンレーザは、環境モニタリング、生体センサなどの光源として期待でき、光配線よりも、こちらの方の実用化が早まる可能性もある。今回の成果は、さまざまな産業創出を可能とし、日本の半導体産業の競争力につながると期待される。