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NTT、世界初のGaN系半導体剥離プロセスを開発

April 12, 2012, 東京--日本電信電話(NTT)は、現在発光ダイオード(LED)などに広く使用されている窒化ガリウム(GaN)系半導体薄膜素子を成長用サファイア基板から簡単に剥離するプロセスの開発に成功した。
今回の技術を用いることにより、2μm厚の薄いGaN系半導体薄膜素子を低コストで作製することが可能になる。この技術により、可視光を透過し紫外線のみを効率よく吸収する特性を持つ太陽電池や200μm程度の薄いLED作成など、GaN系半導体薄膜の応用範囲が大きく広がることが期待されている。
GaN系半導体は、無線通信やパワーエレクトロニクスで使用さされる高出力電子デバイス、信号機・照明などに使用される可視光デバイスなどの半導体材料として広く使われている。現在、これらの様々なデバイスは、成長用サファイア基板(成長用基板)上に積層したGaN系半導体薄膜素子(薄膜素子)を加工して作られている。成長用基板は、薄膜素子を積層および加工する際の土台となるものであり厚みが0.5mm程度必要となることから、薄い太陽電池や薄いLEDを作製しようと試みても、成長用基板の厚みがLED全体の厚みとなってしまう問題があった。そのため、加工後に成長用基板から薄膜素子をきれいに剥離し、別の基板に貼り付けることが可能となれば、利用範囲が大きく広がると考えられ、世界中で研究が盛んに行われている。
NTTの物性科学基礎研究所では、グラファイト(2010年にノーベル物理学賞の対象となったグラフェンが積み重なったもの)と同じ層状の結晶構造を持つ窒化ホウ素(BN)に着目し、成長用基板から薄膜素子を剥離し別の基板に貼り付ける研究を行ってきた。
NTTの物性科学基礎研究所で長年にわたり開発・蓄積してきた窒化物半導体薄膜に関する積層技術をベースに、MeTRe法(メートル法:Mechanical Transfer using a Release layer)という成長用基板から薄膜素子を剥離する方法を世界で初めて開発した。
MeTRe法を用いると、剥離後の結晶面を締麗に保つ事が可能となるため、従来から提案されている転写方法と比較した場合、剥離後に表面を削って平らにする工程が不要となる。また、剥離するための大規模装置や薬剤も不要となり、作製時間および作製コストの大幅な削減が期待されている。
今後、窓に透明な薄膜素子を貼り付けることで、太陽光に含まれる紫外線のみを遮断することが可能となり、遮断した紫外線で発電する太陽電池の開発が可能となる。また、非常に薄い(0.2mm厚)LEDの作製も可能となる。さらには、剥離する薄膜素子の面積を大きくすることで、大面積の薄膜素子上に別の材料を積層して新たな機能を持つ薄膜素子を大量生産するといった応用研究の道も開けると期待されている。

技術のポイント
(1)高品質な層状BN薄膜の積層
MeTRe法では、成長用基板上に層状の結晶構造を持つ高品質のBN薄膜を積層させ、その上にさらに高品質薄膜素子を積層。この構造では、BN薄膜が成長用基板と薄膜素子との間の『切り取り線』としての役割を担うため、簡単に剥離し別の基板に貼り付けることが可能となった。今回、BN薄膜の品質を左右する「成膜パラメータ」から最適な条件を見つけ出すことで、結晶の方向が揃った高品質なBN薄膜が積層できるようになった。
(2)層状BN薄膜上への高品質GaN薄膜素子の積層
層状物質であるBN薄膜の上に、結晶構造の異なる窒化アルミニウムガリウム(AlxGa1-xN)あるいは窒化アルミニウム(AlN)バッファ層を積層した後に、薄膜素子を積層させた。
層状BN薄膜の上にウルツ鉱型構造をもつGaNを直接積層させることは、結晶構造の違いから困難とされていた。今回は、一般に下地基板とのぬれ性が良く、結晶構造が異なる基板上への積層実績がある、Alを含むAlxGa1-xNやAlNを層状BN薄膜とGaNの間にバッファ層として用いることにより、結晶構造の違いにかかわらず、高品質な薄膜素子を積層することを可能にした。
今回の成果により、成長用基板から薄膜素子の品質を保持したまま簡単に剥離することが可能となる。今後の展開についてNTTは「剥離する薄膜素子の面積を大きくすると共に、窓や乗り物に貼り付けて使う太陽電池への応用や既存デバイスの特性改善などの実証に取り組んでいく」としている。
(詳細は、April 12 「Nature」)

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