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産総研、ポリマー上でシリコンの性能を超えるトランジスタを作製
September 27, 2012, つくば--産業技術総合研究所(産総研)ナノエレクトロニクス研究部門新材料・機能インテグレーショングループ 前田 辰郎 主任研究員、板谷太郎主任研究員の研究チームは、住友化学と共同で、ポリマーを利用した化合物半導体の転写とポリマー上の高性能トランジスタ作製技術を開発した。
産総研の基板貼り合わせ技術とデバイス作製技術、住友化学の化合物結晶成長技術というそれぞれの強みを生かし、ポストシリコン材料デバイスとシリコン大規模集積回路(Si-LSI)の集積化に向けて、(1) 耐熱性能に優れた接着性ポリイミドの開発、(2) 接着性ポリイミドを利用したシリコン基板上への高品質ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)層の転写技術の開発、(3) 400℃以下の温度でシリコンの性能を凌駕するトランジスタを作製する技術の開発にそれぞれ成功した。
今回開発した技術によりポストシリコン材料とSi-LSIを融合した高性能・多機能デバイスの開発やエレクトロンデバイスとフォトニックデバイスのより高密度な3次元積層集積化が可能となり、コンピュータの省電力化、高速化、ダウンサイジングが期待できる。
産総研と住友化学は、2008年よりエレクトロンデバイスとフォトニックデバイスの融合を目指したハイブリッド半導体技術開発の共同研究をすすめており、シリコン基板上で高性能半導体とフォトニック材料としてさまざまな機能をもつ化合物半導体やゲルマニウムとの融合を図る研究に取り組んできた。今回、産総研による世界屈指の基板貼り合わせ技術とデバイス作製技術、住友化学の商用レベルの化合物半導体エピタキシャル成長技術を利用し、ポストシリコンデバイスとシリコンデバイスの機能集積に向けた高性能半導体結晶の貼り合わせと低温デバイス作成技術の開発に成功。
バックエンド集積化とは、シリコンウエハにSi-LSIなどを形成する工程(フロントエンドプロセス)ではなく、トランジスタなどの素子間を配線する工程(バックエンドプロセス)において、機能デバイスを形成し、下部にあるSi-LSIと接合することで、Si-LSI機能に新たな機能を加えることを指している。これまでの研究で、ポストシリコン材料は、デバイス作製時の温度が1000℃超えるシリコン材料と比較すると400℃以下と低いため、最高でも500℃程度の低温プロセスを求められるバックエンドプロセスでのデバイス作製に適していることがわかっている。また、プロセス温度の低温化は、今まで無機系材料が中心であった半導体デバイスプロセスに、安価で機能性に富むポリマー材料の導入を可能にしている。今回、極薄(300 nm以下)のポストシリコン材料を、ポリイミドを使ってシリコン上に転写し、ポリマーに直接接合した半導体層を使って400℃以下の温度でトランジスタを作製。極薄半導体活性層にポリイミドを直接接合させ、シリコンの性能を凌駕するトランジスタの作製と動作実証をしたのは世界初。
バックエンド集積化型高性能トランジスタの作製方法では、まず、ポストシリコン材料として高品質なInGaAs層(300 nm)を、格子整合するInP基板上にエピタキシャル成長させる。次に、接着用ポリイミドをスピンコーティング法で塗布したシリコン基板とエピタキシャル成長した基板とを反転接合させる。今回、ポストシリコン材料の貼り合わせのために、450℃以上の耐熱性と高い接着性を併せ持つポリイミドを新たに開発。次にInP基板を選択的にはく離し、シリコン基板上の薄膜InGaAs結晶層を得た。最後に、作製されたポリイミド/シリコン基板上のInGaAs結晶層を利用して、400℃以下のプロセス温度でトランジスタを形成した。ポリイミドは、接合剤として極めて安価で扱いやすい点が大きなメリットであり、今回、このポリイミドを使って転写プロセスやトランジスタ作製プロセスでの耐性を検証した。
ポリイミド上に形成されたゲート長50μmのInGaAs n型MOSFETの性能では、ドレイン電流—ゲート電圧特性からはオン・オフ比が二桁以上の良好なスイッチング特性、ドレイン電流—ドレイン電圧特性から明瞭な線形領域と飽和領域が観察され、良好なトランジスタ動作をしていることが確認された。転写する前のInP基板上とポリイミド上のInGaAsの移動度特性の比較ででは、ポリイミド上でも、移動度が最高で1000 cm2/Vsを超えており、シリコンの移動度の約2倍近い値を示している。InP基板上と比較しても、低キャリア密度領域でわずかに移動度減少が見られるものの、高キャリア密度領域では完全に一致。トランジスタ形成時に、ポリイミドはさまざまな熱サイクル、さらには化学的な処理に曝されるため、当初はプロセス中の汚染源としてトランジスタ性能劣化の要因になることが懸念されたが、今回の結果は、ポリイミドがポストシリコン半導体向け基材として十分に機能していることを示している。また、転写前後でデバイス特性に大きな劣化は見られないことから、転写プロセスが半導体層に悪影響を与えていないことがわかった。今回、ポリイミドを使った転写技術とポストシリコン材料の低温トランジスタ作製技術が実証されたことから、バックエンドプロセスでのポリマー材料の導入とポストシリコンデバイスのSi-LSIとの集積化が容易に可能となる。今後、ポリイミドとポストシリコン材料の多様性を活かした高性能・多機能デバイスの実現が期待される。
