Laser Focus World JAPAN　レーザーフォーカスワールドジャパン

June 22, 2012, 東京--住友電気工業（住友電工）とソニーは、レーザプロジェクタなどの映像表示デバイスに応用できる、発振波長530nm帯で100mW以上の光出力を有する純緑色半導体レーザの開発に世界で初めて成功した。
今回開発した純緑色半導体レーザは、従来の窒化ガリウム系緑色レーザと比べて、約2倍の高輝度を実現している。高輝度化とNTSC比182%(CIE 1976)の広色域化を実現したことで、鮮やかで美しい映像を描き出すレーザプロジェクタなどの映像表示デバイスへの搭載が期待される。
現在、光の三原色（赤・緑・青）の光源として、赤色と青色の半導体レーザは量産化されているが、レーザプロジェクタなどの映像表示デバイスの高性能化に向けて、高出力の緑色半導体レーザの開発が期待されていた。現状の緑色については、赤外光を光学素子により波長変換したレーザが主に用いられているが、光源が大型かつ高価であるという課題がある。また、従来の窒化ガリウム(GaN)系材料を用いた緑色レーザは、発振波長が520nm以下で光出力も数十mW以下に限定されているため、充分な輝度が確保できない。
住友電工とソニーは、純緑色の半導体レーザを実用化するために、住友電工がこれまで開発してきた半極性窒化ガリウム基板と結晶成長・加工技術、ソニーがブルーレイなどで培った窒化ガリウム系レーザ技術を生かして共同開発を進めてきた。両社で構造設計、結晶成長、加工、電極など半導体レーザに関わる全てのプロセスに新規技術導入ならびに技術改良を加えた結果、発振波長530nm帯で100mW以上の光出力を有する純緑色半導体レーザの開発に成功した。今回開発した純緑色半導体レーザは、光電変換効率8％以上を実現し、高信頼性を確保している。
今回、高出力の純緑色半導体レーザを開発したことで、光の三原色（赤・緑・青）レーザ光源がそろうことになり、高輝度と広色域を実現するレーザプロジェクタや小型・軽量・低消費電力を生かした携帯型レーザプロジェクタなど、幅広い用途への活用が期待される。

高品質な発光層の結晶成長を実現
従来の窒化ガリウム結晶のｃ面に対して75度の傾きを有する半極性窒化ガリウム基板（半極性{2021}面）を 用いることにより、530nm帯で必要となる高インジウム(In)組成の発光層を均一かつ安定的に作製することが可能となり、高品質な発光層の結晶成長を実現。

光電変換効率8％以上を実現
GaN系材料は、結晶構造の歪みにより生じた圧電分極などによって発生する内部電界の影響で、緑色領域での発光効率が低下する。半極性窒化ガリウム基板の採用により内部電界の抑制が可能となるが、実用化にはこのGaN半極性結晶面に適した構造設計、結晶成長、加工、電極などが必要。開発では、レーザ構造の最適化、結晶内の不純物制御、電極の低抵抗化などにより、レーザの駆動電流、電圧の低減に成功し発振波長530nm帯で100mW以上の光出力、光電変換効率8％以上を実現。