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産総研、微細シリコンデバイスのための3次元応力解析シミュレータ
September 12, 2012, つくば--産業技術総合研究所(産総研)ナノエレクトロニクス研究部門ナノスケール計測・プロセス技術研究グループ(多田哲也研究グループ長)は、先端力学シミュレーション研究所と共同で、微細シリコン(Si)デバイスのための3次元応力解析シミュレーターを開発した。
これは、光学顕微鏡を用いた顕微ラマン分光法による応力(機械的ひずみ)分布測定の際に、デバイス構造による光の強度分布の変調を計算して、微細Siデバイスに加えられている応力を、ナノメートルレベルの空間分解能で解析できるシミュレーション技術。この技術は、最先端LSIデバイス、特に22 nmテクノロジーノードで採用が開始される立体構造をもつFinFETデバイスなどの高速化・低消費電力化への貢献が期待される。
産総研は、半導体MIRAIプロジェクトにおいて、顕微ラマン分光法を用いたSiデバイス中の局所応力分布計測技術の研究開発を行い、光の波長よりも短い100 nm以下の空間分解能で局所応力分布を評価できる技術など、ラマン分光法を用いた応力分布解析技術としては、世界トップクラスの分解能の技術を開発した。この研究開発で、微細デバイスでは、光の強度分布がナノメートルスケールで強く変調され、これによりラマンスペクトルが大きな影響を受けることを見いだした。今回、電磁場解析と応力解析を結合したシミュレーションにより、光が変調される効果を取り入れたラマン分光法による解析をTCADと連携して、ナノメートルスケールで定量的な応力分布解析ができる手法を開発。
顕微ラマン分光法は、試料に入射した励起光が散乱されるときに、格子振動などのエネルギーレベルを反映して、散乱光の波長がシフトする現象を利用して非破壊で測定できるため、応力分布の評価手法として有望視されている。試料に加わっている応力の大きさや向きによってラマン散乱光の波長シフト(ラマンシフト、通常、波数で表記)の大きさも変わるため、ラマンシフトの変化量から加わっている応力の大きさをある程度知ることができる。しかし、光学顕微鏡を用いるため、空間分解能が光の波長程度(数百 nmから1 µm程度)にとどまる。また、応力は6つの独立した成分をもつ物理量なので、ラマンスペクトル測定だけでは、応力の方向や種類までを含めて定量的に評価することは難しい。この問題を解決するために、応力シミュレーションの結果と顕微ラマン分光法の測定結果を比較して、応力分布を評価することが行われてきたが、微細デバイスの測定では、デバイス構造が光の伝播をナノメートルスケールで複雑に変調し、測定されるラマンスペクトルにも大きな影響を与えるため、正しい応力解析ができないという問題点があった。
今回、開発したシミュレーションシステムは、ラマン散乱測定の際の励起光と散乱光の伝播を、時間領域差分法(FDTD)による電磁場解析で計算し、有限要素法(FEM)による応力解析と共に用いている。これにより、デバイス構造が光の強度分布をナノメートルスケールで変調する効果を取り入れてラマンスペクトルを精密に計算し、デバイス中の応力分布を定量的に求めることができる。
今回開発した3次元応力解析シミュレーターの構成は、1)構造・応力読込部(FEM法で応力分布を計算)、2)3次元FDTD解析部(励起光の強度分布を計算)、3)ラマンシフト解析部(試料の各点からのラマン散乱光の波長を、応力分布から計算)、4)3次元FDTD解析部(各点からラマン散乱光を散乱させる)、5)ラマンスペクトル解析部(実測する波長領域でのラマン散乱スペクトルを計算する)からなる。解析結果は、3次元ビューワーにより可視化される。FinFETの応力分布と今回開発したシミュレーターによって計算した励起光の強度分布を見ると、二酸化ケイ素(SiO2)層の上に形成されたSiのチャンネル部は、両端のシリコン・ゲルマニウム合金(SiGe)によって応力が加えられていることが分かる。この構造によって励起光の強度分布が変調され、チャンネルのエッジ部分近くの励起光強度が特に強く、計測されるラマン散乱光には、エッジ部分近くの散乱光が強く反映されることになる。また、励起光は側壁にも回り込んでいる。
顕微ラマン分光法自体の空間分解能は励起光の波長程度(数百 nmから1 µm程度)であるが、今回開発したシステムでは、応力シミュレーションを高精度に較正することで、ナノメートルスケールの空間分解能で応力分布を予測・評価することができる。
