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東京大学、スピンを利用したテラヘルツ光の制御に成功

August 30, 2012, 東京--東京大学の研究グループは、Ba2CoGe2O7結晶において、電子の磁石としての性質であるスピンを利用することで、結晶の厚み1mmあたり90度にも達する巨大な光の偏光回転現象を見出した。
さらに、光の強度が磁場によって増減することも実証した。その変化量は100%に及ぶ巨大な値。いずれの現象もテラヘルツ帯において観測されたことから、テラヘルツ光の偏光や強度を制御できる技術の実現に向けて有効な指針を得ることができた。
磁石中のスピンの動的挙動を高感度に測定するためには、分光学的手法を利用することが有効。特に、Ba2CoGe2O7結晶においては、エレクトロマグノンはテラヘルツ帯に存在する。研究チームは、磁場下におけるテラヘルツ光の偏光回転ならびに強度を高精度に測定できる分光測定系を新たに構築。次に、テラヘルツ光を照射し、Ba2CoGe2O7結晶を透過してきた光の状態を測定。磁場を印加した結果、エレクトロマグノン共鳴近傍においてテラヘルツ光の偏光が回転する現象を見出した。テラヘルツ光が結晶中を1mm進む間に、偏光は90度近く回転した。また、磁場の方向ならびにテラヘルツ光の偏光を90度回転させると、透過してきた光の偏光の回転方向が反転することを確認。これはスピン由来による光学活性を観測した初めての実験結果。
さらに、研究チームは、磁場の方向と光の進行方向を平行もしくは反平行にして実験を行い、磁場の方向を反転した場合、光の強度の変化量が100%に達することを見出した。これは磁気カイラル効果と呼ばれる現象で、従来の磁石が示す光への効果とは全く異なる現象。このような巨大な光学効果を実現するためには、エレクトロマグノン共鳴の利用が不可欠であることを理論計算によって確認した。
研究チームはスピンのカイラリティによる光学効果を観測しただけでなく、スピンを利用することでテラヘルツ光の偏光ならびに強度を劇的に変化できることを初めて明らかにした。このことは、学術的観点だけでなく、次世代の光通信の発展に不可欠なテラヘルツ帯の偏光制御開発につながる重要な成果。今後は、様々な物質を探索し、室温における光学活性ならびに磁気カイラル効果の発現を目指す。
(研究チーム: 東京大学大学院工学系研究科 十倉 好紀教授 [理化学研究所基幹研究所 強相関量子科学研究グループディレクター]、東京大学大学院新領域創成科学研究科 貴田 徳明准教授、東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター Sandor Bordacs 特任研究員)。
(詳細は、www.u-tokyo.ac.jp)

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