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光速で「対掌性」を変えられる人工分子
July 23, 2012, LosAlamos--ロスアラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory)を含む複数の研究所からなる研究チームが、光ビームを照射することで右利き方向から左利き方向へカイラリティ(対掌性:chirality)が迅速に変えられる人工分子を初めて実現した。
対掌性が変更できる分子はテラヘルツ技術のアプリケーション、生物医療研究、セキュリティ、超高速通信など幅広い分野で大きな可能性がある。
カイラリティは、あるタイプの分子で、明確な「利き手」(左利き/右利き)の区別であり、分子が鏡像の一方を取り得ることを意味している。そうした分子の左手形状と右手形状とは、鏡像異性体(enantiomers)と呼ばれ、明らかに違った特性を示す。例えば、カイラル分子リモネン(limonene)の一方のエナンティオーマはレモンの匂いがし、他方のエナンティオーマはオレンジの匂いがする。テラヘルツ電磁波で、分子のカイラリティを観察できること、変えられることは、ハイテク業界待望の資産となる。
バークレイラボの材料科学部主席研究者、Xiang Zhang氏は「天然材料はカイラリティが変わるようにできるが、そのプロセスは材料の構造変化が必要であり、弱くて緩慢だ。この人工分子で、光の速さでカイラリティが強力に、動的に変更できることを実証した」とコメントしている。
ロスアラモスのAntoinette Taylor氏の研究グループによると、光で変更可能なカイラルTHzメタモレキュール(メタ分子)の一般的設計原理は「利き手」(掌性)変更に限られるものではなく、他の電磁特性の動的反転にも適用できる。
誘電体に空気を持つナノメートルサイズの金ストリップから作製したTHzメタマテリアルにより、研究チームは精巧な人工カイラル分子を作製し、それを光活性シリコン媒体に組み込んだ。外部からの光ビームを用いてそのメタ分子を光励起することで研究チームは、円偏波THz光で鏡像反転を観察した。
「以前は光電子刺激を用いてメタマテリアル形状でカイラリティがスイッチONになったり、OFFになったりするだけだった。これに対して、今度は光スイッチを使って実際にTHzメタ分子のカイラリティを反転させることができた」(Zhang氏)。
光学的にスイッチできるカイラルTHzメタ分子は、対立するカイラリティを持つ一対の3Dメタ原子で構成されており、正確に構造化されたゴールドストリップでできている。各メタ原子は、電気と磁気応答結合により共鳴体となり、共振周波数で強いカイラリティと大きな偏向2色性を示す。
「同一形状で反対のカイラリティを持つ2つのカイラルメタ原子を組み合わせて1つのメタ分子を形成すると、鏡面対称が維持され、光学活性性が消失する。見方を変えると、反対のカイラリティを持つ2つのメタ原子から生ずる光学活性性は相殺される」とZhang氏は説明している。
メタ分子の異なる位置にある各カイラルメタ原子にシリコンパッドを導入。一方のメタ原子では、シリコンパッドは2つのゴールドストリップを橋渡しし、他方のメタ原子ではシリコンパッドはゴールドストリップの一部置き換えとなった。シリコンパッドは鏡面対称性を破り、メタ分子の組合せにカイラリティを生じさせる。パッドは、オプトエレクトロニックスイッチとしても機能し、光励起下でメタ分子のカイラリティを切り替える。
Shuang Zhang氏によると、スキームは対立する特性を持つ2つのメタ原子の組合せに依存する。関心範囲の周波数で一方は活性、もう一方は不活性となる。適切な設計により、2つのメタ原子は外部刺激に対して反対方向の反応を示す。言い換えると不活性のものが活性化し、活性なメタ原子が不活性になる。
THz電磁照射(T-rays)は、分子振動の周波数範囲内に入ると、有機/無機物質の化学的構成要素を解析するために理想的な非侵襲ツールとなる。カイラルメタ分子の掌性を変えることができ、THz光の円偏波を制御できることは、有毒化学物質や爆薬の発見、ワイヤレス通信、高速データ処理システムに使える。
DNA、RNA、タンパク質などほとんどの生物学的分子はカイラルであるので、THzベース偏向計デバイスは、医療の研究者、創薬開発者にとってもメリットがある。
「メタマテリアルで実現した変更可能カイラリティにより、THz周波数では得られないハイパフォーマンスの偏向計デバイス実現に向けた実行可能なアプローチができる」とAntoinette Taylor氏はコメントしている。「この周波数範囲は、生物学的に関連のある分子間、分子内の相互作用といった物理現象についての情報が得られるため、特に関心が高い。グラフェンやトポロジカル絶縁体のサイクロトロン共鳴といった新しい材料システムの電子状態をコントロールできる可能性がある」。
