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NTT、世界初光RAMチップの実現
February 28, 2012, 東京--日本電信電話(NTT)は、フォトニック結晶と呼ばれる人工構造を用いて、光メモリの消費電力を従来比300分の1以下に低減し、集積チップ化した光ランダムアクセスメモリ(光RAMチップ)の動作を世界で初めて実現した。
今回実現した光RAMチップを用いることで、光データを電気に変換することなく蓄積・転送することが可能となり、将来的にルータなどのネットワーク処理機器(NW機器)の大幅な高速化、低消費電力化が期待される。
NTTは、まず、フォトニック結晶の強く光を閉じ込める特性を利用して、超低消費電力、超小型の光メモリを実現。さらにこの光メモリ(1bit)を4つ集積したチップを作製し、高速光信号を電気信号に変換することなく高速処理することができる、世界初の光RAMチップを実現した。
用いられた光メモリは、従来の光メモリに比べて消費電力は300分の1しかなく、超小型であるため、大規模な集積化にも適用可能。この光RAMを用いれば高速な光データを光信号のまま蓄積・転送できるため、広帯域・低消費電力・超小型のルータを実現するキーデバイスとして期待される。
また、この技術は将来的にはマイクロプロセッサチップ中に集積化することにより、チップ内のネットワーク処理にも適用可能で、高性能で低消費電力のマイクロプロセッサを実現する技術としても有望。
開発技術
(1)フォトニック結晶による超低消費電力光メモリの実現: InP半導体薄膜に周期的な空孔を形成した構造であるフォトニック結晶の中に、InGaAsPを局所的に埋め込み、光ナノ共振器とした特殊な構造を用いて超小型の光メモリを作製。
この素子は、書き込みおよび消去光パルスを入射することによって、オンとオフの二つ光出力状態を切り替えることができる光双安定と呼ばれる現象を用いて情報を記憶し、光メモリとして機能。従来の光ナノ共振器を用いた光メモリは、書き込み光パルスによって生成されるキャリア(電子-正孔対)がすぐに共振器の外に逃げてしまい効率が上がらなかった。また熱が発生することによってメモリされた情報が消えてしまうため、メモリ保持時間が250ナノ秒(ns)程度に制限されていた。
今回の素子では、光双安定を起こす効率が高いInGaAsPをInPのフォトニック結晶に埋め込んだ新構造により、次の2つの利点を得ることが可能となり、これまでの光メモリの問題点を解決した。
① キャリアがInGaAsP内に閉じ込められて逃げていかないため、非常に低い光パワーによるメモリ動作が可能。
② InPの熱伝導率が高く発生した熱が速やかに外に逃げるため、メモリ保持時間の制限がない。その結果、この素子では10秒以上のメモリ時間が達成され、30ナノワットという低い消費電力で動作した。
この消費電力は光メモリの中で最も小さい値で、これまでで最も低消費電力であったメモリと比べても300分の1以下。
(2)集積化された光RAMチップによる動作達成: NTT研究所は、上記の光メモリを同一半導体基板上に4ビット集積した光RAMチップを作製し、高速な光データ信号に対するRAM動作を確認。集積化された多ビット光メモリによるRAM動作は世界で初めての試み。
実験では、ビットレートが40Gb/sの超高速4ビット光データ列(1010または1101)を用いてRAM動作を行わせた。4ビットの入力データは、まず高速光シリアル・パラレル変換器によって4つの光パルスに分解されて、チップ内の別々の光メモリに書き込まれる。書き込みの500ns後に、別の読み出し光パルスを入射させることにより、書き込まれた情報を光出力として読み出すことに成功。この動作は、40Gb/s・4ビットの光データがメモリ保持されたことを示しており、各素子をランダムにアクセスしてメモリ動作できることを実証している。
従来の光メモリは、サイズが大きく消費パワーが大きかったため、大規模に集積したRAMとして用いることは原理的に困難だった。今回実現したRAMはまだ4ビットであるが、消費パワーとサイズからは大規模集積化が十分可能。たとえば1メガビットのRAMを作ったとしても、総消費パワーは30mW程度であり、チップサイズは10mm2程度にしかならない。高速な情報処理に用いることを想定されている光RAMは、10キロビットから1メガビット程度の規模のものが必要だと考えられているが、今回実現した性能から十分実現可能だと考えられる。
今後、NTTの研究所では今回開発した光RAMチップを高密度化し、集積度を上げていく研究を進め、10キロビットから1メガビット程度規模の光RAMの実現を目指し、将来的にはルータに代表されるNW機器に適用することで、ネットワークの処理速度の高速化および大幅な低消費電力化の達成を目指す。さらに光RAMを組み合わせた高速なネットワーク処理機能をもつ光回路をマイクロプロセッサ内に搭載できれば、プロセッサの演算能力を飛躍的に高められる可能性を持つ。これらの技術により様々なネットワーク処理を光化し、情報処理技術の広帯域化、低消費電力化の実現を目指す。