今後の展開について研究グループは、「開発した測定評価技術を組み込んだラマン計測システムの製品化を図るなど、広く社会に還元していく」としている。
(詳細は、www.aist.go.jp)
これは、光学顕微鏡を用いた顕微ラマン分光法による応力(機械的ひずみ)分布測定の際に、デバイス構造による光の強度分布の変調を計算して、微細Siデバイスに加えられている応力を、ナノメートルレベルの空間分解能で解析できるシミュレーション技術。この技術は、最先端LSIデバイス、特に22 nmテクノロジーノードで採用が開始される立体構造をもつFinFETデバイスなどの高速化・低消費電力化への貢献が期待される。
産総研は、半導体MIRAIプロジェクトにおいて、顕微ラマン分光法を用いたSiデバイス中の局所応力分布計測技術の研究開発を行い、光の波長よりも短い100 nm以下の空間分解能で局所応力分布を評価できる技術など、ラマン分光法を用いた応力分布解析技術としては、世界トップクラスの分解能の技術を開発した。この研究開発で、微細デバイスでは、光の強度分布がナノメートルスケールで強く変調され、これによりラマンスペクトルが大きな影響を受けることを見いだした。今回、電磁場解析と応力解析を結合したシミュレーションにより、光が変調される効果を取り入れたラマン分光法による解析をTCADと連携して、ナノメートルスケールで定量的な応力分布解析ができる手法を開発。
顕微ラマン分光法は、試料に入射した励起光が散乱されるときに、格子振動などのエネルギーレベルを反映して、散乱光の波長がシフトする現象を利用して非破壊で測定できるため、応力分布の評価手法として有望視されている。試料に加わっている応力の大きさや向きによってラマン散乱光の波長シフト(ラマンシフト、通常、波数で表記)の大きさも変わるため、ラマンシフトの変化量から加わっている応力の大きさをある程度知ることができる。しかし、光学顕微鏡を用いるため、空間分解能が光の波長程度(数百 nmから1 µm程度)にとどまる。また、応力は6つの独立した成分をもつ物理量なので、ラマンスペクトル測定だけでは、応力の方向や種類までを含めて定量的に評価することは難しい。この問題を解決するために、応力シミュレーションの結果と顕微ラマン分光法の測定結果を比較して、応力分布を評価することが行われてきたが、微細デバイスの測定では、デバイス構造が光の伝播をナノメートルスケールで複雑に変調し、測定されるラマンスペクトルにも大きな影響を与えるため、正しい応力解析ができないという問題点があった。
今回、開発したシミュレーションシステムは、ラマン散乱測定の際の励起光と散乱光の伝播を、時間領域差分法(FDTD)による電磁場解析で計算し、有限要素法(FEM)による応力解析と共に用いている。これにより、デバイス構造が光の強度分布をナノメートルスケールで変調する効果を取り入れてラマンスペクトルを精密に計算し、デバイス中の応力分布を定量的に求めることができる。
今回開発した3次元応力解析シミュレーターの構成は、1)構造・応力読込部(FEM法で応力分布を計算)、2)3次元FDTD解析部(励起光の強度分布を計算)、3)ラマンシフト解析部(試料の各点からのラマン散乱光の波長を、応力分布から計算)、4)3次元FDTD解析部(各点からラマン散乱光を散乱させる)、5)ラマンスペクトル解析部(実測する波長領域でのラマン散乱スペクトルを計算する)からなる。解析結果は、3次元ビューワーにより可視化される。FinFETの応力分布と今回開発したシミュレーターによって計算した励起光の強度分布を見ると、二酸化ケイ素(SiO2)層の上に形成されたSiのチャンネル部は、両端のシリコン・ゲルマニウム合金(SiGe)によって応力が加えられていることが分かる。この構造によって励起光の強度分布が変調され、チャンネルのエッジ部分近くの励起光強度が特に強く、計測されるラマン散乱光には、エッジ部分近くの散乱光が強く反映されることになる。また、励起光は側壁にも回り込んでいる。
顕微ラマン分光法自体の空間分解能は励起光の波長程度(数百 nmから1 µm程度)であるが、今回開発したシステムでは、応力シミュレーションを高精度に較正することで、ナノメートルスケールの空間分解能で応力分布を予測・評価することができる。
今後の展開について研究グループは、「開発した測定評価技術を組み込んだラマン計測システムの製品化を図るなど、広く社会に還元していく」としている。
(詳細は、www.aist.go.jp)