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NISTの研究チーム、画期的なメタマテリアル平面レンズを開発

May 29, 2013, Gaithersburg--NISTの研究チームは、UV光をこれまでにない方法で曲げたり集光したりする新しいタイプのレンズを実証した。このレンズを使うと、自由空間に浮かんだ幽霊のような3D像を造り出すことができる。このレンズは製造が簡単なので、リソグラフィ、ナノスケール操作や製造、高分解能の3Dイメージング、その他様々な分野の数多くの未知の用途で改善が期待できる。
NISTの研究者、論文の著者の1人、Ting Xu氏は、「通常のレンズは3D物体を2Dで捉えるだけだ。われわれのフラットレンズは、3次元の物体を画像と1:1で対応するように3次元(3D)画像として映し出すことができる」と説明している。
Natureに発表された論文によると、この新しいレンズはフラットな1枚のメタマテリアルでできている。この材料は、光を後方に流す特徴がある。これは、波やエネルギーが反対方向に進む、直感に反する事態であり、負の屈折率が生じている。
空気や水などの自然発生的な物質は正の屈折率を持つ。例えば、空気の屈折率は1、水の屈折率は約1.33であるので、水にストローを入れると両者の屈折率の違いにより曲がって見えるが、両方とも屈折率は正であるので、水中のストローは空気に対して前方に曲がって見える。
メタマテリアルの負の屈折率は、物質に対して入射または出射する光を、ほとんど全ての他の物質で起こるのと反対方向に曲げる。
1967年、ロシアの物理学者、Victor Veselagoが、負の誘電率および負の透磁率を持つ材料がどのように負の屈折率を持つかについて論文を発表している。Veselagoは、屈折率-1の材料を使うとフラット(平面)なレンズを造れると論じている。正の屈折率を持つ通常のレンズは曲面を持っている。屈折率-1のフラットレンズは3D物体を直接画像化する、つまり自由空間に3D画像を投影するために使用できる。
このような負の屈折率を持つフラットレンズは、光の波長よりも大幅に小さく詳細画像を映し出し、正の屈折率を持つガラスレンズよりも高分解能の画像を造り出すことができるとも言われていた。
この予言から30年経過してメタマテリアルという形で負の屈折率を持つ材料が実現された。過去10年、研究者たちは、金属模様(メタリックパタン)を平面基板に繰り返し作製することで、マイクロ波、赤外、可視光で機能するメタマテリアルを実現してきた。しかし、研究者たちが取り扱いたい波長が小さくなるにともない、これらのパタンも小さくなる必要があり、この構造の作製は著しく難しくなった。今日まで、UVで動作するメタマテリアルを作製することは不可能と見られていた。10nm程度の微小な構造を造らなければならないからだ。
さらに、デザインの本質的な限界から、赤外や可視光向けに設計されたこの種のメタマテリアルは一定の方向にのみ進む光に負の屈折率を与えるものであり、屈折された光を利用するイメージングや他のアプリケーションに使うのは難しかった。
こうした問題を解決するためにNISTの研究チームは、最近オランダの原子・分子物理学研究所(AMOLF)のグループが提案したメタマテリアル設計理論からインスピレーションを得て、このデザインをUVで動作するように応用した。共同執筆者、Xu氏によるとむ、NISTのメタマテリアルレンズは本質的に簡単に製造できる。それはナノスケールパタンに依存するものではなく、代わりに銀と二酸化チタンのナノメートル厚の層を交互に重ねた単純なサンドイッチ構造となっており、製造は決まったとおりに行われる。この独自の設計は強く結合した導波路スタックでできており、これが後方へ向かう波を維持するので、このメタマテリアルは進む角度に関わらず入射光に対しても負の屈折率を示す。
VeselagoのフラットレンズをUVで実現したことは、マイクロ波以外の周波数で動作するフラットレンズを実証した初めての成果と言える。他の材料の組み合わせにより、同様の層構造のメタマテリアルで、可視光、赤外光を含め、他のスペクトラル領域で動作するメタマテリアルの実現可能性を示すものである。
(詳細は、 www.nist.gov)


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