今回実現した光RAMチップを用いることで、光データを電気に変換することなく蓄積・転送することが可能となり、将来的にルータなどのネットワーク処理機器(NW機器)の大幅な高速化、低消費電力化が期待される。
NTTは、まず、フォトニック結晶の強く光を閉じ込める特性を利用して、超低消費電力、超小型の光メモリを実現。さらにこの光メモリ(1bit)を4つ集積したチップを作製し、高速光信号を電気信号に変換することなく高速処理することができる、世界初の光RAMチップを実現した。
用いられた光メモリは、従来の光メモリに比べて消費電力は300分の1しかなく、超小型であるため、大規模な集積化にも適用可能。この光RAMを用いれば高速な光データを光信号のまま蓄積・転送できるため、広帯域・低消費電力・超小型のルータを実現するキーデバイスとして期待される。
また、この技術は将来的にはマイクロプロセッサチップ中に集積化することにより、チップ内のネットワーク処理にも適用可能で、高性能で低消費電力のマイクロプロセッサを実現する技術としても有望。
開発技術
(1)フォトニック結晶による超低消費電力光メモリの実現: InP半導体薄膜に周期的な空孔を形成した構造であるフォトニック結晶の中に、InGaAsPを局所的に埋め込み、光ナノ共振器とした特殊な構造を用いて超小型の光メモリを作製。
この素子は、書き込みおよび消去光パルスを入射することによって、オンとオフの二つ光出力状態を切り替えることができる光双安定と呼ばれる現象を用いて情報を記憶し、光メモリとして機能。従来の光ナノ共振器を用いた光メモリは、書き込み光パルスによって生成されるキャリア(電子-正孔対)がすぐに共振器の外に逃げてしまい効率が上がらなかった。また熱が発生することによってメモリされた情報が消えてしまうため、メモリ保持時間が250ナノ秒(ns)程度に制限されていた。
今回の素子では、光双安定を起こす効率が高いInGaAsPをInPのフォトニック結晶に埋め込んだ新構造により、次の2つの利点を得ることが可能となり、これまでの光メモリの問題点を解決した。
① キャリアがInGaAsP内に閉じ込められて逃げていかないため、非常に低い光パワーによるメモリ動作が可能。
② InPの熱伝導率が高く発生した熱が速やかに外に逃げるため、メモリ保持時間の制限がない。その結果、この素子では10秒以上のメモリ時間が達成され、30ナノワットという低い消費電力で動作した。
この消費電力は光メモリの中で最も小さい値で、これまでで最も低消費電力であったメモリと比べても300分の1以下。
(2)集積化された光RAMチップによる動作達成: NTT研究所は、上記の光メモリを同一半導体基板上に4ビット集積した光RAMチップを作製し、高速な光データ信号に対するRAM動作を確認。集積化された多ビット光メモリによるRAM動作は世界で初めての試み。
実験では、ビットレートが40Gb/sの超高速4ビット光データ列(1010または1101)を用いてRAM動作を行わせた。4ビットの入力データは、まず高速光シリアル・パラレル変換器によって4つの光パルスに分解されて、チップ内の別々の光メモリに書き込まれる。書き込みの500ns後に、別の読み出し光パルスを入射させることにより、書き込まれた情報を光出力として読み出すことに成功。この動作は、40Gb/s・4ビットの光データがメモリ保持されたことを示しており、各素子をランダムにアクセスしてメモリ動作できることを実証している。
従来の光メモリは、サイズが大きく消費パワーが大きかったため、大規模に集積したRAMとして用いることは原理的に困難だった。今回実現したRAMはまだ4ビットであるが、消費パワーとサイズからは大規模集積化が十分可能。たとえば1メガビットのRAMを作ったとしても、総消費パワーは30mW程度であり、チップサイズは10mm2程度にしかならない。高速な情報処理に用いることを想定されている光RAMは、10キロビットから1メガビット程度の規模のものが必要だと考えられているが、今回実現した性能から十分実現可能だと考えられる。
今後、NTTの研究所では今回開発した光RAMチップを高密度化し、集積度を上げていく研究を進め、10キロビットから1メガビット程度規模の光RAMの実現を目指し、将来的にはルータに代表されるNW機器に適用することで、ネットワークの処理速度の高速化および大幅な低消費電力化の達成を目指す。さらに光RAMを組み合わせた高速なネットワーク処理機能をもつ光回路をマイクロプロセッサ内に搭載できれば、プロセッサの演算能力を飛躍的に高められる可能性を持つ。これらの技術により様々なネットワーク処理を光化し、情報処理技術の広帯域化、低消費電力化の実現を目指す。