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X線自由電子レーザ施設SACLAが3月7日から供用開始

March 9, 2012, 播磨--理化学研究所は、高輝度光科学研究センター(JASRI)の協力のもと、2006年度から国家基幹技術の1つとして整備を開始し、2011年3月に完成させたX線自由電子レーザ(XFEL)施設「SACLA」を広く研究者などに提供するため、2012年3月7日(水)から供用運転開始となった。
利用課題は国内外から広く公募され、3月から7月までに実施する課題として25件が採択された。米国施設LCLSを上回る0.063 nmという世界最短波長かつ10兆分の1秒という短パルスのXFELを用いて、これまで捉えることのできなかった化学反応など超高速反応の解析や、タンパク質など生体分子の構造解析が可能となり、燃料電池や新薬などの開発が大きく進展するものと期待されている。
X線自由電子レーザ(XFEL)は、X線とレーザの特性を併せ持つ優れた光。X線は波長が短く、小さな物質を観察するのに適した光であるため、原子・分子レベルでの物質の構造や性質を調べるときに用いられている。一方レーザは、光の波が完全にそろっている(コヒーレント)ため、指向性と集光性に優れており、微細加工や測量、CD・DVDなどの読み書きに用いられている。
このX線とレーザの特性を併せ持つXFELを利用するため、日・米・欧の3箇所でそれぞれ施設の建設が進められてきた。日本では、理研が日本独自の「コンパクト」なXFEL施設の計画を考案し、第3期科学技術基本計画における5つの国家基幹技術の1つとして選定された。2006年から5年計画でSACLAの建設を進め、計画通り2011年3月に施設が完成。建設には300社を超える国内企業が関わっており、日本の技術力を集結した施設であると言える。
SACLAは、隣接する大型放射光施設SPring-8とともに、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」における特定放射光施設として指定されており、広く研究者などに提供することが義務づけられている。SACLAは、施設完成後わずか3カ月の調整運転で、波長0.12 nmのXFELの発振に成功(2011年6月)し、その後順調に調整を進め、現在は世界最短波長0.063 nmを達成、2012年3月7日から供用運転を開始する。当初行われる実験としては、タンパク質の微小結晶を用いた構造解析や細胞小器官のイメージング実験、フェムト秒時間分解能での物質の反応ダイナミクスの測定などが挙げられる。

XFELの特徴
SPring-8は、「放射光」と呼ばれる強力なX線を利用して、物質の原子・分子レベルでの構造や性質を解き明かしてきた。しかし、放射光は光の波がそろっていないため、この強力な光でも照らすことのできない未知の世界がある。SACLAの光は、これまで誰も捉えることのできなかった世界を解き明かすことのできるツールとして期待されている。
SACLAの発生するXFELの特徴は、①極めて明るいこと(SPring-8のX線の1000億倍の明るさ)、②発光時間が10兆分の1秒と極めて短い(短パルス)こと(SPring-8の1000分の1)、③波が完全にそろっている(コヒーレント)こと。明るい光は小さなものを強く照らす。短パルスの光は高速で動く物質の一瞬の姿を鮮明に切り取ることができる。コヒーレントな光は干渉性が高く、より鮮明な干渉縞を得ることができる。
これらの特徴により、例えばタンパク質などの観察対象を結晶化することなく1分子だけで構造を調べることができる。そのため、これまで結晶化が困難で解析が進まなかった疾病に関わる重要なタンパク質を直接構造解析することが可能となり、疾病の原因解明や新薬の開発などが期待されている。また、化学反応などにおける電子の超高速な動きを10兆分の1秒という超短時間のコマ送りで観察することが可能になり、優れた触媒や燃料電池などの開発が大きく進展することなどが期待されている。

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