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波長可変レーザを用いた新しい顕微鏡を開発
November 15, 2012, 大阪--大阪大学などの研究チームは、波長の高速切替が可能なレーザを用いて生体組織を高速かつ無染色で観察する顕微鏡を開発した。この装置と独自に開発した解析アルゴリズムを用いることで、生体組織の3次元構造や構成物質の組成差を、あたかも各種の染色剤を使って染色したかのように可視化することができる。
この成果は、大阪大学 大学院工学研究科 小関泰之助教、伊東一良教授、福井希一教授、元大学院生 梅村航氏、住村和彦特任助教、科学技術振興機構、キヤノン橋本浩行室長、大塚洋一博士、佐藤秀哉博士、名古屋大学西澤典彦教授によるもので、Nature Photonicsオンライン速報版に掲載された。
基礎医学、臨床医学や生物学において、生体組織を観察することは、病変部位の診断や組織形成の研究のための重要な技術であるが、多くの生体組織は透明であるため、観察する際は組織の加工や染色が必要となる。これには多くの工程と数十分程度の時間を要し、熟練を要する。このため、生体組織を迅速かつ鮮明に観察できる技術が求められている。また、生体組織の構造を3次元(3D)的に可視化するためには、組織を薄片化し、多数の2D元画像を重ねる必要があるなど、大変コストと手間がかかる。近年、染色が不要でかつ3D分解能を持つ観察手法として、2色のパルスレーザを用いた誘導ラマン散乱(Stimulated Raman scattering, SRS)顕微鏡が注目されている。これは、生体分子の分子振動に由来するラマン効果を高感度にとらえ、生体をリアルタイムに可視化することができる技術であるが、従来のSRS顕微鏡では、レーザ波長で決まる特定の周波数の分子振動しか検出できないという課題があった。このため、生体組織を構成する異なる分子が持つ振動スペクトルのわずかな違いをとらえることは困難であった。
研究グループは、波長を高速に切り替えられるパルスレーザを開発し、このレーザを用いたビデオレートSRS顕微鏡を実現した。この顕微鏡は500×480ピクセルの画像を1秒間あたり30.8フレーム(fps)取得可能。フレームごと、すなわち1秒間に30.8回レーザの波長を変化させることで、様々な周波数の分子振動を短時間に検出することができる。さらに、わずかな振動スペクトルの違いを画像化するための解析手法も開発。これらを用いてラットの肝臓(厚さ0.1mm)を観察し、データを解析し、脂肪滴、細胞質、細胞核、線維、類洞などの2D分布や、血管壁の線維の3D分布を可視化することに成功した。また、マウスの小腸の絨毛を構成する細胞の3D的な配置をとらえ、細胞の種類を形態的に識別することにも成功。さらに、観察性能の高速性を活用し、息をして動いているマウスの皮膚内部の構造を可視化することにも成功した。
今回開発した顕微鏡は、基礎医学・分子生物学における研究ツールとして、また、医療分野においては組織の異常を調べるための高感度で再現性のある検査技術として応用され、患者および医師の負担を軽減することが期待される。実用化について研究チームは、「今後、レーザ光源の実用性をさらに高めることで、数年以内の実用化が可能」としている。
この成果は、大阪大学 大学院工学研究科 小関泰之助教、伊東一良教授、福井希一教授、元大学院生 梅村航氏、住村和彦特任助教、科学技術振興機構、キヤノン橋本浩行室長、大塚洋一博士、佐藤秀哉博士、名古屋大学西澤典彦教授によるもので、Nature Photonicsオンライン速報版に掲載された。
基礎医学、臨床医学や生物学において、生体組織を観察することは、病変部位の診断や組織形成の研究のための重要な技術であるが、多くの生体組織は透明であるため、観察する際は組織の加工や染色が必要となる。これには多くの工程と数十分程度の時間を要し、熟練を要する。このため、生体組織を迅速かつ鮮明に観察できる技術が求められている。また、生体組織の構造を3次元(3D)的に可視化するためには、組織を薄片化し、多数の2D元画像を重ねる必要があるなど、大変コストと手間がかかる。近年、染色が不要でかつ3D分解能を持つ観察手法として、2色のパルスレーザを用いた誘導ラマン散乱(Stimulated Raman scattering, SRS)顕微鏡が注目されている。これは、生体分子の分子振動に由来するラマン効果を高感度にとらえ、生体をリアルタイムに可視化することができる技術であるが、従来のSRS顕微鏡では、レーザ波長で決まる特定の周波数の分子振動しか検出できないという課題があった。このため、生体組織を構成する異なる分子が持つ振動スペクトルのわずかな違いをとらえることは困難であった。
研究グループは、波長を高速に切り替えられるパルスレーザを開発し、このレーザを用いたビデオレートSRS顕微鏡を実現した。この顕微鏡は500×480ピクセルの画像を1秒間あたり30.8フレーム(fps)取得可能。フレームごと、すなわち1秒間に30.8回レーザの波長を変化させることで、様々な周波数の分子振動を短時間に検出することができる。さらに、わずかな振動スペクトルの違いを画像化するための解析手法も開発。これらを用いてラットの肝臓(厚さ0.1mm)を観察し、データを解析し、脂肪滴、細胞質、細胞核、線維、類洞などの2D分布や、血管壁の線維の3D分布を可視化することに成功した。また、マウスの小腸の絨毛を構成する細胞の3D的な配置をとらえ、細胞の種類を形態的に識別することにも成功。さらに、観察性能の高速性を活用し、息をして動いているマウスの皮膚内部の構造を可視化することにも成功した。
今回開発した顕微鏡は、基礎医学・分子生物学における研究ツールとして、また、医療分野においては組織の異常を調べるための高感度で再現性のある検査技術として応用され、患者および医師の負担を軽減することが期待される。実用化について研究チームは、「今後、レーザ光源の実用性をさらに高めることで、数年以内の実用化が可能」としている。