(詳細は、www.lanl.gov)
対掌性が変更できる分子はテラヘルツ技術のアプリケーション、生物医療研究、セキュリティ、超高速通信など幅広い分野で大きな可能性がある。
カイラリティは、あるタイプの分子で、明確な「利き手」(左利き/右利き)の区別であり、分子が鏡像の一方を取り得ることを意味している。そうした分子の左手形状と右手形状とは、鏡像異性体(enantiomers)と呼ばれ、明らかに違った特性を示す。例えば、カイラル分子リモネン(limonene)の一方のエナンティオーマはレモンの匂いがし、他方のエナンティオーマはオレンジの匂いがする。テラヘルツ電磁波で、分子のカイラリティを観察できること、変えられることは、ハイテク業界待望の資産となる。
バークレイラボの材料科学部主席研究者、Xiang Zhang氏は「天然材料はカイラリティが変わるようにできるが、そのプロセスは材料の構造変化が必要であり、弱くて緩慢だ。この人工分子で、光の速さでカイラリティが強力に、動的に変更できることを実証した」とコメントしている。
ロスアラモスのAntoinette Taylor氏の研究グループによると、光で変更可能なカイラルTHzメタモレキュール(メタ分子)の一般的設計原理は「利き手」(掌性)変更に限られるものではなく、他の電磁特性の動的反転にも適用できる。
誘電体に空気を持つナノメートルサイズの金ストリップから作製したTHzメタマテリアルにより、研究チームは精巧な人工カイラル分子を作製し、それを光活性シリコン媒体に組み込んだ。外部からの光ビームを用いてそのメタ分子を光励起することで研究チームは、円偏波THz光で鏡像反転を観察した。
「以前は光電子刺激を用いてメタマテリアル形状でカイラリティがスイッチONになったり、OFFになったりするだけだった。これに対して、今度は光スイッチを使って実際にTHzメタ分子のカイラリティを反転させることができた」(Zhang氏)。
光学的にスイッチできるカイラルTHzメタ分子は、対立するカイラリティを持つ一対の3Dメタ原子で構成されており、正確に構造化されたゴールドストリップでできている。各メタ原子は、電気と磁気応答結合により共鳴体となり、共振周波数で強いカイラリティと大きな偏向2色性を示す。
「同一形状で反対のカイラリティを持つ2つのカイラルメタ原子を組み合わせて1つのメタ分子を形成すると、鏡面対称が維持され、光学活性性が消失する。見方を変えると、反対のカイラリティを持つ2つのメタ原子から生ずる光学活性性は相殺される」とZhang氏は説明している。
メタ分子の異なる位置にある各カイラルメタ原子にシリコンパッドを導入。一方のメタ原子では、シリコンパッドは2つのゴールドストリップを橋渡しし、他方のメタ原子ではシリコンパッドはゴールドストリップの一部置き換えとなった。シリコンパッドは鏡面対称性を破り、メタ分子の組合せにカイラリティを生じさせる。パッドは、オプトエレクトロニックスイッチとしても機能し、光励起下でメタ分子のカイラリティを切り替える。
Shuang Zhang氏によると、スキームは対立する特性を持つ2つのメタ原子の組合せに依存する。関心範囲の周波数で一方は活性、もう一方は不活性となる。適切な設計により、2つのメタ原子は外部刺激に対して反対方向の反応を示す。言い換えると不活性のものが活性化し、活性なメタ原子が不活性になる。
THz電磁照射(T-rays)は、分子振動の周波数範囲内に入ると、有機/無機物質の化学的構成要素を解析するために理想的な非侵襲ツールとなる。カイラルメタ分子の掌性を変えることができ、THz光の円偏波を制御できることは、有毒化学物質や爆薬の発見、ワイヤレス通信、高速データ処理システムに使える。
DNA、RNA、タンパク質などほとんどの生物学的分子はカイラルであるので、THzベース偏向計デバイスは、医療の研究者、創薬開発者にとってもメリットがある。
「メタマテリアルで実現した変更可能カイラリティにより、THz周波数では得られないハイパフォーマンスの偏向計デバイス実現に向けた実行可能なアプローチができる」とAntoinette Taylor氏はコメントしている。「この周波数範囲は、生物学的に関連のある分子間、分子内の相互作用といった物理現象についての情報が得られるため、特に関心が高い。グラフェンやトポロジカル絶縁体のサイクロトロン共鳴といった新しい材料システムの電子状態をコントロールできる可能性がある」。
(詳細は、www.lanl.gov)