(詳細は、www.aist.go.jp)
産総研の基板貼り合わせ技術とデバイス作製技術、住友化学の化合物結晶成長技術というそれぞれの強みを生かし、ポストシリコン材料デバイスとシリコン大規模集積回路(Si-LSI)の集積化に向けて、(1) 耐熱性能に優れた接着性ポリイミドの開発、(2) 接着性ポリイミドを利用したシリコン基板上への高品質ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)層の転写技術の開発、(3) 400℃以下の温度でシリコンの性能を凌駕するトランジスタを作製する技術の開発にそれぞれ成功した。
今回開発した技術によりポストシリコン材料とSi-LSIを融合した高性能・多機能デバイスの開発やエレクトロンデバイスとフォトニックデバイスのより高密度な3次元積層集積化が可能となり、コンピュータの省電力化、高速化、ダウンサイジングが期待できる。
産総研と住友化学は、2008年よりエレクトロンデバイスとフォトニックデバイスの融合を目指したハイブリッド半導体技術開発の共同研究をすすめており、シリコン基板上で高性能半導体とフォトニック材料としてさまざまな機能をもつ化合物半導体やゲルマニウムとの融合を図る研究に取り組んできた。今回、産総研による世界屈指の基板貼り合わせ技術とデバイス作製技術、住友化学の商用レベルの化合物半導体エピタキシャル成長技術を利用し、ポストシリコンデバイスとシリコンデバイスの機能集積に向けた高性能半導体結晶の貼り合わせと低温デバイス作成技術の開発に成功。
バックエンド集積化とは、シリコンウエハにSi-LSIなどを形成する工程(フロントエンドプロセス)ではなく、トランジスタなどの素子間を配線する工程(バックエンドプロセス)において、機能デバイスを形成し、下部にあるSi-LSIと接合することで、Si-LSI機能に新たな機能を加えることを指している。これまでの研究で、ポストシリコン材料は、デバイス作製時の温度が1000℃超えるシリコン材料と比較すると400℃以下と低いため、最高でも500℃程度の低温プロセスを求められるバックエンドプロセスでのデバイス作製に適していることがわかっている。また、プロセス温度の低温化は、今まで無機系材料が中心であった半導体デバイスプロセスに、安価で機能性に富むポリマー材料の導入を可能にしている。今回、極薄(300 nm以下)のポストシリコン材料を、ポリイミドを使ってシリコン上に転写し、ポリマーに直接接合した半導体層を使って400℃以下の温度でトランジスタを作製。極薄半導体活性層にポリイミドを直接接合させ、シリコンの性能を凌駕するトランジスタの作製と動作実証をしたのは世界初。
バックエンド集積化型高性能トランジスタの作製方法では、まず、ポストシリコン材料として高品質なInGaAs層(300 nm)を、格子整合するInP基板上にエピタキシャル成長させる。次に、接着用ポリイミドをスピンコーティング法で塗布したシリコン基板とエピタキシャル成長した基板とを反転接合させる。今回、ポストシリコン材料の貼り合わせのために、450℃以上の耐熱性と高い接着性を併せ持つポリイミドを新たに開発。次にInP基板を選択的にはく離し、シリコン基板上の薄膜InGaAs結晶層を得た。最後に、作製されたポリイミド/シリコン基板上のInGaAs結晶層を利用して、400℃以下のプロセス温度でトランジスタを形成した。ポリイミドは、接合剤として極めて安価で扱いやすい点が大きなメリットであり、今回、このポリイミドを使って転写プロセスやトランジスタ作製プロセスでの耐性を検証した。
ポリイミド上に形成されたゲート長50μmのInGaAs n型MOSFETの性能では、ドレイン電流—ゲート電圧特性からはオン・オフ比が二桁以上の良好なスイッチング特性、ドレイン電流—ドレイン電圧特性から明瞭な線形領域と飽和領域が観察され、良好なトランジスタ動作をしていることが確認された。転写する前のInP基板上とポリイミド上のInGaAsの移動度特性の比較ででは、ポリイミド上でも、移動度が最高で1000 cm2/Vsを超えており、シリコンの移動度の約2倍近い値を示している。InP基板上と比較しても、低キャリア密度領域でわずかに移動度減少が見られるものの、高キャリア密度領域では完全に一致。トランジスタ形成時に、ポリイミドはさまざまな熱サイクル、さらには化学的な処理に曝されるため、当初はプロセス中の汚染源としてトランジスタ性能劣化の要因になることが懸念されたが、今回の結果は、ポリイミドがポストシリコン半導体向け基材として十分に機能していることを示している。また、転写前後でデバイス特性に大きな劣化は見られないことから、転写プロセスが半導体層に悪影響を与えていないことがわかった。今回、ポリイミドを使った転写技術とポストシリコン材料の低温トランジスタ作製技術が実証されたことから、バックエンドプロセスでのポリマー材料の導入とポストシリコンデバイスのSi-LSIとの集積化が容易に可能となる。今後、ポリイミドとポストシリコン材料の多様性を活かした高性能・多機能デバイスの実現が期待される。
(詳細は、www.aist.go.jp)