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0.1 nmより短波長のX線自由電子レーザ光強度を初めて測定

July 10, 2012, 播磨--産業技術総合研究所(産総研)、理化学研究所(理研)、高輝度科学研究センター (JASRI)、ドイツ物理技術研究所(PTB)、ドイツ電子シンクロトロン (DESY)は共同で、X線自由電子レーザ(XFEL)の平均パルスエネルギー(光強度)の絶対値を測定する技術を開発した。さらにオンラインビームモニターを校正することで、実験中のXFELのパルスエネルギーを正確に測定することが可能となった。
XFELを利用する研究では、パルスエネルギーによって得られるデータが大きく異なるため、パルスエネルギーを1つの変数とした実験結果の評価や最適なパルスエネルギーのレーザ光を用いた研究など、多くの研究での活用が期待される。この測定技術はSPring-8に隣接するXFEL施設SACLAで開発されたが、他のXFEL施設での応用も見込まれる。
研究成果は、産総研計測標準研究部門量子放射科、加藤昌弘研究員、田中隆弘研究員、齋藤則生研究科長、理研放射光科学総合研究センタービームライン研究開発グループ 矢橋牧名グループディレクター、JASRI)XFEL研究推進室利用技術開発・整備チーム 登野健介チームリーダーの各氏とドイツ物理技術研究所(PTB)、ドイツ電子シンクロトロン (DESY)との共同研究による。
今回、(1)新たに開発した極低温放射計を用いてSIトレーサブルなパルスエネルギーの測定技術と、(2) 実験中のオンライン測定を可能にするため、オンラインビームモニターを極低温放射計に対して校正する技術を開発した。
極低温放射計は、極紫外自由電子レーザのパルスエネルギー測定用極低温放射計を基に、極短高強度X線レーザ用に新たに開発したもの。極低温放射計では、検出部を液体ヘリウム温度に冷却して用いる。検出部がほぼすべてのX線を熱エネルギーとして吸収する技術と、X線による熱エネルギーを電力に変換する技術を組み合わせて実現。極紫外用の装置では、検出部の吸収体には銅を用いていたが、これを金と銅の組み合わせにして、ほぼすべてのX線を吸収できるようにした。測定したパルスエネルギーを等価な電気エネルギーに変換できるため、絶対測定が可能な測定器であり、一次標準器。
パルスエネルギーが最大となるのは波長が0.21 nmと0.13 nmの場合で、約100µJ。パルスの周波数(10 Hz)とパルス幅(20 fs)、から平均パワーは1 mW、ピークパワーは5 GW。この極低温放射計による測定の不確かさは1.1%から3.1%で、主にSACLAのXFELの強度のふらつきに起因。0.1 nmより短波長のXFELについて初めてSIトレーサブルなパルスエネルギーの測定に成功した。
測定結果に基づき、SACLAのXFELビームラインに組み込んで常時用いるオンラインビームモニターを校正した。このビームモニターはX線がほぼ透過するダイアモンド製の薄膜とシリコンフォトダイオードからなり、ダイアモンド薄膜からの後方散乱X線を検出する。この校正値から今後0.07 nmから0.28 nmの波長範囲で、このビームラインを利用する研究に、平均パルスエネルギーの絶対値を提供できる。
検出器が大強度のXFELにより飽和していないことを確認するために、パルスエネルギーを減弱するシリコン製薄膜を用いて、検出器のパルスエネルギー依存性を調べた。2つの検出器による測定結果は線形モデルによる直線で良く再現できている。これにより、広いパルスエネルギー範囲で極低温放射計とオンラインビームモニターが飽和していないことが確認できた。
今回の成果によって、実験結果とパルスエネルギーの関係を解析し、パルスエネルギーを制御して最適な条件で実験を行うことができる。さらに異なったXFEL施設で行われた実験の結果を比較する際にも、パルスエネルギーは重要な変数として利用されることが期待できる。
XFELは今後、基礎研究から応用研究まで、幅広い分野での活用が見込まれており、そのパルスエネルギー測定を定常的に精度よく行うためには、ビームラインの強度モニターを定期的に校正する必要がある。今回開発した技術は液体ヘリウムが必要であるため、(1)準備に時間を要する、(2)ランニングコストが高い、という課題がある。今後はより容易に、校正ができるように常温で動作する放射計による測定技術を開発する予定。
この技術の詳細は、米国の科学雑誌、Applied Physics Lettersに2012年7月11日にオンライン掲載される。

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