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テラヘルツ波を用いてグラフェンの光学量子ホール効果の観測
May 16, 2013, 東京--グラフェンは炭素原子が蜂の巣格子状に結合した原子一層からなる物質。グラフェン中の電子は、質量がゼロであるかのように振る舞う(ディラック電子)(2010年のノーベル物理学賞の対象)。またその速度が光速の約1/300と非常に速い。これらの性質のため、グラフェンは高速トランジスタなど次世代の電子デバイス材料の有力候補として期待されている。
東京大学大学院理学系研究科の島野亮准教授、青木秀夫教授、NTT物性科学基礎研究所の日比野浩樹グループリーダ、理化学研究所の森本高裕基礎科学特別研究員らのグループは、グラフェンがテラヘルツ波(THz)に対しても明瞭に量子ホール効果を示すことを、ファラデー効果を利用して観測することに世界で初めて成功した。
ファラデー効果とは磁場中にある物質を透過した光の振動方向(偏光)が回転する現象であり、光アイソレータなどに利用されている。通常、回転の角度は磁場の強さと物質の厚さに比例して増加する。反射波の回転の場合をカー効果と呼ぶ。炭素原子一層のグラフェンでもファラデー効果、カー効果が観測されたが、磁場を増加させていくと、回転角は物理学の基本定数である微細構造定数を単位として跳び跳びの値をとることがわかった。この現象は、直流の電気伝導で知られる量子ホール効果の光版(光学量子ホール効果)と言える。
グラフェンが示す物理現象の一つに量子ホール効果がある。グラフェンでは、量子ホール効果がディラック電子の性質を反映して特異な整数値をとり、低い磁場や室温でも観測される。近年、グラフェンでこの量子ホール効果が光の領域でもファラデー効果として生じる(光学量子ホール効果)ことが森本氏らによって理論的に予測され(T. Morimoto, Y. Hatsugai, and H. Aoki, Physical Review Letters, 103, 116803 (2009))ていたが、その実証には光学量子ホール効果の検証に必要なファラデー効果を高精度に評価する技術と高品質なグラフェンを作製する技術の連携が必要となり、これまで実験を行うことが極めて困難であった。
グラフェンに対して基礎研究から応用開発まで世界中で激しい競争が繰り広げられている中、東大の持つファラデー(カー)回転角の高精度測定技術、NTTの持つ高均一なグラフェン成長技術、理研と東大が持つ光学伝導度の理論計算という、それぞれの強みを生かした協働体制を取ることにより、テラヘルツ波を用いて高品質のグラフェンにおける量子ホール効果に対応する量子ファラデー効果、量子カー効果(光学量子ホール効果)を高精度で測定することに世界で初めて成功した。波長300µmのテラヘルツ波の偏光が、僅か炭素原子一層を透過、あるいは反射しただけで偏光が回転することが観測されたが、磁場を増加させると、回転角は物理学の基本定数である微細構造定数を単位として階段状に跳び跳びの値をとることが初めて示された。さらに、厳密対角化と呼ばれる理論手法により、実験と計算結果と比較したところ、階段構造の振る舞いなどが非常によく一致することが明らかになり、観測された現象が、直流の電気伝導で観測される量子ホール効果の光版であり、理論的に予測された光学量子ホール効果と呼ぶべきものであるとの明確な結論を得た。
ホール効果が階段状になる理由には、不純物などをもつ2次元電子系に強い磁場をかけると、電子が動けなくなってしまう電子局在という現象が関わっているが、この電子局在の効果はこれまで主に直流の電気伝導で調べられており、それがテラヘルツ波のような高周波で現れるかどうかは全く分かっていなかった。近年、半導体の界面の二次元電子系においては、光学量子ホール効果が生じることが、島野准教授らのグループにより見出されていたが(Y. Ikebe, et al., Physical Review Letters 104, 256802, (2010))、グラフェンでは今回初めて観測された。
(詳細は、 www.riken.go.jp)
東京大学大学院理学系研究科の島野亮准教授、青木秀夫教授、NTT物性科学基礎研究所の日比野浩樹グループリーダ、理化学研究所の森本高裕基礎科学特別研究員らのグループは、グラフェンがテラヘルツ波(THz)に対しても明瞭に量子ホール効果を示すことを、ファラデー効果を利用して観測することに世界で初めて成功した。
ファラデー効果とは磁場中にある物質を透過した光の振動方向(偏光)が回転する現象であり、光アイソレータなどに利用されている。通常、回転の角度は磁場の強さと物質の厚さに比例して増加する。反射波の回転の場合をカー効果と呼ぶ。炭素原子一層のグラフェンでもファラデー効果、カー効果が観測されたが、磁場を増加させていくと、回転角は物理学の基本定数である微細構造定数を単位として跳び跳びの値をとることがわかった。この現象は、直流の電気伝導で知られる量子ホール効果の光版(光学量子ホール効果)と言える。
グラフェンが示す物理現象の一つに量子ホール効果がある。グラフェンでは、量子ホール効果がディラック電子の性質を反映して特異な整数値をとり、低い磁場や室温でも観測される。近年、グラフェンでこの量子ホール効果が光の領域でもファラデー効果として生じる(光学量子ホール効果)ことが森本氏らによって理論的に予測され(T. Morimoto, Y. Hatsugai, and H. Aoki, Physical Review Letters, 103, 116803 (2009))ていたが、その実証には光学量子ホール効果の検証に必要なファラデー効果を高精度に評価する技術と高品質なグラフェンを作製する技術の連携が必要となり、これまで実験を行うことが極めて困難であった。
グラフェンに対して基礎研究から応用開発まで世界中で激しい競争が繰り広げられている中、東大の持つファラデー(カー)回転角の高精度測定技術、NTTの持つ高均一なグラフェン成長技術、理研と東大が持つ光学伝導度の理論計算という、それぞれの強みを生かした協働体制を取ることにより、テラヘルツ波を用いて高品質のグラフェンにおける量子ホール効果に対応する量子ファラデー効果、量子カー効果(光学量子ホール効果)を高精度で測定することに世界で初めて成功した。波長300µmのテラヘルツ波の偏光が、僅か炭素原子一層を透過、あるいは反射しただけで偏光が回転することが観測されたが、磁場を増加させると、回転角は物理学の基本定数である微細構造定数を単位として階段状に跳び跳びの値をとることが初めて示された。さらに、厳密対角化と呼ばれる理論手法により、実験と計算結果と比較したところ、階段構造の振る舞いなどが非常によく一致することが明らかになり、観測された現象が、直流の電気伝導で観測される量子ホール効果の光版であり、理論的に予測された光学量子ホール効果と呼ぶべきものであるとの明確な結論を得た。
ホール効果が階段状になる理由には、不純物などをもつ2次元電子系に強い磁場をかけると、電子が動けなくなってしまう電子局在という現象が関わっているが、この電子局在の効果はこれまで主に直流の電気伝導で調べられており、それがテラヘルツ波のような高周波で現れるかどうかは全く分かっていなかった。近年、半導体の界面の二次元電子系においては、光学量子ホール効果が生じることが、島野准教授らのグループにより見出されていたが(Y. Ikebe, et al., Physical Review Letters 104, 256802, (2010))、グラフェンでは今回初めて観測された。
(詳細は、 www.riken.go.jp)