Laser Focus World JAPAN　レーザーフォーカスワールドジャパン

February 16, 2012, Ann Arbor--ミシガン大学の研究グループは、リキッド(色素)レーザを用いて遺伝子のわずかな突然変異を発見する方法改善を達成した。
遺伝子突然変異により人は特定の癌やその他の病気に罹りやすくなる可能性がある。この成果により病気の遺伝学的基礎の理解が進むと考えられている。また、患者毎の医療(患者の遺伝体質に合わせた医療)への応用も考えられる。患者毎の医療(personalized medicine)は、患者の遺伝情報についての完全な知識に基づいて個々の患者に薬や治療を適用することを目的としている。
研究グループによると、新開発の技術は現行のアプローチよりも遙かに優れている。現在のアプローチでは、突然変異したDNAらせん構造を見つけ、それに結びつけるのに蛍光色素やその他の生物学的分子を用いている。パトロールする分子が問題のある遺伝子の1つを見つけると、蛍光信号を発する。これは確実なシステムであるかに聞こえるが、完璧ではない。パトロールする分子は健全なDNAにも結びつきやすく、正しい信号よりもわずかに暗いバックグラウンドの光を発する。
生体医用工学部助教授、このプロジェクトの主席研究者、Xudong Fan氏は「その違いを見落とすことが時々ある」という。「信号の違いが分からなかったら、診断ミスになる。患者は突然変異した遺伝子を持っているかも知れないが、それを発見できないということだ」。
従来の蛍光技術では、突然変異したDNAからの信号は、バックグラウンドノイズよりも1％のわずか数10分の1高いだけだ。Fan氏の新しいアプローチでは、それが数100倍明るくなる。「われわれは信号固有の違いを増幅するうまい方法を見いだした」。
60年代後半に発見されたリキッドレーザは、光が色素を通過するとそれを増幅する。結晶よりも色素の方が増幅率が高い。Fan氏は、生体医用工学とフォトニクスの境界領域で研究しており、5年前からこの研究に取り組んでいる。同氏独自のセットアップでは、信号は「リング共振キャビティ」と呼ばれるガラスキャピラリの中で増幅される。
昨年、研究グループはリキッドレーザの変調にDNAを用い、ON/OFF変調した。Fan氏によると、世界でこれを成功させた数少ないグループの1つが同氏の研究グループ。その当時、同研究グループは実用的なアプリケーションが思いつかなかったが、その後閃きがあったと言う。
「レーザの出力に注目しよう。出力差が起こる理由は何か。DNAの違いを検出するのにこれを用いてはどうか。直感的だった。やってみると、出力差が極めて大きいことが分かった」とFan氏は話している。
論文"Distinguishing DNA by Analog-to-Digital-like Conversion by Using Optofluidic Lasers."は、ドイツのAngewandte Chemieに発表されている。
(詳細は、www.umich.edu)