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NIIとマインツ大学、「量子光」を生成する新たな光源の開発に成功

May 31, 2013, 東京--情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)とマインツ大学の研究チームは、「量子光」を生成する新たな光源の開発に成功した。NII ティム バーンズ助教を中心に行われた研究は、半導体システムで発生するいくつかの物理特性を利用して、確実かつ継続的に量子光を生成する手法を開発した。
この量子光は、安全な情報伝送等、将来の量子技術用途に利用できることが期待される。
光の性質は生成方法によって大きく異なる。例えば、太陽光と蛍光灯やLED照明等の人工光とでは、波長分布が異なる。レーザ光も単色、つまり波長が1種類しかないという点で独特であるが、レーザのような単色光でさえ、生成方法によって状態が異なる場合がある。レーザの光は理想的な正弦波に近く、そのためエンタングルメントのような特異な量子機械特性が存在しない「古典的」な光だとされている。
光には本来、特別な完全「量子」状態が存在することが知られている。量子光学の分野では、光の状態はウィグナー関数で表す。全体にわたってウィグナー関数が正の場合、その光は「古典的」であり、ウィグナー関数が負の領域がある場合、その光は量子特性を持つ。厳密に言えばこのような光は非ガウス光と呼ばれる。
半導体構造では、微小共振器量子井戸と呼ばれる構造によって、「励起子ポラリトン」と呼ばれる粒子が励起される。励起子ポラリトンが十分に生成されると、ボーズ・アインシュタイン凝縮現象が発生する。ボーズ・アインシュタイン凝縮では粒子が自発的にコヒーレンスを形成し、波動関数はすべて位相コヒーレントとなる。
励起子ポラリトンは位相コヒーレントとなると、構造の上部から光が発散され、半導体を離れる。構造から放たれた光は、ボーズ・アインシュタイン凝縮により位相コヒーレンスにありながら、励起子間の相互作用により反発し合うという特異な性質を持つ。これが、全く相互作用を持たず、したがって光子が互いの存在に影響を受けないレーザ光と大きく異なる点。これにより、新しい装置と一般的なレーザとの間に全く異なる光特性が生まれる。
従来、このような非古典的な光の生成は確率的手法に頼っていたが、この手法では、一時的な生成しか出来ず、一定の確率で失敗してしまう。研究チームが提案する発明を活用すれば、スイッチを入れると光が発生するレーザと同じように、光を継続的に発生させることができる。これにより、非古典的な光を利用した将来の量子技術の促進が期待される。 光を使った量子計算の場合、このような非ガウス光は古典計算を超えるためには不可欠であるということが知られているため、量子暗号や量子コンピューティングでこの技術が発展に繋がると期待されている。
(詳細は、は5 月13 日付Physical Review B Rapid Communications誌)


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