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NTTが開発した通信用レーザ技術を応用し医療用光源を新たに製品化

February 1, 2013, 東京--エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ(NTT-AT)と、浜松ホトニクスは、医療用画像検査機器として臨床応用が進む光干渉断層計(Optical Coherence Tomography: OCT)に用いる1.3μm帯の波長掃引光源を、2月1日より共同で販売する。
同製品は、日本電信電話(NTT)が通信用に開発した電気光学結晶KTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム、KTa1-xNbxO3)の製造技術とその結晶を用いた高速波長可変レーザ技術を応用し、NTT-ATがOCT用の波長掃引光源として製品化した。製品として世界最速(従来比で2倍)となる200kHzの波長掃引速度を実現しており、OCT診断において患者の身体的負担の軽減に大きく貢献する。
販売は、NTT-ATと医療デバイスの製造販売で実績があり世界的な販売網を持つ浜松ホトニクスと共同で実施し、さらに両社は連携してOCT用波長掃引光源事業を展開するとともに、製品ラインナップの拡充や量産化に向けた共同開発を実施し、医療デバイス市場への参入、拡大を目指す。
OCTは、1991年に開発された新しい医療用画像診断技術で、深さ数mm程度までの生体組織表層の断層像を数μm~数十μmの分解能で極めて高精細に観察できる技術。OCTは、現在では大学などの研究機関や基幹病院から一般のクリニックにまで幅広く導入されている。中でもレーザ光の波長を高速に変化させることで断層像を撮影する「波長掃引型OCT(Swept Source OCT:SS-OCT)」は、高速に高精細画像が得られるという特徴から今後の主流になると期待されており、検査対象となる組織に適した波長帯のレーザを用いることで、眼(前眼部や網膜)、消化器(食道や胃)、循環器(冠動脈)など、人体のさまざまな組織の診断が可能になっている。
SS-OCTでは、波長掃引速度が速いほど撮影時間が短くなるが、現在の主流であるミラーを高速に動かし波長を連続的に変える方法では、機械的な駆動速度に限界がある。さらに高速に動作する波長掃引光源を用いて撮影時間を短縮し、患者の負担を軽減することが、OCT装置メーカー各社の大きな目標。研究レベルでは、光ファイバを用いた技術やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と半導体レーザを用いた技術で、200kHz以上の高速波長掃引光源が実現されているが、製品化にはコストやサイズの面で課題がある。
今回製品化した光源は、NTTが通信用に開発した高速KTN光偏向素子ならびに高速波長可変レーザ技術を応用したものであり、製品化されている光源としては世界最速。この光源を組み込んだOCTシステムでは、診断時間の短縮だけでなく、生体組織の高精細かつ高速の断層像の撮影が可能なことから、リアルタイム3D画像の取得などを通じたR&D分野での臨床研究応用、さらには医療診断技術の画期的進展への貢献など、さまざまな用途への展開も期待される。なお、波長は、冠動脈検査用のOCTで用いられている1.3μm帯。

技術のポイント
(1)高速・高精細画像撮影を実現
従来の製品で高速波長掃引を実現しているMEMSミラーは、可動部分があるので、100kHzを超える高速化には制約がある。NTT-ATの製品に用いた高速KTN光偏向素子は可動部がなく光偏向は電気光学効果によるため、MEMSミラーに比べ、大幅な高速化が可能(2006年5月18日、NTT報道発表)。今回は、従来製品の2倍となる200kHzの動作を実現した。これにより診断時間を半分に減らすことが可能で、瞬時の撮影が可能となる。また、同じ時間では2倍の画像撮影が可能であり、この画像を積算することにより、ノイズの少ない高精細画像を得ることが可能となる。
(2) KTN光偏向素子を用いた高性能波長掃引光源の製品化
今回、製品化した波長掃引光源は、リットマン-メトカフ(Littman-Metcalf)型外部共振器型のレーザ構成を採用。このレーザの中に、高効率の回折格子とKTN光偏向素子を配置しコンパクトな構造として最適化することで、高速動作に加え、広い波長掃引幅、十分なコヒーレンス長を実現。

NTT-ATと浜松ホトニクスの連携について
浜松ホトニクスは、光半導体や光検出器の医療分野で長年にわたり海外も含めた市場でシェアを獲得しており、製品の開発、製造に加え、国内外での強力な販売網を有している。このため、今回、通信デバイス技術の医療分野への適用を目指すNTT-ATと、医療分野での開発・製造・販売に実績のある浜松ホトニクスが連携し、世界規模でのビジネス拡大を目指す。また、NTTの開発成果に、浜松ホトニクスが持つ高い光半導体技術を加え、NTT-ATとの共同開発による波長掃引光源の高性能化、動作波長領域の拡大を推進する。NTTが開発した成果を活用し、両社の連携のもと、医療分野をはじめとする幅広い分野に展開することで、社会に貢献することを目指している。
今回販売開始した製品は、OCTシステムメーカーへの開発用光源として幅広く販売し、OCTシステムへの採用をめざしている。また、眼底検査OCTで普及が期待される1.05μm帯の光源をはじめとするラインナップ拡充や光源性能の向上に向けた共同開発を、1年を目途に進めていく。さらに、高品質なOCT画像データ取得を可能とする高速光検出器や2次元掃引ミラーと組み合わせた製品開発も進める。
現在、光源の製造はNTT-ATで行っているが、量産段階では浜松ホトニクスが行う予定。
(詳細は、www.ntt.co.jp/)

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